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極度のストレスと脱水症状により、ログハウスに運び込まれた私は2人の治療を受けて大事には至らなかった。
目が覚めた時、さっきまでの出来事が全てただの夢でした。で終わってることを願っていたのだけど、残念ならがら現実は無情だ。
それからしばらくはログハウス周辺の散策にとどめて、街の方には当分下らないようにと言うことになった。
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「カモミールは良い匂いですね」
「うむ。ここにあるハーブはみな鎮静効果のある物だ。心を十分に休ませるのじ」
「はい…… でもこのままじゃダメですよね。」
ここ一週間の私は庭のハーブ園に通いつめている。
草むしりとか水やりとかの簡単な手入れを勝手にやっている。
カトレアさんはゆっくりしていればいいよと言うけれど、じっとして考えているよりも少し体を動かしていた方が気分が楽になるきがした。
「まあそうじゃな」
「私は過去か別の世界から来た住人で、ここは私のいた場所じゃない。それが一番理想の答え」
「ゆっくりでよい。いずれわかる時が来るじゃろう」
「そうですね………」
私はケシを抱きかかえ、ログハウスへと戻る。
まだ日が登ったばかり、朝ごはんでも食べよう。
「今日も平和じゃな」
2-4
それから台所で朝食を作る。
勝手に食材を使っていいとは言われたけれど、メインのお肉と魚はもう底を尽きかけている。
残り二つの卵をスキレットに割入れて少し焼入れ、水をふりかけて蓋をする。
主食はパン。と言ってもホットケーキみたいなやつだ。
「粉物ばかりで飽きんのか?」
「むしろ大好物なのよ」
「わしは肉か魚か草しか食べんからどうでも良いが、たまにはねこまんまでもたべたいわけじゃ」
「ふーん。納豆味噌汁とか?」
「おーいいのぉ!豆腐も入れてあれば最高じゃ」
「親父くさい……」
バターをサイコロ大に二つ切ってパンの上に乗せる。マーガリンは健康に悪いって雑誌で見てから少し高くてもバターを使うように心がけている。
そこまで気にすることじゃないんだと思うけどね。
「すみれといいカトレアといい、どうして皆粉物好きなのか」
「それは群馬県人だからでしょ?」
「というと?」
「群馬県は粉物が有名なのよ、粉文化と言ってもいいわね。
水澤うどんに焼きまんじゅう、郷土料理のおっきりこみやとっちゃなげ。ひもかわうどんなんかもあるね」
「よくわからん食べ物もあるが、なるほど」
「とっちゃなげはよく死んだおばあちゃんと作ったなぁー」
とっちゃなげってのは簡単に言えばけんちん汁に小麦粉を練ったものを入れた群馬県の料理。小麦粉は丸めないでスプーンやお玉ですくい取ってなべに「投げ入れる」。
とろとろになった汁はもう最高!
「こんど作ってみようかなー」
「わしも食べられるようにしてくれ?」
「考えておくー」
3-1
目玉焼きにスキレットで作ったパン。コーンスープとサニーレタスのサラダ。上出来だ。
ケシのご飯も用意して後はカトレアさんが起きればいいのだけど、まだ寝ているみたい。
「カトレアさんまだ起きないですね」
「夜更かしでもしたのじゃろう。すみれが来る前はほとんど家に引きこもっていたからな」
「引きこもり魔法使い……」
ケシは「いただきます」と言ってご飯を食べ始めた。
家族みんなで食べるという習慣がないと待つということが出来なくなるのは本当みたい。
私は席を立つとカトレアさんの部屋の前までいく。
コンコンとノックをしてカトレアさんの生存を確認してみるが、返事はない。
「カトレアさん?起きてますかー?」
しかし返事はない。
「カトレアさん?」
何度もノックしてるけど、やっぱり返事がない。
「無理じゃよすみれ。あやつはお昼までは普段起きてこない」
「でもご飯覚めちゃうよ?」
「大丈夫じゃ。魔法で温めて食べる」
「さいですか……」
魔法ってそんな便利能力だったのか…… 私も欲しいわ
5-4
ケシの予想通り、カトレアさんはお昼頃にリビングへやってきた。
半分眠ったような顔のカトレアさんは幼くてかわいい幼女に見える。
それでも私よりも5年は長生きしている「大人の」女の子なので、そこは忘れないようにしている。
「おはよぉう……zzz」
「おはようございます。朝ごはんとお昼ご飯どっち食べますか?」
「んー………どっちも」
「それは無理があるでしょ……」
とりあえず朝ごはんをカトレアさんの前に並べて、私は台所でお昼を作る。 お肉も卵も魚もないのでサラダバーになったけど。
「おいしいわね…… やっぱり粉物よ」
「ですよねー ご飯なんてクソ喰らえー」
「お前達はほんとは日本人じゃないじゃろ……」
朝ごはんとお昼のサラダバーを食べ終えたカトレアさんに現在の食糧事情を説明することにした。
このままでは当分サラダ生活を強いられる。ケシのご飯も無くなるし。
「なるほどねー わたしはサラダと小麦粉があれば生きていけるけど、お肉は欲しいよねー」
「はい。なので調達しないといけないかなって」
「だけどまだすみれを連れて街へ行くのは早いし…… うーん」
「それなら森へ行けばよいじゃろ?肉はいっぱいおろうに」
「いっぱいいる?」
「そうね、久々に運動しますかー」
バッっと立ち上がるカトレアさん。少し驚いてビクンと体がなった。
カトレアさんは腰に手を当てて高らかに、
「狩りに行きましょう!」
と言って、右足を椅子に乗せたのだった。