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駐車場が見渡せる場所まで私は移動する。
暗い道だけど、月の光が足元を照らしてくれるので、そこそこ安全に移動はできたのだけど、さっきから駐車場では魔法が飛び交っている。
「躊躇している余裕はないのじゃ。本気で行くのじゃ!」
「わかってるって!」
カトレアさんの周囲には氷の結晶がぐるぐると回っていて、カトレアさんの意思で動かすことができるらしい。
ナイフで近接攻撃。距離をとったら氷の魔法で攻撃と絶え間なく敵に攻撃を繰り返している。
「戦っている相手は…… 魔法使い??」
相手は全身真っ黒なローブで、カトレアさんと見た目は同じだけど、フードを深く被っていて顔が良く見えない。
「黒の結晶体を壊されるのは困るんだよな」
「こっちだって、それがあると草木がダメになる。環境破壊もいいとこだわ」
「そんな事は知ったことではない。我々は帰らねばならない」
「帰る?どこに?」
「元の世界に」
「っ!?」
黒いローブの魔法使いは黄色に光る矢を放つ。
カトレアさんはそれを避けて氷の結晶を放ち、すぐさま接近攻撃を加える。
カトレアさんが押しているように見えるのだけど、ローブの魔法使いはどの攻撃もひらりと余裕にかわしている。
「はぁっ……はぁっ…… この黒の結晶体がどれだけ土地を荒廃させてきたと思っている」
「さあ? 我々の目的のための犠牲程度?些細なことでしょ?」
「ふざけてる。あれのせいでこの世界はめちゃくちゃだ!」
「ふむ、やはりこちらの世界はだめですな」
「なに!?」
ローブの魔法使いはまた矢を放つ。
それを交わそうと構えたカトレアさんだったけど、その矢は空中で消えた。とおもったら、激しい高い音と強い光を瞬間的に放った。
閃光弾というのがあれかな? 直に貰えば少しの間は目と耳が効かなくなる。
「お遊びも終わりだ。これで決める」
ローブの袖で顔を覆っているカトレアさん。強い音が頭に響いているのか、もう片方の手で頭を抑えている。
ローブの魔法使いは光の槍を作り出す。
パチパチと弾けるような音と静電気のようなエフェクト。
カトレアさんにゆっくりと近づき、槍を振りかぶる。
カトレアさんに逃げ場はない。
避けることも受け流すことも出来ない状況。
唯一の相棒ケシは泡を吹いて気絶している。
カトレアさんがやられてしまう。
でも私に何ができる?
魔法は使えないし、武術の心得もない。
弓はログハウスに置いてきている。
私が役に立つのは平和な時だけ。
無力。
私に出来ることは………
「カトレアさぁぁぁぁん!!」




