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2-3

 自転車を入手した私はほぼ毎日のように街へ下りた。

 私がこっちの世界に来た原因探しをしているのだけど、今の所手がかりはまったくない。

 スーパーやホームセンターなどの商品はやっぱり入荷されていないし、人の気配も一切ない。

 本当にこの世界には別の人が居るのか不思議で仕方がない。


「なにかやっぱり手がかりなし……うーん」


 近くに図書館にも言ってみたのだけど、最新の新聞はやっぱり六月二二日だった。

 この日に何かが起こったのは間違いない。

 その手がかりは一体なんなんだろう……


「とりあえず今日は帰って畑の手入れをしよう……」


 私が図書館の外に出ると、そこには覚えのある人が立っていた。

 長い黒髪のストレート。

 私より長身でスラッとした女の子。


「えっ……しずく?」

「ん??」


 私が思わず声を掛けると、その子は振り返る。

 やっぱり見たことのある顔。

 彼女は私の友達の一人「西村しずく」。


「えっ?すみれ?!」

「しずく!!」


 私はしずくに駆け寄る。

 しずくも私だとわかり、笑顔と安心した顔をしていた。


「どうしてしずくがここに居るのさ!」

「それはこっちのセリフだし。すみれも裏世界になんでいるの?」

「裏世界って、しずくはこの世界のこと知ってるの?」

「うん。私を助けてくれた人がいろいろ教えてくれて」

「助けた人?」

「ここは少し離れた湖の畔に居る魔女なんだけどね、ここが裏世界で、あなたは飛ばされてきたのって」

「魔女って他にも居たんだ……」

「他に持って、すみれも魔女の知り合いがいるの?」

「うん」


 私はこっちの世界に来た経緯をはなした。

 しずくもやっぱりこっちに飛ばされた理由は分かっていないようだけど、心当たりはあるらしい。


「最近事故が多かったの知ってた?」

「新聞で見たからまあ……」

「もしかしたら私達はその事故に巻き込まれたか、その事故の影響で飛ばされた可能性が高いのよ」

「ほおぉー」


 もっとも、事故に巻き込まれていたら私達は死んでいると思うのだけどね。

 でもこの説は結構いい線いってる気がする。

 だって私に飛ばされる直前の記憶が一切無いのだから。記憶改変されてたらおしまいだけど。


「それでしずくはここで何をしているの?」

「えっと、人々の感情を探しているの」

「感情?それってなに?」

「これ」


 そういってしずくは小さな小瓶を見せた。

 中には光る小さな丸い結晶がいくつか入っている。


「これは人々の願いが魔力によって結晶化されたものらしいの」

「これを何に使うの?」

「湖の魔女はこれをあるべき世界へ浄化するのがお仕事って言ってて、助けてもらったお礼にお手伝い」

「なるほど…… この世界は不思議がいっぱいだなー」

「だねー」


 私はこれからログハウスの方に戻ると言った。

 しずくも手伝いが残っているからと言うことでここで分かれることにした。


「夜は気をつけてね。黒い変なやばいのがいっぱいいるから」

「わかったー!すみれも気をつけてね!」


 私は自転車に乗り、ログハウスへと急いだ。


 私の友達がこちらの世界に来ていたと言うことは、飛ばされる直前まで彼女と一緒に居たことになる。

 じゃあどこで?

 彼女と一緒にいる場所は学校から帰り道の駅までの短い間。クラスが違うのでそんな頻繁に会わないのだけど、なぜか帰りはいつも一緒にいる。

 でも、知った顔がこの世界に居るってのは少し安心する。

 また近い内に会えるだろうね。



8-1


 街から帰り、畑の草むしりと水やりを済ませた私は少し休憩することにした。

 今日はミント水にレモンとはちみつを入れた涼しそうな飲み物で一服。

 お茶菓子はブルーベリー入りのクッキー。私の自作で、なかなかおいしいのだ!


「そろそろ暑くなる時期だけど、ここは涼しくてかいてきだなー」

「うむっ生活するのに最適じゃ」


 私の足元でごろごろするケシのお腹を足でなでてやると、ゴロゴロと喉を鳴らす。

 いくらしゃべるとはいえやっぱり猫だね。


「カトレアさんは未だ寝ているの?」

「そうじゃ。怪我が治ってきたとはいえ、まだまだ安静にしないとじゃからな」

「魔法の練習付き合ってもらいたかったのにな」

「それならわしが手伝おう」

「えっ?ケシが?」

「わしだって魔法位できるわ」


 私は少し不安だったけれど、まあ見ているだけだから猫にもできるか。と思いケシに見ていてもらうことにした。


「とりあえずイメージ。火の魔法がいいかなー」

「まあ簡単じゃからな」


 私は手のひらに集中すると同時に頭の中で火の玉を想像する。

 幽霊とかの火の玉じゃなくてコンロの火とかその類を想像。

 体全身のマナが右手に集まり、次第に手が熱くなる。


「むむむっっっ」


 しかし、熱くなるだけで特になにも現れない。

 集中が切れた私はだらんと体を楽にしてしまう。


「うーん、難しい」

「まあ初めは仕方ないのじゃ。基本ができれば後は簡単じゃから頑張れ!」


 それから私は何度も何度も試したのだけど、やっぱり手が熱くなるだけで特に変化がなかった。

 そんなこんなで夕方になり、私は夕飯の支度をするため、今日の練習はこれで終わりにした。



12-3



 今日の夕飯は煮魚にサラダ。あとはお米を炊いて味噌汁を作った。

 最近パン生活が続いていたので、日本人らしい和食にしてみた。


「煮魚の味を薄めにしたからケシもたべられるよー」

「おぉ!魚じゃ!」

「まだまってね」


 テーブルに夕飯を並べ、私はまだ置きてこないカトレアさんの部屋に向う。

 コンコンとノックをするも、返事がない。


「カトレアさんーごはんですよ」


 何度も声を掛けてみたけど、返事がない。よほど疲れているのかな?


 私は仕方なく部屋の中に入ってみた。




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