4話 森の日常,森の秘密
おはようございます。
恐怖の時間から一夜明けて、新しい1日が始まりました。
私はと言うと、あの後は体を洗いに行きました。
だって、その…嫌じゃないですか……股が…ベトベトして…。
ということで、水を探しに行きます。幸い、すぐに見つかりました。
最初、蝶の翅は濡れて大丈夫か心配でしたが、意を決して入ってみると、ちゃんと水を弾いてくれました。『鱗粉』が仕事してくれたので安心です。
「…今日だけで、いろんなことがあったなぁ〜」
体を洗いながら独り言ちます。良いこともあれば、悪いこともありました。超忙しかったです。
「よし」
体を洗い終わったので、もう寝るとしましょう。疲れました。夕焼け空が目に沁みます。
濡れた体は自然乾燥に任せます。魔物だから風邪なんて引きませんよね?…引かないことを祈ります。
川の畔に丁度良い大きさの岩があったので、そこに横になります。
お休みなさい。
そして、現在に至るのです。
疲れも取れ、適度にお腹も空いています。
今後の予定は決まりました。
まず第一に食事です。これは、同時に『蜜の奇跡』の強化に繋がるので、最優先事項ですね。
次に、ステータスの強化です。自分の貧弱さを痛感したので、鍛えます!因みに、フェロス・マンティスとの戦いで、Lvは上がりませんでしたが、STRが7上がって12に、AGIが10上がって30になりました。INTは27上がって900です。倒しきっていないのに、ステータスが上がったのは、称号『転生者』の効果でしょう。殺し合いになんて慣れていないので、少しの戦闘でも強くなれるのは素晴らしいですね。
スキルも増やしていきたいと思います。『索敵』みたいなのが欲しいです。
最後に、ぶらぶら散歩します。異世界に来たというのに、ずっと森の中というのはどうかと思ったので…。
「よし!行くか!」
さぁ、出発です!
道中は『鑑定』を使いながら移動することにしました。
『木』『木』『木』『木』『水晶』『木』『光茸』『木』『木』『光茸』『プロンス』『木』『木』『木』
おっと、木ばっかりだったので見落とすところでした。
歩き始めてから約5分。木と木の間に三輪だけ赤い花が咲いていました。
この『プロンス』はガーベラによく似ています。赤色が、まるでルビーみたいで美しく。すごく…すごく美味しそうです。じゅるり…。
「………ハッ!」
危ない、危ない。涎が垂れかけました。落ち着け、私!
前回から反省し、私は周りを見渡して、危険がないか確認します。声も出さないように気をつけなくては。
…どうやら、大丈夫なようですね。
では、早速花に近づき『抽出』を使います。ピンク色のとろ~っとした蜜が現れました。
あぁ~、香しい花の匂いに包まれる!幸せぇ~。ドクドクと鼓動が早くなってきました。
うっとりしつつ、蜜を飲み始めます。チュル~…ゴクッ。チュル~…ゴクッ。この蜜は粘性が少し強いようで、ねっとりと喉を流れ落ちるのがよくわかります。シロップのようですね。
チュル〜…ゴクッ。チュル〜…ゴクッ。…フゥ……。
最後の一滴を飲み込むと、体がブルッと震えます。あっという間に、飲み終わってしまいました。
「…ふにゃぁぁぁ~んむむむ……」
咄嗟に口を手で塞ぎます。悦びの声を抑えられませんでした。
苺に練乳をかけたような味で、甘さの中にある、ほのかな酸味が最高です!あぁ、口の中が幸せ〜。
今回の蜜では、頭がポワァ〜とすることはありませんが、代わりに体がぽかぽかします。心と体が元気に満ち溢れるようです。あまり多くの量が飲めなくて残念です。
余韻に浸っていると、ピロリンと音がしました。
「おっ!何が書いてあるかな?」
ーーー
『赤蜜の奇跡』が解放されました。現在、使用可能な効果:火球,灯火。
ーーー
おぉ!来ました!火属性攻撃!
色的に来るかな?と思っていましたが、案の定来てくれました。これであのカマキリをもっと楽に撃退できそうです。
「いよぉ〜し!この調子でどんどん行こう!」
温まった体で、また歩き始めます。
「この子が私の本来の姿かぁ」
朝ご飯から10分程歩いていると、蝶の魔物に出くわしました。
ーーー
〜ステータス〜
名前:−−−
種族:イリュージョン・バタフライ
性別:雌
年齢:5歳
Lv:17
HP:725
MP:1400
STR:15
VIT:25
INT:48
MND:31
AGI:44
〜スキル〜
鱗粉(Lv.5)飛行(Lv.4) 幻惑(Lv.5)
〜称号〜
ーーー
そう、私と同じ種族のイリュージョン・バタフライです。小学生が大の字になったのと同じくらいの大きさ以外は普通の蝶と変わりません。木の幹に器用に止まっています。
「やっぱり、『蜜の奇跡』はないかぁ」
気になっていたのは、『蜜の奇跡』が他の仲間にも有るか否か、でした。
結果はこのように持っていないようなので、唯一技能は文字通り私だけのスキルなのでしょう。
ステータスを上げることを目標にしましたが、さすがに同族を痛めつけるのは気が引けます。この子も襲っては来ないようですし。
襲うと言えば、あまり他の魔物も見かけませんね。楽で良いですが。
散歩を続けましょう。
捻れた木や浅い水溜り。茸の群生地を見かけました。
そして、木々を抜けて行くこと十数分。
思わず立ち止まる私。自分の目の前にあるものに手を触れます。
「これって…結界?」
白い靄のような壁が行く手を遮っていました。
旅立ちの兆しが見え始める…
プロローグに友人のBacky君が描いてくれた挿し絵を追加しました。
Backy君、ありがとうございます。