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「すみれー!!すみれー!」
「どうしたのですか!!モヤ玉でも出ましたか!?」
「これ!!」
カトレアさんの声がした本屋入り口に向かうと、そこには眼をキラキラ輝かせながら雑誌を読んでいる少女が一人。
誰でもご自由にお取りください。と書かれた札のある店にいっぱい積まれた雑誌。まあよくある広告雑誌だ。
「えっと……通販のカタログ?」
「そう!なんかこれすごくない!?」
「何がですか……」
カトレアさんは表紙の文字に指を指した。
「お急ぎ配送もお気軽に!ご注文から最短二日でお届け!」
「はぁ……」
「表世界ってほんとにいいなー。これならずっと家の中で過ごせそう」
「それは社会のごみになってしまうからやめたほうがいいと思うよ……」
この人は本当に全く……
私はその後、適当な小説と新聞をカバンに詰めた。
カトレアさんは当然通販カタログを持ってきたという。
他に探索できる場所もあるのだけど、カバンがいっぱいになってしまったので一旦ログハウスに戻って荷物を整理することにした。
私みたいなか弱い女の子は重い荷物を長い間持ってられないのだっ!(
「なんか一瞬悪寒がしたのじゃが……なんじゃろ」
「きのせいよ……」
森に入ってからの上りがきつかったのだけど、やっとのことでログハウスに戻る。
早速回収した物資を分けて、整理。休憩のお茶を入れた。
「食料関係はなんとかなりそうね」
「はい。二ヶ月は余裕で持ちますね」
「それと調査の方はどうだった?」
カトレアさんは調査は当然していなかった。誘惑に負けてしまうのは仕方ないからね。
私はカトレアさんに新聞を見せた。
「ふむふむ……これはすみれが倒れて見つかった前日の新聞ね」
「なるほど……ってよく日にちがわかりますね」
「そりゃそうよ。カレンダーあるし」
カトレアさんはソファー近くに置いてあるテーブルの上を指差す。
そこにはデジタルの目覚まし時計が置いてあって、日にちも書いてあった。
「こんなのありましたっけ?」
「私の部屋から持ってきた。そろそろ電気が終わりそうだから日光に当てないと」
「へぇーソーラーパネルついてるのですね」
「魔法並にすごいものだよねこれ」
「私からしたら魔法のほうがすごいです……」
休憩を終わらせて私達はもう一度街へと向かった。
今回の目標は日用雑貨。
「タオルとかも結構必要になりますからね」
「ティッシュにトイレットペーパー。紙のものが不足してますからね」
「わしの布団も変えてほしいものじゃ」
「余裕があればね」
ということで、目的地はホームセンター。
スーパーでも日用品は回収できたのだけど、それだと食料品をいっぱい持って帰れなくなってしまうので、見送っていた。
ホームセンターの場所はすごくわかりやすい。
橋を渡ったすぐの十字路を左に行くと大きな木がある交差点にぶつかる。それをまたまっすぐ進むと左手が目的地。
ただ問題は少し歩く事だ。
「なにかいいものがあればいいんだけどね」
「日用雑貨はとにかくほしいわ。あとキャットフード」
「じゃからあれは飽きたのじゃよ…」
橋を渡り、大きな木の交差点をすぎるとそこにホームセンターはあった。
外見は表世界とまんま同じ。多分内装も同じだと思う。
「それじゃあカトレアさんは日用品をお願いします。私はちょっと見たいものがあるので」
「ふむ。それじゃあ必要なものは回収しておくぞ」
「お願いします。終わったら出入り口で待っていてください」
そう言い残して私は走ってホームセンターの中に入る。
予想通りというか、まあ当たり前だけど、内装はやっぱり表世界と同じ。
私は目的のものを探しにホームセンターのある一角へと向かう。
これがあれば探索が多少楽になるモノ。難点は少し重いことかな?
「あった。劣化して使えないやつもあるから慎重に探さないと」
私がほしかったもの。それは自転車だ。
これがあれば多少重たい荷物も運ぶのが楽になるし、移動も早くなる。今後の生活をより便利にしてくれるはず。
「これはパンクしてる……これもだ……」
タイヤを一つ一つ確認しているのだけど、経年劣化でほとんどがパンクしていた。
物は選ばないので、どれか一つでも使えればいいのだけど……
「んっ……これはパンクしてない!」
そうしてようやく使えそうな自転車を見つけた。
赤い色のシティサイクルだ。
「前にかごもついているし後ろも荷台がある。これはいいね」
私はついでに一番いいライトも取り付け、空気入れも持っていくことにした。
いざというとき使えないと意味がないからね。
「あとは電池とかあるかな?ライトの電源になるんだけど」
それからホームセンターをぐるぐる練り歩き、自転車のかごに必要なものを入れまくった。
中には売り切れているものもあったのだけど、もう入荷することはないので諦めて別のものを選んだ。
そんなこんなしているうちに外は夕暮れ。そろそろ帰らないとモヤ玉が発生してしまうので引き上げることにした。
「ただいまー。まった?」
「おかえりなさいー。 ってそれはなに?!」
「自転車だよ。移動用の乗り物。これがあればログハウスまで早く帰れるよ」
「ほぉー なかなかいいものだね」
私はカトレアさんの荷物を荷台に置き、荷造り紐でしっかりと固定する。
前カゴには私の集めた物が山盛りつまっているけど、必要物資と割り切って持っていく。
「よーし!それじゃあお家に帰ろう!」
「おー!」
「ところで、わしのおやつは買ったのかのぉ?」
「カリカリキャットフードだけど?」
ケシはまた数カ月はカリカリ生活を余儀なくされるのであった。




