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1-3

 私はここを知っている。

 そりゃほぼ毎日通いつめている場所だし、私の最後の記憶はここで途切れているのだから。


 それなのに、ここは数日前とは思えないほどに廃墟になってしまっている。

 コンクリートが剥がれ落ちている場所から錆びた鉄筋。場所によってはそれすらも朽ちている。

 窓ガラスなんて全部割られている。昭和のヤンキーがやるいたずらよりもひどい状態。


「意味がわからない。どうして……」


 田舎とはいえ、それなりに賑わっていた場所なのに……… 人の姿一つ見つけられない。


「すみれ?」

「私はここを知っている。それどころか、数日前にはここに居た」

「え?」

「その時は色んな人が居たし、少なからず賑わいのある場所だった」

「いやいや、この場所は私が生まれたときから廃墟だったみたいだよ?」

「それってどのくらい前ですか?」

「私が生まれたのは今から………」

「二十二年前じゃ」


 二十二年。それじゃあ私が通いつめたのは別の場所?それとも夢?

 わからない。

 ここはグンマーだし、私の活動エリアの一つだし、でもそれが廃墟に?


「意味わからない。私が寝ている間に……街が廃墟に……」

「すみれ大丈夫?私にはよく意味がわからないわ」

「ここは私がほぼ毎日通っている学校なの!なのになぜ寝て起きて着てみたらこんな廃墟になっているの?!駅だって病院だっておかしいよ!そもそも人が居ないのっていみわからない!」


 私は頭を抱えて膝をつく。

 朝からいろんなことで精一杯だったのにこれは完全に止めを刺された。

 だって数日寝てたとしてもすぐにこれだけ荒れ果てるわけない。

 だったらここは私の知っている場所ではなくて異世界とか異空間とかそのたぐい。もしくは未来へ飛ばされたかのどれかに絞られてしまった。

 サプライズ引っ越しとかのレベルじゃない。わたしは見知らぬ土地にとばされたっ!


「ここはどこなの!夢?現実?意味わかんない!」

「落ち着いて!」

「落ち着けるわけ無いじゃん!だって、だってさ!」


「少し前まであった物がだよ!寝て起きたらぜーんぶぼろぼろでさ!街が崩壊してたんだよ!!おかしいって!頭いかれるって!」


 謎すぎる謎すぎる

 意味わかんないし!

 

 いっぺんに入ってくる情報の処理に耐えられず、意味もわからず頭を振り回す。

 脳が揺れ、お茶が入っている胃の中すべて、ぐちゃぐちゃにかき回されて、吐き出す。


 気分が悪い。

 もうなんなの………




1-3




 三十分ほど学校のベンチで休み、体の方はだいぶ良くなったけれど、心の方は未だにだめ。

 目が回る位にいろいろなことが頭の中で処理されて、でも今の私では対応できない自体に陥っていることしか現状理解できなかった。

 落ち着くからと手渡された水筒だけど、今飲んだらまた吐き出してしまいそうなので、胃の中は空っぽの状態を維持している。当然長くは持たないだろうけど。


「私は未来か別世界にきてしまったってことなのかな」

「それはわからないけど、すみれの反応を見ると異常性は感じ取れるわ」

「これが夢ならいいのだけど、あまりに現実離れした出来事なのにものすごくリアルで……」

「なるほどね。あなたの居たところには魔法とかなかったの?」

「完全にない!とは言えないね。おまじないとかはある種の魔法みたいなものだったし」

「おまじない……白魔法系ですかね」

「詳しくないからわからないです……」


 空気も感じもそのままなのに、街は荒廃している。

 なにか原因があって異世界やら未来に飛ばされたのか、それともここは私の住んでいた世界で、なにかの衝撃で街が破壊されたのか……


「過去に戦争なんかは?」

「そりゃあったわい。二千年も前じゃなが」

「そっか……」

「とりあえずどうしよう……」

「帰って寝かせたほうがいいかもしれんな」


 私はゆっくりとベンチから起き上がる。

 まだちょっとフラフラするけれど、ずっとこの場所にいると今以上におかしくなってしまいそうだから。


「せっかく着たのにごめん……なさい」

「仕方ないわ、なにかいろいろ事情とかあるだろうしさ」

「ここは温かいハーブティーを飲んでゆっくり休むのが一番じゃな」

「お前の入れたのは泥水だけどね」


 力の入らない足を引きずりながら、ゆっくりと来た道を戻る。

 休み休みでだいぶ時間がかかってしまったけれど、やっとのことで橋の交差点までたどり着いた。

 カトレアさんもケシも私なんかに良くしてくれて……申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


「さあもう少しでお家だから!頑張ろう!」

「はい……」

「ゆっくりでいいからね。休みたいときは言って、ケシがクッションになるから」

「流石にやめてほしいわい」


 ゆっくり、ゆっくりと橋の真ん中を歩む。

 虚しいこの気持を胸いっぱいにして、現実と非現実の境界線のような橋をゆっくりと。

 もう私の知っている世界はないんだ。

 ここは私の知らない世界。

 最後くらい、楽しくお話したかったな……



 2-0



 橋を渡り終え、畑の段差に気をつけながら森へと進む。

 森の力が働かないせいで、太陽の光をもろに浴びている私達の額には大量の汗が吹き出ている。

 気持ち悪さがまだ残るので水は飲まない。

 本当は飲んだほうがいいのだけど、嘔吐のあの感覚が好きじゃないから。


「森に入れば少しは涼しくなるから。あとちょっとの辛抱だよ」

「はい……」


 あと少し

 あと少し……


 口の中はカラカラに乾き、暑いはずなのに段々と汗が引いてくる。

 手足も少し震え始めて、視界が白味がかる。


「カトレアよ、すみれがまずいぞ」

「それはわかってるけどさ、みずを飲まないのよ」

「無理にでも飲ませるしかないじゃろ。このままだと死んでしまうぞ」

「あーもう!すみれ!」


 私の腕をぎゅっと握ると、ローブの中から水筒を取り出して私の口の中に水を無理やり流し込む。

 拒否は下のだけど、カトレアさんののめのめオーラに負けて一口飲み込む。


「んっ……ゲホッゲホッ」

「ほらもういっ…… ケシ!」

「気がついたか…… 太陽の登っている時間じゃから大丈夫かと思えばこれか」

「逃げれそう?」

「すみれを見捨てれば」

「わかったわ。あれはヤる」


 ふらふらの体を維持できない。

 それでも気合と根性で意識を保つ。

 ただ、視界はもう半分以上が真っ白。


 頭もふらふらで、世界がくるくると回ってて そのまま地面へと墜落する。


「すみれ!」


「今はあっちが先じゃ!すみれはわしにまかせるんじゃ」


「わかった!サクッとやってくる!」


 真っ白だ。


 なにもかも。


「……し……ぶか」


 なにぁに?

 ちょっとお腹ぷにぷにはやめてよ……


 ちょっときにしているんだか………




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