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蝶は蜜を求めて異世界に舞う  作者: おりょ?
第2章 出会いの集う街
10/25

9話 ルメイラでの生活の始まり

 目が覚めると、見知らぬ天井だった…。



 ということはなく、泊まった宿の天井です。

 時刻は朝の9時ぐらい。


 昨日は、今いる部屋に入ると、楽しみにしていたリッコルの蜜を飲みました。

 宿のベッドに腰掛けて、『抽出』を使います。

 しかし、出すのは手の器にではなく、木製のコップにです。客室には、水差しとコップが1つずつ置いてあったので、ありがたく使わせてもらいます。コップの方が飲みやすいでしょうし…。


 コップに注がれるのは、黄金色の蜜。

 味見をして、美味しいのはもうわかっていますが、それでも飲む前はドキドキします。

 えいっと一口。


 「ふにゃ〜〜〜……」

 あぁ〜、疲れた体に染みるぅ〜。


 柑橘系の甘酸っぱさが、広がっていきます。

 今日は、霧の森から出て、初めて人と会い、大きな街に着きました。その疲れをこの蜜が癒していくようです。

 ちびちびと飲みながら、今日の出来事を振り返っていると、あっという間にコップは空になりました。


 「今日はいろいろあって、もう寝ようかな……」

 ベッドに横になります。超ふかふかとまではいきませんが、これまでは地面に直接寝ていたので、はるかに良いです。

 時刻は、日が暮れる少し前。

 寝るには早いですが、お腹もいっぱいになったことですし、眠るとしましょう。

 瞼を閉じると、すぐに眠気がやってきました。ゆっくりと、それに身を任せます。


ーーー

 『黄蜜の奇跡』が解放されました。現在、使用可能な効果:帯電。

ーーー




 そして、目が覚め、今に至ります。


 「う〜〜っん」

 大きく伸びをして、ベッドから起き上がります。翅が邪魔で、寝返りを打てないんですよね…。


 さて、今日は何をしようかと思いましたが、ぱっと思いつくのは3つですね。

 早速、出掛ける準備…と言っても、『幻惑』で偽装するだけですけど。白いローブ姿になると、部屋を出ます。

 私が泊まったこの宿は、『ゆりかご亭』と言い、1階が食堂、2階が客室という一般的な宿です。

 この宿を選んだ理由は、単純にお金の都合と、女将さんが優しそうだったからです。


 「おはよう!お出掛けかい?」

 「おはようございます。夕方までには戻ると思うので」

 「はいよ。貰った宿代は今日の分までだから、延長したかったら言いな」

 「わかりました!」


 1階には、女将さんこと、エレーナさんが床を掃き掃除していました。

 背が高く、胸が大きい、頼れるお姉さんみたいな女性です。


 現在の私の所持金は、小銀貨3枚。門で金貨1枚から小銀貨1枚を払った時に、小銀貨19枚に変わりました。そして、この宿屋に2日止まるために小銀貨16枚。ギリギリですね。


 エレーナさんに挨拶したら、目的地その1に向かうため、宿を出ます。


 昨日、行き当たりばったりで歩いていたのでうろ覚えですが、こっちの方向かな?と歩いて行くと、やがて見えてきました。

 他の建物と比べて、大きなその佇まいは大通りの一角にありました。

 目的地その1は、ハンターギルドです。


 今日はハンター登録をしに来ました。

 門の出入りのために、毎回小銀貨1枚払うのは馬鹿らしいので。


 カランッと鈴の音と共に扉を開けると、The・ギルドな空間が広がっていました。

 受付嬢に、掲示板、小さな酒場、素材の取引所。

 今も、数人が酒場にいます。

 私は受付嬢の方に向かいました。

 座っていたのは、なんと猫耳のお姉さんでした。獣人を見るのは初めてなので、少しびっくりです。


 「本日はどのようなご要件でしょうか?」

 「ハンター登録をお願いします」

 「承りました。それでは、名前と主な戦闘の役割を教えてください」

 「名前はリンです。一応、魔法士です」

 猫耳受付嬢さんは、鉄?の小さな板にペンで私の情報を記入していきます。特殊なインクを使っているのでしょうか?


 「鑑定石でステータスを確認できますが、ご利用なされますか?」

 「鑑定石?」

 「はい。鑑定石は『鑑定』スキルを宿した石で、これを用いて、ご自身のステータスを確認することができます。その際には、銅貨3枚をお支払いいただきますが」


 う~ん…鑑定石ね。

 その鑑定石のLvがどれくらい高いかわかりませんが、私の『隠蔽』より高いと、私が人外だとバレてしまいます。

 なにより、私は『鑑定』を持ってますし必要ないでしょう。


 「あの…私、『鑑定』を持っているので、必要ないです」

 「まぁ!『鑑定』持ちなのですか?珍しいですね。『鑑定』持ちはあまりいませんから、パーティーに誘われやすいですよ」

 やっぱり、アンクさん達が言ってた通り、『鑑定』持ちは希少なのか。

 今のところ、パーティーを組む予定はないので、気にしませんが。


 「では、リンさん。これが、ハンターカードです」

 手渡されたカードは固く、首に掛けられるように紐も付いています。ドッグタグのような感じです。


 「初めての登録と言うことなので、ハンターについてご説明しますが、お時間大丈夫ですか?」

 「大丈夫です。よろしくお願いします!」

 「では、ご説明しますね。ハンターの仕事は、魔物の狩猟や採取、護衛などが挙げられます。ハンターギルドは、その依頼の仲介をしています。報酬の受け渡しも、ほとんどギルドで行います」


 ふむふむ。こういうところは、想像通りですね。


 「ハンターのランクはE〜Aまであり、リンさんはEランクからになります。ランクは、その人の実績や実力を表すものなので、受ける依頼や難易度の目安にしてください。依頼はご自身のランクの1つ上のランクまで受注できます。ただ、失敗すれば違約金が発生するので注意してください」


 へ〜、1つ上のランクのものまで受注できるんだ。私は身の丈にあったのをしていよ…。


 「ハンターは一般の人よりも高い武力を有しているので、罰則もその分、大きくなります。例えば、人を悪意を持って傷付けたり、盗みを働いたりすれば、情報が各ギルドに共有され、討伐対象にされることもあります。討伐は人殺しなどの重罪を犯した場合ですが、軽度の罪でもハンターカードを没収されます」


 うへぇ……力有る者の責任というやつですね。気をつけましょう。聞いた感じ、正当防衛は良い感じですね。


 「ハンター同士の諍いは、基本的に当人達で解決していただきます。素材などの売買は、ギルドで行うとランクを上げるためのポイントに加算されるので、その際は是非ギルドで行いください。主な説明と注意事項はここまでですね。何か質問はありますか?」

 「大丈夫だと思います…」

 「ふふっ。何かわからないことがありましたら、気軽にお聞きくださいね」

 「ありがとうございました!」

 受付嬢さんにお礼を言うと、ハンターギルドを出ます。


 早速、ハンターカードを首に掛けましたが、ちょっと失敗してしましました。

 「あっ…」

 そのまま首に掛けると、カードは幻の服を貫通して胸元に提げられます。ちゃんと、首元から服の中に入れているように見せなければいけませんね。覚えておきましょう。



 さて、目的地その2へと向かいましょうか。

 その前に、まずはルメイラの門まで行きます。

 もうハンターカードを持っているので、門番の人に見せるだけで出られます。


 街の外に出ると、適当に石を拾って、また門に戻ります。

 門番の人には、一瞬で戻って来たら怪しまれるので、「忘れ物しました…」と言っておきます。まあ、今日はもう外にはでませんが。


 その後、ハンターギルドではなく、宝飾店に行きます。場所は、ハンターギルドに向かう途中で見つけていたので、迷わずに行けました。

 ここが目的地その2です。


 「いらっしゃいませ。本日はどのような品をお求めでしょうか?」


 扉を開けると、店の奥にいた初老の男性が接客してくれます。私の格好はどう見ても裕福そうには見えないのに、丁寧に接客してくれます。


 「えっと、買い取って欲しい物があるのですが…」

 「ほうほう。それはどのような物でして?」

 「これなのですが…」


 そう言って、私が取り出したのは小さな結晶です。

 はい。先程拾った石を『白蜜の奇跡』で結晶化した物です。


 「これはこれは…」

 結晶を手渡すと、男性は虫眼鏡を取り出して眺め始め、次に小さな金槌で結晶をコンッと打ちました。


 「お客さん、これは純度100%の結晶ですよ。どこでこれを?」

 男性は驚いたように私に聞きますが、考えていた嘘を言います。


 「私、ハンターでして。狩りをしに行った先で偶然見つけました」

 「なるほど。それは幸運でしたね。そうですねぇ…金貨5枚でどうでしょう?」


 おぉ!金貨が5枚とは。アンクさん達の時は小さな花で金貨2枚でしたが、今回は拳サイズの大きさですからね。


 「それで構いません」

 「では、少々お持ちください」


 男性は店の奥に行くと、金貨5枚を持って戻って来ました。

 「では、金貨5枚です」

 「ありがとうございます」

 「いえいえ。またのお越しをお持ちしています」


 会釈して、店を出ます。

 いや〜、金貨5枚も貰えるなんて。

 あ、ちなみにもうしませんよ?こんなせこい行為は。

 だって、誰かに見られて、「こいつ、いつもお宝持ってんな。襲っちまうか。グッヘッヘ!」みたいなことは嫌ですもん。

 やったとしても、その時は緊急事態の時だけです。



 さあ、最後の目的地に行きましょうか。

 大通りに立ち並ぶ露店に歩きます。

 少し見渡すと、お目当の店がありました。そこには、数多くの瓶に入った液体が売られています。ポーションですね。

 でも、用があるのはポーションではなく瓶の方です。

 店番をしている、男の人に話しかけます。


 「すみません。瓶のみは売っていませんか?」

 「瓶だけかい?売ってるよ。瓶だけなら、小銀貨2枚だ」

 「金貨1枚で大丈夫ですか?」

 「大きいな!まあ、大丈夫だが……えっと、銀貨1枚と…小銀貨8枚だ。確認してくれ」

 「はい。ちゃんとあります」

 「なら良かった。まいどあり!」

 少し申し訳ないことをしてしまいましたね。コンビニで190円の品物に1000円で払う感じでしょうか?


 お金の枚数も増えてきたので、別の店で小さな皮袋も買います。銀貨1枚と小銀貨2枚でした。



 「よし!お買い物終わり!帰ろう」

 『ゆりかご亭』に戻りましょう。

 あ、忘れるところでした。あの公園にも行かなくては!


 通ったことがある道を抜け、公園に行きます。

 1回来たことがあるので、簡単に辿り着けました。


 私は早速、買った瓶に『抽出』した蜜を入れていきます。

 これが瓶のみを買った理由です。毎回、花を1本いただくのは悪いですから。


 今日の蜜を入れ終わると、今度こそ『ゆりかご亭』へと歩き出しました。

とある門番「忘れ物って言ってたけど…遅いなぁ〜」

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