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蝶は蜜を求めて異世界に舞う  作者: おりょ?
第2章 出会いの集う街
11/25

10話 ハンター(ただし、狩りはしない)生活

 気がつくと、見慣れた天井だった…。



 見慣れたと言っても、まだ滞在4日目ですけど。

 この『ゆりかご亭』で、もう3泊もしました。居心地が良く、今のところ他の街に行く予定もないので、1週間分ぐらいの宿泊料を払おうと思いましたが、エレーナさんに止められました。

 曰く、「何が起こるかわからないハンターは、2日分以上のお金は払わない方が良い!」だそうです。勉強になります。

 ちなみに、ハンターの仕事は昨日から始めました。

 それに伴って、腰に提げられるポーチと剥ぎ取り用ナイフを買いました。剥ぎ取り用ナイフはまだ1度も使っていませんが…。

 と言うことで、今日も稼ぎに行ってきます。食事関係の出費はありませんが、雑貨を買うにはお金がいりますので。



 「エレーナさん、おはようございます!」

 「おはようさん、リン。今日もギルドかい?」

 「はい。頑張ってきます」

 「気をつけてね。朝ごはんは?」

 「大丈夫ですので」

 「若いんだから、しっかり食べなよ!ちゃんと食べてるのかい?」

 「あははは…行ってきます!」

 「ったくもう…行ってらっしゃい!」


 1階では、エレーナさんがいつも通り朝の支度をしていました。

 『ゆりかご亭』では、朝食を宿泊している人には少し安く出してくれます。その方が外のお店で食べるより、安くて量も食べれるからです。

 ですが、私の食事は蜜なので利用していません。

 エレーナさんには、朝食を食べていないか、安くて量も少ない片手間で食べられる朝食をとっているんだろうと思われているのでしょう。

 蜜が食べ物なんて言えないので、笑って誤魔化すしかありません。




 宿を出たら、ギルドに行く前に蜜を採りに行きます。

 瓶を買ったことで、蜜をどこでも飲めるようになったのは最高ですね。ただ、日持ちはしないので、採った蜜はその日中に飲まなくてはいけません。

 今日は、初日に飲んだリッコルの蜜にします。この公園に咲く花の蜜は、全種類飲みました。

 『蜜の奇跡』についてわかったことがあります。

 現在、私には白、赤、紫、黄の4種類の奇跡が解放されています。

 この色と同じ系統の蜜を飲めば、奇跡の内容が強化、または数が増えるのです。例えば、『赤蜜の奇跡』は火球と灯火が使えましたが、火球は火弾に変わりました。『紫蜜の奇跡』は毒,精神強化に麻痺毒が追加されました。

 Lvは大カマキリを倒してから上がっていませんが、主力である『蜜の奇跡』は順調に強化されているので良しとしましょう。


 「蜜の補充完了〜」

 瓶一杯に蜜が溜まりました。透明な瓶の内側できらきらと美しく光っています。

 「ふふっ」

 それを見て、思わず笑ってしまいました。今から飲むのが楽しみです。

 大事にポーチの中に仕舞って、やっとギルドに向かいます。




 ギルドに着くと、掲示板を見に行きます。

 ギルド内には私を含めて8人しかいなかったので、ゆっくり掲示板を見ることができます。

 常に張り出されている納品依頼の他には特に私ができる採取依頼はありませんでした。討伐依頼はありますが、やりません。そんなに、お金にも困ってませんし、雑貨を買えるぐらいの稼ぎで良いのです。


 今日は適当に薬草などを採取しに行きましょう。ついでに、野生の花が咲いている場所も探します。次に来たときに、蜜を貰わなければいけないのですから。




 ルメイラを出るとあの霧の森に向かいます。

 昨日は、ハンターとして初めての活動でしたから、あまり奥には行っていませんでした。

 なので、今日は更に奥、あの世界樹の欠片があったところまで行こうと思います。


 「あっ、ポーション草だ」

 森の中を歩いていると、ポーション草を発見しました。ポーション草とは、文字通りポーションの材料となる薬草です。見た目は雑草とほとんど変わりありませんが、葉の先端が薄い青色になっています。そのまま食べると、とても苦く、ポーションにする際に少し果汁を入れて甘くするらしいです。

 私はポーションを使ったことはありませんが、傷口に直接塗っても効果があるようです。

 ポーション草は、いつでもギルドの掲示板に依頼が張り出される程、消費が激しい物なので、少し摘みましょう。

 ポーション草は、3分の1まで葉が残っていれば数日で再生するので、必要な分だけ摘みます。

 ハンターがポーション草を採取する時に、少し残すというのは暗黙の了解です。


 と言うことで、私のハンターとしての仕事は、こんな感じです。

 基本的に採取ですね。

 ポーション草の他にも、毒草や木の実なども採取します。

 私のポーチはそんなに大きくはないので、すぐにいっぱいになりますが、小遣い稼ぎには充分なので、大抵は行きの道のりで採取は終わってしまいます。


 この霧の森にも魔物は出ますが、私は回避するようにしています。見かけたり、気配を感じたりしたら、すぐに『幻惑』で透明化するようにしています。

 これではLvはいつまで経っても上がりませんが、どうしても戦わないといけない時以外は遠慮したいですね、戦闘は。


 世界樹の欠片に行くまでにポーション草と木の実を採取しました。赤く小さな木の実は、この霧の森に群生している『フロウパ』という低木の物で、油がよく取れるようです。



 「おー、着いた〜」

 そうこうしてる内に、第2の故郷である世界樹の欠片の所までやって来ました。

 相も変わらず、若木はぽつんと木々の間に生えています。よく見ると、ここから出た時よりも大きくなっていますね。

 うむうむ、順調に成長しているようでなにより。

 枯れていたりなんてすれば、悲しいですから。枝をそっと撫でます。


 「休憩したら帰ろっかな」

 お昼はここで過ごすことにします。霧があるので、快晴の下でのピクニックとはいきませんが、この若木の近くにいると落ち着きます。

 若木の横に腰を下ろすと、ポーチから今朝集めた蜜の入った瓶を取り出します。

 リッコルの蜜は疲れを癒してくれますので、ハンター仕事の後に効きます。まあ、歩いて採取しただけなのですけどね。

 瓶に口をつけて、ぐいっと飲みます。ゴクッ、ゴクッ…。


 「…プッハァ〜〜!」

 風呂上がりの牛乳を飲んだ時みたいなリアクションをしてしまいました。

 だって、美味しいんですもの。

 うっとりとした顔で、瓶に入った残りの蜜を眺めます。

 1度に全部は飲まず、半分まで飲んだ後はゆっくりと少しずつ飲むようにしています。

 コクッ。コクッ。

 やがて、全部飲み終えると…。


 「ふぅ〜〜〜…」

 大きな息を吐く。

 幸せですね。

 まだ見ぬ蜜も素敵ですが、同じ蜜を何度も楽しむのもたまりません。



 「よいしょっと…」

 その後、10分ぐらいぼーっとして過ごすと、ルメイラに帰るべく立ち上がります。


 「じゃあ、またね」

 若木に一言告げると、来た道を戻り始めました。




 ルメイラに着くと、採取した物を売りにギルドへ向かいます。

 ギルドには、5人しかハンターらしき人はいませんでした。

 ……人、少なすぎじゃないかな?

 時間帯によるかもしれませんが、今朝も少なかったのを覚えています。

 ルメイラの人口とギルドの大きさを考えると、もっとハンターがいそうな気もしますが、どうなのでしょうか?

 ちょっと、受付嬢さんに聞いてみましょう。


 「あの、ちょっといいですか?」

 「リンさん、どうなされましたか?」

 「あれ?何で私の名前……あ!もしかして、ハンター登録の時の人ですか?」

 「はい、そうですよ。フィリアと申します。最低でも、私が担当したハンターの方達の名前は覚えることにしていますので」


 これは恥ずかしいです。私はすっかり忘れていたのに、フィリアさんは覚えてくれていたなんて…!。

 フィリアさん。フィリアさん。フィリアさん……よし、覚えた!


 「それで、リンさん。何のご用でしょうか?」

 「あっ、質問があるんです。えっと…ルメイラの大きさに比べて、ハンターの数が少ないような気がして…」

 「ああ、そのことですか。今、この街にハンターが少ないのには、ちゃんと理由がありますよ。リンさんがハンター登録をする前の週に、隣街から救援依頼が届きました。近くの山にワイバーンの群れが出現したので、討伐を手伝って欲しいとのことでした」

 「ワイバーンかぁ…大丈夫なんですか?」


 ワイバーンと言えば、私のやっていたゲームの記憶では、ドラゴン以下ですが大きくて獰猛な魔物です。


 「危険ではありますが、ルメイラ・ギルドは今回Bランク以上のハンターのみが参加するように言いましたから、怪我人は少ないでしょう」

 「ルメイラって、ランクの高いハンターが多いんですか?」

 「あー…いえ、Bランクハンターは8人、Aランクハンターは2人だけなのですが……Cランクのハンターで、上昇志向の強い方達が戦闘に参加はできなくても、高ランクハンターの戦闘を見たいとのことで、討伐に付いて行ってしまったのですよ……」

 「あぁ…だから、今のギルドにはハンターが少ないんですね」

 「その通りです。こちらとしては、この街に残って依頼などをこなしていただけると嬉しいのですが…彼らのやる気を削ぐ訳にはいきませんので。リンさんはまだ初心者ですから、行ってはいけませんよ」

 「あはは、行きませんよ。怖そうですし」

 「ふふふ。彼らの実力からして、後始末や帰る時間を考えると、あと数日でまた賑やかなギルドに戻りますので、びっくりしますよ」

 「じゃあ、楽しみにしていますね。教えていただきありがとうございます!」


 疑問も解消されたので、フィリアさんにお礼を言い、目的であった採取した物を売りに取引所に向かいます。

 こうして、ワイバーンなんて聞くと、ファンタジー感が溢れますね。

 まあ、まだまだ貧弱な私には縁の無い話ですので、頑張れ~としか思えませんが…。


 「ポーション草とフロウパの実ですね。こちら、小銀貨2枚と銅貨3枚になります」

 「ありがとうございます」

 私は、こうして気ままにハンターをしていましょう。


 明日はどの蜜を飲もうかな~。

 と考えながら、今日も『ゆりかご亭』に帰ります。

ポーション草「………(引き千切られても再生してやる!)」



最近、投稿が遅れ気味になってすみません。

2~3日に1話投稿したい!(願望)

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