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蝶は蜜を求めて異世界に舞う  作者: おりょ?
第2章 出会いの集う街
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8話 蝶は街に辿り着く

 「ここがルメイラかぁ」

 門をくぐった先に広がっていたのは、露店で客を呼び込む声、老若男女の行き交う人々、雑多が似合う、まさに異世界の街でした。

 焼いた肉にパン、果物や薬草、謎の液体が入った瓶が売られ、それを主婦や子ども、武器を携えた厳つい人が買っていく。

 正直、とてもわくわくします!


 「アンクさん達には、感謝しないとね」

 最初に出会ったのが、優しい人達で良かったです。

 思い出すのは、霧の森のこと。


 あの時、私は『幻惑』を使って、翅を消し、白いローブを着てるように見せました。あくまで、()()()()()()()です。裸なのには変わりないので、触られるとアウトです。

 それに、『隠蔽』も使って、ステータスを魔法使いみたいに…いえ、この世界では魔法士でしたね。魔法士みたいにも偽装しました。『隠蔽』に関しては、あまり意味がありませんでしたが…。

 これらは、よくできていたのです。できていたのですが、自身の設定がずさんでしたね。

 土地も知識もない旅人は、無理がありました。アンクさん達から疑いの目を向けられた時は、ひやひやしましたよ。


 なんとか街へ一緒に連れて行ってくれることになった後の会話は、とても有意義でした。

 ハンターのことや、スキルのこと、勉強になりましたね。

 銀貨1枚が必要になった時は、どうしようかと思いましたが、お菓子感覚で1本摘んでいた花を結晶化させると金貨1枚になったのには驚きました。あれだけで金貨1枚になるなら、いっぱい作れば大金持ちになれるんじゃ…と黒いことが一瞬頭を過ぎったことは秘密です。


 そうして、このルメイラに着き、門でアンクさん達と別れて、今に至ります。



 さて、街に来たものの何をしましょうか?

 公園でも探して、花を見つけましょうか?それとも、もう一度、街の外に出て、花を見つけましょうか?

 ………どっちも花が出てくるということは、お腹が空いているんでしょうね。お菓子予定を売ってしまった訳ですし…。

 よし!街の中で花を見つけましょう。

 外に出たら、また銀貨が1枚必要になりますしね。

 そうと決まれば、出発です!




 「お嬢ちゃん!旅の人?リンゴ食べるかい?」

 「ごめんなさい。今はお腹空いてなくて…」


 「ねぇ、君!君に似合う髪飾りがあるんだけど、見てみない?」

 「ちょっと、持ち合わせが…」


 「君、1人かい?お父さんとお母さんは?迷子なら、警備兵の詰め所に連れて行ってあげるけど」

 「け、結構です!」


 街を歩いていると、意外にも声を掛けられますね。

 食べ物関連は、蜜以外は食べたいとは思えないんですよね。一応、人の体なので食べれないことはないと思いますが、今は蜜さえあれば良いので。

 服とか装飾品も、興味がわきません。お金がないのに加え、翅が邪魔で着れる服もない。見た目は『幻惑』で誤魔化せますし、裸でも恥ずかしくないんですよね。基になった魔物は服なんて着ないので。生前では考えられないですが、こういう時に、私は魔物なんだなぁと実感します。…羞恥心が皆無ということではありませんよ?

 最後の人ですが、やっぱり13歳ボディで1人徘徊は迷子に見えるのでしょうね。


 

 ぶらぶらと歩き、大通りから路地に、路地から大通りにを繰り返していると、目的の場所へと辿り着きました。

 建物と建物の間、花壇に囲まれ、ベンチが3つ置いてある小さな憩いの場でした。

 ここでお昼寝したら、気持ち良いんだろうなぁ。

 そう思える場所でした。


 ですが、今は蜜です。

 花壇に近づいて、花の種類を確認します。

 赤色のポピーみたいな花は『キキア』、紫色のラベンダーみたいな花は『フサン』、黄色のマリーゴールドみたいな花は『リッコル』。3種類の花が咲いています。

 「う〜…どれも美味しそう……でも、1種類しか飲めないよ〜…」

 どれもこれも、良い香りがします。こういう時に、少ししか飲めないこの体が恨めしいです。

 う〜ん…う〜ん…。

 「………よし!決めた!この子にしよう」

 選んだのはリッコルです。他の子は、今後のお楽しみにしましょう。


 「植えて育てている人、ごめんなさい!」

 えいっと1輪だけリッコルを摘み取ります。なぜ、その場で飲まないかというと、いつ誰が来るかわからない場所でフワァ〜となるのは、さすがにまずいと思ったからです。

 私の『幻惑』では、まだ音は誤魔化せませんし、精神強化で悦びの気持ちを押さえつけるのも、なんか嫌です。

 なので、適当に宿でも見つけて、そこで楽しみます。

 街に入る時に、金貨1枚から銀貨1枚分を払って、戻ってきたお金で泊まれる所を見つけましょう。


 ……やっぱり、ちょこっとだけ味見しよっかな。

 人差し指の先に、ほんの1滴だけ蜜を『抽出』して、ペロッと舐めます。

 「っん~~~!!!」

 たった1滴でも、体をぞくぞくとさせる感覚が駆け巡ります。

 これを、コップ1杯分飲んだら、どうなっちゃうんだろ?


 私は、ふ~んふふ~んと上機嫌にスキップしながら、大通りへと宿を探しに行きました。

宿の客A「隣の部屋から、くぐもった声がする…」

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