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2-2

 よく晴れた朝。昨日の夜予定した通り、私達は街へ向かった。

 用心のため、私は弓を携行している。


「黒の生命体は基本的には夜しか出てこない。昼間のうちなら安全に探索できるはずじゃ」

「そうね、ただ用心するに越したことはいわ」


 森を抜け、大きな橋を渡り切る。

 駅前広場についた私達は、とりあえず近くのスーパーに向かうことにした。


「今日の目標は…… 小麦粉と調味料。それに記録の調査ね」

「私の居た表世界のことが少しでもわかるといいのですが……」


 広場からあるき出し、踏切を渡ると国道に当たる。

 そこを右に進めばスーパーが見える。

 ここは少し前の夜にカトレアさんとフリージアが戦った駐車場がある。


「あの日のまんま残っているのですね」

「ここにはほとんど人間は住んでいないからね。仕方ないわ」


 戦闘の跡が残る駐車場を抜け、大きくガラスが割れたサッシから中に入る。


 内装は表世界の時と変わりはない。

 衣服が売っている場所にギフト館にちょっとしたフードコート。ドラッグストアもそのまんまある。

 私達はそのまま食品コーナーまで一直線で向かった。

 ここではまず生ものは置いていないしあっても腐っているだろうから、長期保存できるモノがある場所を集中的に散策した。


「よし。とりあえず小麦粉は確保できた」

「これで当分は生きていけるわね」


 荷物も今日はリュックを持ってきているので、いっぱい押し詰める。女の子とはいえ二人分だからいっぱい必要になるからね。


 次に塩と砂糖。これは森で作るのは困難なので調達。少し重いけれど生きていくためだから頑張る。

 あとはホットケーキミックスやらココア。毎日飲むものだから缶の大きいものにした。


「二人で回収できるとはいえ、結構な量になりますね」

「仕方ないわ。また数ヶ月だらだら生活するためだもの!」

「あはは……」


 その後私は野菜の種なんかもカバンに入れて持ち帰ることにした。肥料の方は森にいっぱいあるから必要ない。

 これが育てば少しは食事に花を添えられるんじゃないかな?



 そんなこんなで私達はカバンいっぱいに食料関係を詰め込み、次の場所へ移動することにした。


「次は本屋さんだっけ?」

「はい。スーパーの近くにある書店です。本以外にも文具なんかもおいてあるんですよ」

「紙とペンは必須だものね」


 大通りを左に進み、十字の交差点を過ぎたところにその本屋さんは見える。

 さっきは窓から入ったけれど、今回はちゃんと入口から中に入る。


 窓が殆ど無いお店なので、昼までも薄暗く湿気っぽい。

 古くなったあの本の匂いが充満している。


「あーこの匂いいいわね」

「カトレアさんはこういうの好きなんですね」

「そりゃね。魔導書の匂いなんて最高じゃない」

「なるほど……」


 とりあえず私は雑誌コーナーに向かう。

 もし表と裏が影響しあっているのなら、その月に発売された雑誌なんかが置いてあるはずだから。


「うーん……これは六月の?でも一応今年発売のモノだけど……」


 影響はしている。

 けれど、私がここに来る前の一番新しい記憶では、その日は六月だった気がする。

 そこからこっちに飛ばされたとして、私はもう三ヶ月以上こっちの世界にいるのだから……


「時間のズレはあるのかもしれない」


 それか、私が手にとったのが売れ残りの可能性もある。

 そこで私は新聞を探すことにした。

 これなら今日が何日なのかわかるはず。


 レジの横に立てかけてある地方紙を一部取り出す。

 群馬県の地方紙とかあれしかないぞ。


「えっと……二〇一八年六月二二日?」


 ということは……どういう事?

 

 レジのカウンターに新聞を広げて中身を見る。

 ニュースでもこんな事件聞いたなーって感じのことが書いてはあったのだけど、その中に一つ気になるものがある。


「電車の衝突事故?しかも吾妻線……」


 事故原因は運転手の居眠りという事になっているが、詳細は不明。事故にあった乗客全員が死亡。また、ホームで電車を待っていた人も重傷者が出ているようだ。

 それがちょうど……


「さっき通った駅じゃない……」


 しかし駅には電車はない。

 これは表世界での出来事で裏の世界は……


「カトレアさんが戦っていたあの場所……あそこにすごいことになってる電車があった気がする……」


 数日前にカトレアさんがモヤ玉と戦っていた線路。

 あそこにあったのは間違いなく電車だった。


「鏡…… 確かにこっちにも影響が出ているけれど……」


 他になにかないか調べてみると、思った以上にいっぱい出てくる。

 工場の爆発。高速道路で大型バスを含む大事故。

 他の県でもいろんな事故がいっぺんに起こっているという。


「なんかの偶然?それにしては多すぎない?」


 そんなことで私が悩んでいるとき、遠くの方でカトレアさんが私をよんだ。

 それもかなり大きな声で。


 カトレアさんになにかあったのだろうか。

 私は弓をギュッと握りしめてカトレアさんのもとへと走って向かう。



 

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