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超能力者の恋愛模様  作者: くろすく2
4/13

以上が入学式前日までのお話





運ばれてきたカルボナーラを見て一言。


「美しい」


美味しそうだって? 馬鹿野郎!!この美しさがお前にはわからんのか!


まずは乗っかっている半熟の卵を割らないように一口。うむ、美味い。


それから卵を割って絡めて一口。素晴らしいハーモニーである。妹の料理に匹敵する。


俺が食べ始めたのを見て、妹と橘さんも食べ始める。


とろりと野菜と肉がよく煮込まれていると一目でわかるハヤシライスに、半熟の卵が光ってふわふわとろとろのオムライス。


おいおい、お前らもいいもん食ってんじゃねえかよ。


ちらちらとハヤシライスとオムライスを見ながら食べ続ける俺。欲しいって言ってるわけじゃないんだからね!


「お兄ちゃん」


一口分ハヤシライスをスプーンに乗っけて妹が差し出してくる。

え、やった!流石俺の妹、気がきくなあ!


遠慮なくパクリ。うっ、濃厚な旨味が口の中で爆発するぜ!この玉ねぎの甘みが柔らかい口当たりを作り出していると思う。


「ありがとう風音。俺のもいる?」


「ううん、大丈夫」


「そか」


あげてもいいかなくらいには思ってはいたけど、あげなくていいとわかるとなんだかんだ嬉しい。

美味しいものはみんなで分ける?馬鹿な。美味しいものは独り占めだろう。施しの精神は自分を追い詰めるだけだ。


ただオムライスが食べれそうにないのが残念だ……あの黄金に輝く卵に、ケチャップが満遍なく絡まり鶏肉の旨味を吸収した米の美味さといったらない…想像するだけでお腹がすいてくるぜ。


でも流石に初対面の女の子に一口欲しいだなんて言えない。だってシャイな男の子だもの。


なんてことを考えているとどんどんカルボナーラは減っていってとうとう最後の一口である。


「ごちそうさまでした」


二人よりも一足先に食べ終えた俺はまだ残っていたカフェオレを飲む。ああ、二人はまだごちそうさまじゃないもんな、俺の金で食うデザートがあるもんな。


順調に二人は食べ進めて、食後のデザートが運ばれてくる。妹には抹茶の方、橘さんにはイチゴの方。


「うわ、想像以上!美味しそうだよ優梨奈さん!」


「そうだね、風音ちゃん!」


およ?いつの間に名前で呼ぶくらい仲良く?

まあいいか、妹の交友関係が広がるのは悪いことじゃない。


二人が言うように、運ばれてきたパフェは想像以上の芸術性を持っていた。なんだここは、喫茶店じゃないのか?


ていうか、二人ともよく食べるな。甘いものは別腹ってやつか。俺は経験したことのない女子だけの領域。


二人が美味しい美味しいと食べ進めるのをぼーっと眺めながら、先ほどの出来事に思いをはせる。


そもそもの話、どうしてレイプまがいのことが起こることになったのか。


まあ当然橘さんの容姿がいいのはあるけれど、それだけだとただナンパされるだけで終わりそうなもんだ。


橘さんに何らかの価値があるのか、ただ単にあいつらがゲスだったのか、それとも誰かの指示だったのか。


ヤのつく怖い人を使ってでもどうにかしようっていう何かが橘さんにあるのか、もしくは関係しているのか。



色々な想像が浮かんでは消え…俺は考えるのをやめた。


そもそも俺、関係ないしな。たまたま一回助けただけで、そんなに気にする必要はないし、正直この子がどうなろうと俺の関知するところではありません。政治家か。


「ごちそうさま!あー、美味しかった!」


妹の声でハッと我に返る。いけないいけない。余計なことを考えてると気が緩んで妹に思考が流れかねない。


「終わった?それじゃあ、そろそろ行こうか」


「うーん…私はいいけど、お兄ちゃん、優梨奈さんどうするの?まさか一人で家に帰すつのりじゃないよね?」


もちろん一人で家に帰すつもりでしたけど?

けれどこんなことを言えば妹からの冷たい視線は免れない。


そういえば警察に通報もしてなかったな。まあそれは後で橘さんに聞けばいいか。


橘さんを見ると不安そうな顔でこちらを見ている。お金の心配はしないでいいよ?身の安全の心配はご自分でして欲しいざんす。


「え、送んなきゃだめ?」


妹に向かってではなく橘さんに向かって聞く。なぜなら妹は怖いから。俺は女の子には優しくなんて教わってきてないからね。


橘さんはそんな普通とは違う思考をしている俺(自覚あり)を見てどうした方が良いんだろうというような表情でいる。


本音では送って欲しいけれど、初対面の男の子に頼るのはどうなんだろう。みたいな感じかな?あ、テレパシー未使用です。


個人的にはね、襲われたにもかかわらずこんな風に店に入って食べたりできる時点で大丈夫だとは思うんですよ?だから早く断って俺を家に帰らせて?


「…お兄ちゃんは優梨奈さんを送ってって!」


妹の堪忍袋の緒が切れた!!

状況から察するにまさか俺の考えが漏れていたか……不覚!


バンとテーブルを叩いた妹の手にあるのはいつの間に取ったのか俺のスマートフォン。なーぜー?君も持っているだろうに。


「私はお姉ちゃんに迎えに来てもらうから、お兄ちゃんはお金を置いて早く行って」


「お兄ちゃんは妹の財布じゃないんだよ?」


これ以上反抗しようものなら俺の晩ご飯はないものだと思った方が良いな。

少しだけ、本当に少しだけ反抗しつつ財布から樋口さんを一枚。英世さんとは和解したので家出はなしで。


「それじゃあ、(不本意ながら)送るよ」


「え、っと、お願いします」


妹にはカッコ内が聞こえたらしく蹴りを入れられたが、無事に喫茶店を出ることに成功する。


出るときに目があったウェイトレスさんにはもちろん全力でお辞儀。また来たいと思いました。


「家ってどこら辺?電車乗ったりする?」


「いえ、えっと私自転車で来てて…」


「なるほど、じゃあ取りに行こう」


無駄はできる限り省いた方が良いよね?





と、いうわけで特に会話なくショッピングモールに戻り自転車を確保。

途中駐車場に赤いランプのついた白と黒の車が向かっていくのが見えたけれどそれは見ないフリ。


自転車の所有者に断ることなくとりあえず自転車にまたがる。うむ、なかなかいい自転車に乗っておるな。


「二人乗りで行きますか?それとも一人で?まさかの押して帰りますか?」


「えっ…」


無駄は省いた方が良いと言っただろう!!

……言ったかな?


「ちっ、後ろに乗れ。方向は指示しろ、大丈夫だ、警察なんてぶっちぎってやる」


「へっ…わっ?!」


動こうとしないので無理やり手を引いて後ろに座らせてよーいドン!橘さんの荷物はカゴの中にポイ。あれ、この子ってショッピングモールになんの用で来てたんだ?……まあ俺には関係ないか。


パトカーの隣を二人乗りの自転車がシャーっとな。

あれれ、誰も気づきませんね?ラッキー!


風を感じながら、ついでに背中に柔らかいものも感じながら自転車を漕ぐ。これが自分の自転車だったらこんなことはしないよ?何故かって?道交法。


「次は?」


「ま、まっすぐです!」


誰に見咎められることもなく自転車を順調に漕いでいると、車の通りの多い大通りから住宅街、段々と景色が変わってくる。


ひょっとしてこの子はいいとこの子か?

ちょっとお金に余裕がありますよって感じの家が増えてきた。まあウチの姉ちゃんの方が圧倒的に余裕があるんですけどね!!とは言ってもウチの家は普通です。何故なら両親が中身はともかく収入が普通だから。


「あ、こ、ここです!」


それを聞いた俺はわざと急ブレーキ。背中で鞠が潰れる。ふむ、素晴らしいが、何か問題でも?不可抗力である。


自転車を降りて改めて家を見ると、なかなかに大きい一軒家がそびえ立っている。


壁が白くて、おそらく三階まであって、屋上もあって、庭もあって、車庫には車が二台。

これが経済格差ってやつだよ。


「ふむ、無事に任務完了かな」


これで妹に怒られなくて済むし、ご飯抜きもないだろう。時間的にはもう少しで夕方になる午後三時過ぎではあるが、まだ日はある。


橘さんには後ろを降りてもらい、自転車を渡す。俺?俺は歩いて帰るよ?案外とここって俺の家から近いしね、言わないけど。


「あ、そうだそうだ。警察に通報するにしても俺のことは言わないでくださいね?あんまりああいうのに関わってるってことで目立ちたくないので」


「あ、はい…」


それじゃーねー、と手を振ってさっさと帰る俺。なんでもう少し話さないのかって?俺の第六感が早く帰れと言っているからさ。


『日比野くん……また、会いたいな…』


躓いた。

おいおい、テレパシー使おうと思ってないのにこれって……気持ち強すぎだわ。


後付け設定のように思われるが、強すぎる俺に対する気持ちはテレパシーを俺が使いたくなくても勝手に入ってくることがある。


これこそ不可抗力だわ。他人のプライバシーなんて覗いたところで何の得もないっての。


まあもう会うことは無いだろうってことが救いだな。どう見ても良いところの子が一般の人が通う高校に行くわけないだろうし。


てか橘さん何歳なんだろ、何も知らないや。


ピロリーン。


ん?メールか。


『お兄ちゃん、ちゃんと優梨奈さん送った?』


妹からだった。…見なかったことにしよう。帰ってから言えばいいし。


さ、帰ろう!



二人乗り描写がありましたが、皆さんは二人乗りしてはいけませんよ?

物語の中だけのお話だということをお忘れなく。

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