異世界と異世界
「俺は六歳の男子。…どう考えても口調とか滑舌とかおかしいが仕方ない。で、家族は…これは吐き気がするな。前世でもこんなドロドロしたのはない。」
俺の今世の家族は、全員がエリートだ。
中でも長男…兄あたる人は、自分よりも能力の低いやつを見下す貴族のような奴だ。
親は比較的マシなのに、なぜこうなったのが不思議なぐらい。
俺は大学付属の幼稚園に通っている。
来年から小学生だが、見学に行った時のドロドロさは俺に合っていないように感じた。
ノートに書き留め、引っかかったことを考える。
「なんでこの世界に来たんだ…?人は死んだら天界に行くと信じ込まれていたはずだが…転生をするのか。」
あっちの世界…“バルゾーク”では人が転生をすることはないと思われていた。
だが、現に今俺は異世界転生という形でこっちに来た。
「なあ、師匠。人は転生したんだってよ。」
前世でお世話になった、オカルトマニアな師を思い出す。
自分に魔法を教えてくれたのは、先生が紹介してくれたあの脳筋婆で、剣術を教えてくれたのはインテリ爺で…。
全然ジョブが違ったので、結局自分で全てやることにはなったけれど、良か…おかしくね?
「あれ?今思えば全然お世話になってない?…まあいいや。」
六時になる。
そろそろ両親が起きてくるーということはない。
親は仕事なので既に会社に行っているからだ。だが、悲しいとは思わない。前世を含めれば、三十四だ。寂しかったら、結構ヤバい。
「ふぅ、幼稚園から帰ってきたら、ちょっとこの世界のことをもっと勉強するか。歴史とか、魔法を使えないとか…」
魔力を手に込めてみる。
「“ファイア”」
スムーズに展開は出来た。だが、試し撃ちは出来ない。俺のスペックだと、初級魔法でも、被害は洒落にならないからだ。
「あとは歴史だけど…なんだか色々深そうなんだよなぁ…やめてもいい?」
家庭教師から教えられたことを思い出す。
「………やっぱ歴史は勉強だけでいいや。」
諦めた。戦国とかぶっちゃけ意味が分からない。
なんで信長が勝てたのか、魔法を使ったら一発なのになんで危険なことをしなければいけないのか。
「…そういえばこの世界で魔法を使う人は見たことがないな。これも後で確認するか。」
前世でも十人中十人が使えるわけではなかったが、少なくとも三人ほどは使えていた。
単純計算で家族の中でもあと1人は使えるはずだ。
「ああ、そうだ。俺の頭脳がこのまま受け継がれているか確認したいな。」
前世の俺を本当に褒めたい。あの鬼畜教師…師匠の問題を解くまくった俺の頭は、国のトップクラスだったからな!
……本当だぞ?
「…まだ時間はあるな。」
俺は覚えている限りの魔法をノートに書き写した。ステータスが出なかったからだ。
「鑑定が使えないと色々不便だが…異世界だからな。」
メイドが部屋にいない俺に気づき悲鳴を上げるまで、あと三十分。




