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蝶は蜜を求めて異世界に舞う  作者: おりょ?
第2章 出会いの集う街
18/25

17話 胃袋の中にブラックホールがあるかも…

 「………」

 「ベルと一緒に行動するようになってから、もう1週間かぁ〜」


 ベルとパーティーを組んでから、早7日。ベルと共に受けた、初めての討伐依頼から6日経ちました。

 こっちの世界でも、1週間は7日間なんですね。


 あのラプター討伐を皮切りに、討伐系の依頼を私達は受注していきました。

 1日に1つだけですが…。急いで、Lvを上げている訳でもありませんしね。

 ベルの助けもあって、特に危険はありませんでした。結局、一番緊張したのは最初のラプターだけでした。


 今日までの討伐で、Lvも順調に上がっていき、現在はLv.56となっています。やっと、『転生者』の称号の効果を実感できています。


 今は何をしているかと言うと、私とベルは『ゆりかご亭』の1階の食堂にて、朝食の真っ最中です。


 「ねぇ、ベル〜。今日はどうする?この後はとりあえず、ギルドに行く?」

 「………」


 3日前からですね。一緒に朝食を摂ることになったのは。

 ハンターギルドに集合してから、その日の予定を決めるよりかも、朝食を食べながら一緒に決めた方が得だと考えたからです。

 これにはベルも賛成してくれました。『ゆりかご亭』の料理はとても美味しいそうなので、断る理由もなかったそうです。


 そして、今日もベルと予定を話し合おうと思っていたのですが…。


 「…あの〜、ベル?ベルさん?」

 「………」

 「…ど、どうしたの?私の顔に何か付いてる?」


 何故か、ベルはじーっと私を見ています。

 私…何かしちゃったかな?

 


 やがて、ベルはフォークを置き、口を開きました。


 「……リン…。ずっと思ってたんだけどさ…」

 「な、何…?」


 ゴクリッ。思わず生唾を飲み込みます。





 「リンって…………少食過ぎだよね?」



 「………?」


 うむ…。聞き間違いかな?


 「えっと〜、今、少食って言った?」

 「うん。言った」


 どうやら、聞き間違いではないようですね。


 「あの〜、ベル?突然、何を言い…」

 「だって、心配になるんだもん!いっつも、いっつも、いっつも!」

 「ひえぇっ?!」


 バンッとテーブルを叩き、立ち上がるベル。

 そして、私…ではなく、私の持つ果実ジュースの入ったグラスを指差します。


 「最近、リンと一緒に食事するようになったからわかったけど…朝はジュース1杯。昼は瓶に入った飲み物と現地採取した木の実を数粒。夜はジュースと一口サイズのパン。一回だけなら、食欲ないだけかと思ったけど…それを何日も続けられたら、そりゃあ心配にもなるよ!」

 「なっ?!…そ、それは……」


 つい、目を逸らしてしまいます。

 突然、何を言い出したかと思えば、私の食生活について。

 いつか言われるだろうなぁ〜と思っていましたが、まさかこのタイミングとは…!


 だって、本当に蜜…と言うか飲み物だけで充分なんだもん…!なんて、言えませんよ!


 「で、でも…ほら!一応、ちゃんとパンとかも食べてるじゃん。ね?」

 「『ね?』じゃない!普通の人…ううん。普通の女の子でも、もっと食べるよ!それに、今『一応』って言ったよね?『一応』って!」


 くっ!私としたことが、ベルに追求材料を与えてしまった…!

 あくまで、ちょっとは食べてますよアピールしていましたが、効果がなかったようです。


 だって、味がしないし、腹にも貯まらない物を食べても意味ないじゃないですか!


 ここ数日、液体以外の物を食べて気がついたことがあります。

 初めて固体の食べ物を食べた時、お腹が膨れないなぁ〜と感じていました。

 その後も、固体の食べ物を食べる機会がありましたが、やはりお腹が膨れる気配はありませんでした。しかも、排泄もされないのです!


 そして、ある日のこと…正確にはラプターの余った肉を処理している時のことですが、私は気がついたのです。

 肉を食べた瞬間、自分のM()P()()()()()()()()のを。

 最初は、見間違いかな?と思いましたが、やはり咀嚼して飲み込んだ瞬間にMPが回復していました。


 これは予想ですが、液体と違って固体を摂取した場合、そのままMPへ変換されるのだと思います。

 種族的な体質なのか、それとも別の原因なのか不明ですが、この予想が正しければ、お腹が膨れない理由もわかります。


 「べ、別に食べられない訳ではないけど……」

 「けど?」


 うがぁ!どうしよう!ベルを納得させられる言い訳なんて思いつかない!

 だって、MPが回復するとはいえ、味がしない物なんてわざわざ食べたくないじゃないですか!

 なので、ここ最近は蜜ばっかりで食事を済ませていましたが…ベルを心配させてしまうとは……。

 でも、このことを言っても、はぁ?ってなるだけでしょうし…。


 う〜………よし!こうなったら、勢いでいこう!勢いで!


 「ほ、ほら!人には人の適した量があるって言うじゃん!」

 「まぁ、それはそうだけど…」


 ベルはまだ納得できていないようですが、仕方ないでしょう。だって、適した量と言っても、限度がありますから。

 ですが、退いてはいけません!もっと、押し込まなくては!


 「そういうものなの!ベルにはベルの適した量。私には私の適した量。それが偶然、私は超超少なめだったっていうだけ!」

 「…むぅ〜」

 「……うぐっ」


 ベルはじとーっと私を見ます。

 ま、負けてはなりません!もう少しです!


 「そ、それに普通の量じゃないって言うなら、ベルだってそうじゃん!」

 「え?私?」


 突然、矛先が自分の方へ向いたので、ベルは目を瞬かせます。


 「私は超少なくて心配なら、ベルは超多くて心配だよ!」

 「…んな!?」


 私はベルの目の前に置かれた物を指差します。

 それは、5枚も積み重なった大皿でした。

 そうです。ベルは朝食の時点で5人前は平らげているのです。


 「私は心配だよ。そんなに食べてベルのお腹が破裂しないか…」

 「な、な、リン!私のことは関係ないでしょ!話題をすり替えるな!」


 くっ!失敗したか!


 「こら!失敗したか…みたいな顔をするんじゃない!」

 「…ぐぅぅ……」

 「本当にまったく……」


 ぷくーっとベルは頬を膨らませた後、シュッと真剣な顔に戻し、私を見ます。


 「リン。本当に大丈夫なの?満足に食事を食べられないぐらい、具合が悪かったりしない?」


 その顔、その声からは、嘘偽りなく私を心配してくれていることがわかりました。

 さすがの私でも、それぐらいは気づきます。


 「私は…大丈夫。大丈夫だよ、ベル」


 なので、顔を上げ、ベルの目を見て言います。

 顔を俯けながら言っても、説得力などありませんから。


 「本当に?本当に無理してない?」

 「うん。無理なんかしてないよ。心配してくれて、ありがとう」


 ベルは10秒程、しっかりと私の目を見ます。

 そして、ふぅ〜と息を吐くと、席に座りました。


 「わかったよ、リン。大丈夫って言うなら、それを信じる」

 「!ありがとう、ベル!」


 良かったぁ!信じてもらえた!

 私がほっと胸を撫で下ろしていると、ベルはやれやれと苦笑します。

 そして、もう一度、真剣な顔をして私に言いました。


 「でも、リン。もしも、本当に体調が悪くなってたりしたら、ちゃんと言ってね?」

 「もちろんだよ!その時は、無理なんてせずにベルを頼るから」


 私はベルに片手を突き出し、小指を出します。

 正直、この世界にも同じ風習があるかわかりませんでしたが、これを見て、ベルも小指を出してくれました。どうやら、あるみたいですね。


 私とベルは、小指を絡ませます。


 「「約束!」」



 そして、お互いの顔を見ていると、なぜか自然と笑みが溢れてきました。




 …この秘密も、いつか打ち明けれたらいいな。

リン「ところで、ベル。…まだ、食べるの?」

ベル「もちろん!だって、まだお腹一杯じゃないもん!」

リン「(ベルの食べっぷりを見てるだけでも、お腹が膨れるよ…)」(目を逸らす)

ベル「???」

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