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超能力者の恋愛模様  作者: くろすく2
2/13

それは、入学式前日に起こった





たらったら〜、たらったら〜、ふんふふーん。ズンチャ、ズンズズンチャ、ズチャッ、チャドン、カッカッパッ。


「お兄ちゃんうるさい」


俺がどこかのパーティーピーポーよろしく脳内でガヤガヤしていると、隣を歩く妹が声を荒げて、しかし小声で注意をしてくる。


当然だ。傍目には俺は何も口にしていないし、表情も行動もいたって普通の一般人。


そんな兄を急に大きな声で叱りつける妹なんて狂ってるとしか言いようがない。


「妹よ、お兄ちゃんは暇なんだ。こんな入学式前日だから急に足りないものを色々と思い出してヤバいヤバいって買い物にやってくる人たちに揉まれ囲まれ疲れたんだよ」


「忘れてたのはお兄ちゃんでしょ?もー、前日になって学校の制服をクリーニングに出してたことを忘れてるし筆記用具は何にもないし……そのくせ革靴だけはちゃんと磨いてるし意味わかんない。大体、どうして筆記用具が何にもないの?机見たら空っぽだし」


「受験が終わったらいらないかと思ったし、なんか勉強しなきゃって念がこもってそうで気持ち悪くて捨てた」


「お兄ちゃん普段そんなに気にする人じゃないじゃん。普段は昼行灯というか無頓着というか動かないくせに……どうしてそう急に思い切りよく行動するかなぁ」


「思い立ったが吉日って言葉を知らんのか」


「私はお兄ちゃんに計画性って言葉を知ってほしいけどね」


そんなことを話しながら歩く正午前。場所は電車に乗って十数分のショッピングモールだ。


せっかくだから色々買って来いと姉上からのお達しと、旅行から帰ってきた両親からのお願いのため、ちょっとリッチな食事にすべく食料を探し求めている。


「プラス生活必需品ね」


……。…生活必需品も探し求めている。ついでではなく、むしろこれがメインで、たまたま家に居た姉と、旅行終わりの脱力感に包まれた両親から頼まれてここまで来たわけだ。


俺は近所のスーパーで良いって言ったのに…生活必需品のせいでショッピングモールなんかに来なきゃいけなくなったんだよ。


俺の意見が聞き入れられることはほとんどないんだ。夕飯のメニュー以外は。


今日の夕飯は何にしてもらおうかな、やっぱハンバーグかな、好きだし。いやでもお好み焼きもいいな、ソースとマヨネーズのコラボが素晴らしい。青のりは好きじゃないのでいらない。


「今日の晩ご飯はカツ丼にしたいんだけど、いいよね?」


「……お兄ちゃんハンバーグが食べたかったな」


「じゃあとりあえず豚肉買わないと……パン粉家にあったかなあ…」


「俺の話聞いてる?」


おかしいな、機嫌が悪いのかな、いつもは素直で可愛い妹なんですよ?ちなみにパン粉はあるそうです。


ちょっと落ち込みつつ、左手に持っている既に買った生活必需品と筆記用具の入ったビニール袋を右手に持ち替える。


片方ずつでやってると身体のバランスが崩れていくらしい。でも俺は気にしない。モデルじゃないから。


「あ、食料品売り場発見。ちゃっちゃと行ってさっさと帰ろうぜ?」


「んー」


妹は適当な相槌をうって、野菜をじっくり見定めるようにして眺めている。

おかしいな、俺の声が聞こえてないのかな、さっさとって言ったんだけどな。


「俺暇だから適当に歩いてきていい?」


「いいよ。連絡は取れるようにしておいてね」


妹の言うことに従うべくスマホをチェック。バッテリー残量約七割。うん、許容範囲内である。



どこに行こうかなー、丁度昼前だし食べる系のところはそろそろ混み始めるかなー。服も興味ないしアクセサリーもどうでもいいし……ショッピングモールって俺みたいなやつが来るところじゃないよね?


特に何をしたいわけでもないので、とりあえず駐車場近くにある自動販売機でパックのミルクティーをポチッとな。


ストローを刺してズズッといこうとしたとき、短い悲鳴のようなものが聞こえた。


「イエス聞き間違い俺の耳がおかしいだけ」


そう言いながら、テレパシーの受信範囲を広げてみる。これ色んな人のやつ同時に聞こえるから気持ち悪いんだよなー、慣れたけど。


-助けてっ!!


あー、やっぱり気のせいじゃなかったかー、レイプまがいの思考も流れてきてるしほぼ間違いなしかね。


ごく普通のありふれた一般人の僕が聞くには厳しいことがじゃんじゃん頭に入ってきてもう…社会って怖いなー。


妹から離れた瞬間これだなんてひょっとして妹は俺のトラブルを払ってくれるお守り的な位置にでもいるのかね?それともまさかの俺が巻き込まれ体質?御免被りたいなり。


ミルクティーをもう一本買ってポケットに入れ、駐車場の奥の方の人気がない方へ向かう。


歩くこと体感二分ほど。発見発見超やばシーン目撃。なんかすごい可愛い女の子(描写は後で)が五人の男に囲まれ逆ハー状態。


丁度柱で周りからは見えず、人も来なさそうな場所。設計ミスかな?


女の子はワゴン車に押し付けられ、二人はそれぞれ手を抑え、もう二人はそれぞれ足を抑え、ラスト一人はうへうへ状態。キモチワルッ!


俺はその光景をスマホでパシャパシャパシャリ。音が出る。おー、よく撮れてる。でも女の子の顔も写ってるからこれじゃあ可哀想だなー。


ふと顔を上げると、うへうへだった男が、いや、それ以外の全員もこっちを見てる。なに?なんか用?


「てめえそこでなにやってやがる!!」


「え、見てわかんないの?証拠画像撮影」


指で四角を作って、どう収めるか構図を決めるフリ。意味はないよ?もう撮ったしね。


ちなみに荷物は途中にあったロッカーに全部入れてきました。優秀な俺はスマホという武器一つで悪漢に立ち向かう。


「おい、お前ら、やっちまえ」


うへうへだった男が命じると、それに従って女の子を抑えてた男たちがこちらに向かって来る。男は代わりに女の子を確保。なるほど痴漢ですね?


女の子はすっかり怯えきった顔で泣きながらこちらを見ている。わかるよ、だってその男気持ち悪いもんね、俺でも同じようになるかも。異性の場合はありがとうございます。


あっという間に男四人に囲まれた俺。んん?君たち何を手に持っているのかな?ナイフに警棒にスタンガンにバール……どこから出した!!


「四次元ポケットがあったら是非欲しい」


「わけわかんねえこと言ってんじゃねえぞ!」


バール持ちが後ろから襲いかかって来る。俺はそれを避けて顔を平手打ち。あんたなんか産むんじゃなかった!!


パチンと乾いた音が響き渡る駐車場。けれど人は来ない。おいおい、警備はどうなってる?


バール持ちは顔を赤くしてさらに振りかぶって果敢に攻め立てて来る。俺はそれを避け続ける。当たったら痛いもんね?


バール持ちが襲ってきている合間を狙って横からスタンガンが迫って来る。

とりあえずバールを逸らしてスタンガンに当てるとあらま不思議バールが地面に落ちましたよ?


落し物だよ、とバールを拾うと警棒がまたまた後ろからやって来るのでそれをススッと避けてこめかみ辺りにバールをガツンとな。


気絶したのか、警棒はその場に崩れ落ちる。大丈夫大丈夫、俺くらいになると死なない程度の気遣いはできるよ?


「警棒とバールの二刀流とか不揃いで笑うわ」


バールよりも警棒の方が軽そうなのでバールを捨てる。ちらりと崩れ落ちた男を見ると可哀想にいじめられたんだね?


警棒を持って元バール持ちに急接近して顔面に打ち込む、と見せかけて右手に全力フルスイング。


「うぎゃあ!!」


「うるさっ」


黙らせるべく顔面に警棒をガツンとな。


「うぶっ」


気絶しそうにないので狙いを変えてスタンガンに向かって警棒を全力投球。驚いたスタンガンはそれを飛んで避けるもそこには俺がいます!


「よいしょっ」


コツンと手を叩きスタンガンを奪い取って、えい。


「あががが!!」


元スタンガンは気絶。ついでに呻いてる元バールにもスタンガンでタッチ。鬼は交代しません!


声もあげずに痙攣して倒れ込んだ元バールを見るとひょっとしてこのスタンガン電圧高すぎか?


首を傾げてスタンガンを眺めているとナイフ持ちが前からじりじりと迫って来る。


なんだろうその動き柔道っぽい。経験者の方ですか?


俺が微動だにせずスタンガンをバチバチやってると、バチバチするたびにナイフ持ちがちょっと反応するのが面白い。


思わず笑ってしまうと、俺の気持ちが伝わったのか、ナイフ持ちは怒りの表情でナイフを突き出して来る。初代バイオかな?


ナイフをさばいて、持っている左手をパチン。ナイフを落とした男の指を見るとどうした曲がってるぞ!!


うずくまった元ナイフの顔面が丁度いい位置にあるのでステップしてシュート!!


「うぐっ」


とりあえず指が曲がったままじゃ可哀想なのでもう一回逆に曲げ直す。


「あああああ!!」


わかるよ痛いんだよね?でも大丈夫、すぐに痛みはなくなるから!


首筋にスタンガンでタッチタッチ。

ビクンビクンして気を失った元ナイフ。


「…これが、ピカチュウの気持ちか」


ポツリと呟くと思ったよりも駐車場に響いた。


男四人を無効化した。経験値ははいりません。なぜならこの世界はレベル制じゃないから。ちなみにこの間体感五分。結構かかったな?


「さあ、その女の子を離せ!」


勇者として立ち向かうべく(スタンガン)を魔王に向ける。


うへうへだった男は既に顔面蒼白でガクブル状態に移行していた。


女の子を放って逃げようとするので、とりあえず追いついて一言。


「女の子は大切に優しく扱いましょう!」


バチンとスタンガンタッチ。

制圧完了である。


ふうと息をつくと気を失った五人の男に震えている女の子。…早く行こ、事件のにおいがする。


「そこの女の子、大丈夫?」


「…え、あ、う…」


俺を見る目に怯えが見える。俺も男だもんね?ごめんね?


どうしたもんかと腕を組んで考えたところでスマホから愉快な音楽が流れ出す。


「もしもし、緊急事態なう」


『お兄ちゃん、どこにいるの?買い物終わったよ?』


「とりま緊急事態。妹の判断を仰ぎたい」


『緊急事態って……どうしたの?』


〜とりあえず掻い摘んで事情を説明〜


『じゃあ落ち着けそうな場所に連れてってあげて?あとで私も合流するから』


「はいはーい」


通話を終えると少しは落ち着いたのか、女の子が静かにこちらを見ていた。怖い。


「とりあえず荷物取りに行っていいですかね?」


両手をあげて女の子にそう告げた。


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