全校放送
翌日の放課後、僕と渥人は剣道部の練習帰りの恭子ちゃんを襲う為に待ち伏せしていた。
「来たな。じゃ、行ってくる。もしもの時は頼んだぞ。」
そう言って、渥人はナイフを持った。渥人の左手の甲にある刻印は9画に減っていた。
恭子ちゃんは近づく渥人に気付き、話しかける。
「あっ、陣内先輩。」
グサッ。
そうなるはずだったが、実際はナイフが地面に落ちる音だった。
「佳子!」
渥人は計画を阻んだ知り合いの名を呼んだ。佳子は怒りの叱責を浴びせた。
「渥人!何やってんのよ!今度は人殺しの役でもやるつもり?」
渥人は少し黙った後、口を開いた。
「すまない。どうかしていたよ。」
とっくに気付かれていると思ったので、僕も出ていって言葉を重ねる。
「僕も一枚かんでるんだ。ご免なさい。」
「分かったわ。でも、次は無いから。恭子ちゃんもそれでいい?」
「は、はい。」
こうして、僕らの最初の作戦は僕らが思っていた以上に失敗した。そう、僕らは重要なことを見落としていたのだ。
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翌日、学校に恭子ちゃんは来ていなかった。
あの時は許してくれたけど、やっぱり精神的にキツかったのかな。悪いことしたなぁ。
昨日のことで思い耽っていると全校放送がかかった。いつもの昼休みを告げるものかと思っていたが・・・
「2年S組、陣内渥人と奥寺浩樹は破壊神選抜ゲームのプレイヤーだ。」
変声機で声を変えているかのような声は僕たちがプレイヤーであることをばらした。
このゲームは最初の段階としてプレイヤーを探すところから始まる。僕らは恭子ちゃんがプレイヤーかの確証はない。殺しに行ったのはあくまでも可能性があったからに過ぎない。
それに、恭子ちゃんもプレイヤーだった場合、声の主も含めて四人がこの学校の人間ということになる。争わせるというゲームであることも考えると全てのプレイヤーがこの学校にいる可能性が高い。
つまり、この一言だけで僕らはかなり追い詰められたのだ。
僕が困惑するなか、また全校放送がかかった。今度はうちの生徒なら誰もが知るこの学校の生徒会長、藤堂善子だ。
「先程は授業中、失礼しました。声の主は生徒会がつきとめ、指導しますので御許し下さい。また、先程の放送で名前が上がった二名は放課後、生徒会室でお話を聞かせて下さい。」
そして、放課後、僕らは生徒会室へ向かう。
お久しぶりです。大道寺司です。
3月には更新頻度が上がると思いますのでもう暫しお付き合い下さい。