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蝶は蜜を求めて異世界に舞う  作者: おりょ?
第2章 出会いの集う街
16/25

15話 考えて、選んで

 「結局、了承してしまった……」


 ベルとの出会いから一夜明け、現在の時刻は午前8時。こっちの世界では、『朝餉後の刻』と言うそうです。

 今、ある場所に向けて、大通りを歩いています。


 「…はぁ~……」


 思い返すは、昨日のこと。

 蜜酒で酔い、ベルに膝枕してもらい、パーティーを組もうと誘われる。

 すごく濃い1日でした。


 「私…何であの時、ベルの申し出を受けちゃったんだろ…?」

 あの時、私は『ベル』と『ベルに対する罪悪感』の間で揺れていました。

 私は、ベルに対して沢山の隠し事をしています。それなのに、簡単にベルの好意を受け取っても良いのか、と……。

 しかし、何故か私はベルの申し出を受けました。まだ、心の葛藤に決着が付いていないのにです。


 「…それに…あれは、何だったのかな……」

 自分の胸にそっと手を当て、考えます。

 実は、あの時、不思議なことがありました。

 ベルが私の目も見て、「私とパーティーを組みませんか?」と言った時のことです。

 私も顔を上げ、ベルの瞳を見つめた時、『何か』が私の中を流れたのです。ふわっとして、温かいものが。

 恐らく、その『何か』が私の葛藤を一旦止めたのでしょう。

 しかし、それが何だったのか…その…わからないのです。

 いつだったか、同じものを感じた記憶はあるのです。あるのですが…思い出そうとすると、まるで霞のように消えてしまうのです…。どうしてでしょうか……。



 う〜ん…と考えながら歩いていると、目的の場所が見えてきました。

 ルメイラの出入り口である、大きな門です。

 それも、いつも採取に出るために利用している門ではなく、真逆に位置する、私が初めて訪れる門です。

 こちらの門からは、別の街や凶暴性の低い魔物の出る山へと繋がる道があるそうです。


 ちょうど切りが良いので、『何か』について考えるのは一旦、終わりにしましょう。

 昨日から思い出そうとして、思い出せないということは、簡単には出てこないものなのでしょう。

 いつか、思い出すと信じることにします。問題の先送りですね…。



 さて、今回、何故こちらの門に来たかと言うと、実はベルと待ち合わせをしているからです。

 昨日、早速ベルは「明日、一緒にハンターの依頼を受けない?」と誘ってきました。

 特に予定もなかったので、待ち合わせの約束をしたのです。


 辺りを見回しても、ベルはまだ来ていません。まあ、約束した時間から20分ぐらい前に来てしまったので、仕方がないですね。

 ゆっくり待つことにしましょう。


 今日のベルとのお出掛けですが、昨日から楽しみにしていました。

 あれだけ、「罪悪感がぁ〜」と言っていましたが、正直に言うと、パーティーを組むことになった時、とても嬉しかったのを覚えています。

 自分でもわかっていますが、私は結構ぐだぐだです。悩みだすと沼に嵌まってしまうタイプです。

 しかし、その分、一度決めてしまえば、良い方に考えるようにしています。

 その…単純なのですよ…。少しでも、選んだ物事に私が良いと思えるものがあれば、自然とそちらに流されると言うか…。


 なので、今回も私の選択は悪いものではなかったと、考えることにしました。

 それにあの時、ベルとパーティーを組む選択をした、明確な理由は自分でもわからず終いですが、この選択は間違いではなかった。そんな気がするのです。

 根拠なんて1つもありませんけどね。



 「おーい!リ〜ン〜!」


 自分を呼ぶ声に顔を上げます。

 通りの向こうからベルが駆けて来ます。ニコニコと笑っているのが、ここからでも見えます。


 私は両頬をパシッと叩きました。

 ベルは楽しそうにしているのに、こっちが辛気臭い顔をしていたらいけません。

 今は、私も楽しみましょう。折角、ベルと一緒なのですから。


 これから、どれだけベルと一緒にいられるかはわかりませんが、恐らく、私は秘密を隠したままでしょう。


 …いつか、隠し事なんてしなくても良い関係になりたいな。

 その時が来れば、私も胸を張って、ベルの()()と言えるかもしれません。

 そのためには、もっとベルと仲良しにならなくちゃいけませんけどね。



 「お待たせ〜。もしかして、いっぱい待たせちゃった?」

 「ううん。大丈夫だよ、ベル」

 「それなら、良かった。…ちぇ〜、私の方が先に来て、リンを待っとこうと思ったのになぁ〜」

 「あはは…私は早く起きちゃったからね…」

 「そうなの?どうして?」

 「ど、どうしてって…それは、その…」

 「その?」


 ベルは顔を傾けながら、私の顔を覗き込んできます。ニヤニヤとしながら。

 ……う〜…意地悪。


 「…その……楽しみ、だったから…」

 「ふふ。素直でよろしい!」


 なんか、悔しいです。じとーっとベルを睨みます。


 ベルはそれに気づくと、ぺろっと舌を出しました。

 「ごめん、ごめん!怒らなで!…ね?」

 「むぅ…別に怒ってる訳じゃないけど…」

 「怒ってないなら、良し」

 「ベ〜ル〜?」

 「えへへ。冗談だって!」



 そんなやりとりをしていると、ベルは門の方に少し進み、振り返って私の方へ手を差し伸ばしました。


 「じゃあ、そろそろ行こっか」


 私はその手を見つめます。

 一瞬、躊躇ってしまうなんて、本当に私はしょうがない奴ですね。

 さっきまで、考えていたことが頭をよぎります。


 ですが、軽く頭を振って、その考えを払います。

 だって、決めたじゃないですか。ベルともっと仲良くなるって。



 ベルの手を取ります。

 そして、顔を上げます。


 「うん。行こう!」


いつか、この嘘を謝れるように

それまでは……




この度は、投稿が遅くなり、申し訳ありませんでした。

とある1場面がどうしても納得がいかず、4日程その場面に時間をかけてしまいました。

なので、「1週間かけて、この量かよ…」って、思わないでください。お願いします。


これからも、『蝶は蜜を求めて異世界に舞う』をお楽しみくださいませ。

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