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超能力者の恋愛模様  作者: くろすく2
11/13

勉強勉強また勉強……学生ってやつぁ…

みなさんのおかげで日間ランキングに乗ることができました!

本当にありがとうございます!





スプリングセミナー二日目。の、昼過ぎ。俺はもう辟易としていた。まず第一に朝早く起きなきゃいけないことに。そして次に強制的に運動というプログラムを組まれていることに。さらに最後に、今の状況に、だ。


「勉強勉強また勉強……学生ってやつぁ…」


「日比野、お前まーた言ってんの?昨日の夜も言ってたよな。あ、そういえばだけど日比野。お前昨日の夜どこ行ってたんだ?」


滝本とホテルの食堂で食事中である。どうしてかはわからないが、こいつとはホテルの部屋が一緒だった。これが物語の定番ってやつなのかね。謎の力が働くってやつ。


「人気のないホテルの穴場スポット。告白すべく努力をした健気な男子生徒の希望を故意ではないがへし折ってしまった」


アーメン。君はもう一度勇気を出して告白頑張ってくれ。大丈夫、君ならできるって!!保証はどこにもないけど。


俺は十字を切って昼食のカレーに手をつける。ふむ、妹の方が美味いぞ?そして母の方が断然美味い。


「はあ?何言ってんだよ日比野。ま、いいや。それよりさ、さっきの数学の問題でわかんないとこあったんだけど、お前できた?」


「んあ?………どこ?授業中、寝てたから話聞いてなかったわ」


「お前なあ……」


呆れている滝本を尻目にカレーを食べる。まあ、食べるというかただ口に運んで口を動かしているという感じだけど。だって美味しくはないからね。不味くもないんだけど。


「ここ、いいかしら?」


「え?ああ、紫さん、どうぞどう…」


「ダメだ」


カチャリとスプーンを置いて、俺の隣に腰掛けようとしている紫を見る。滝本の隣には多々良さんが既に座って食べ始めているが、それは良い。問題は隣に座ろうとしているこの女だ。


「あら、嫌われちゃってるのかしら?」


「おま、ダメってなあ……」


「俺はこれからお代わりを取りに行くから、その席に今座られると邪魔だから」


そう告げて、カレーのお代わりを取りに行く。たいして美味くはないが、食事をするのは大事だ。とりあえず栄養摂取。


カレーをよそってもらい、さっきの席に戻ろうかと目を向けると、なんだか紫が非難するような、拗ねているような目で見ていたので、無視をして一番近くにあった席に座った。


だってめんどくさそうなんだもん。昨日のこともあるしさ、正直これから関わろうって気持ちになれない。基本的に誰に対してもそうだけど。


「それではもう一度いただきます」


「わっ、日比野くん、いっぱい食べるんだね」


「………こんにちは、橘さん。それと、強めにこっちを見ている人も、一応、こんにちは」


座った席の先に居たのは橘さんとお馴染みの凛々しい系の女の人。何時ぞやは騙して悪かった。だからそんなにこっちを見つめないで、目立っちゃう。


「ああ、そういえば自己紹介してなかったわね、私の名前」


別に紹介してもらわなくても大丈夫ですよ?


「江波薫っていうの。あの時はありがとう。ちゃんとお礼も言えていなかったし、良い機会に恵まれて良かったわ」


なんだろう、言葉は友好的なんだけどいかんせん態度が刺々しいな。


「それと、この前は嘘をついて誤魔化したわね?あまり褒められることじゃないわよ」


「薫ちゃん、嘘って?」


「この前、優梨奈が校門で彼を待ち伏せしてた時あったじゃない?こいつ、絶対優梨奈のこと見たはずなのよ。それなのに会ってないって言って……あの時はそっかって思って引いたけど、よくよく考えてみたらおかしいじゃない」


なんだね君は。急に出てきてホームズかなにかになったつもりかね?

確かにその推理は間違っていない。というか普通に大正解だ。なのだが……もしも俺が本当に裏の方から来ていた場合のことを考えてないだろ?いやまあ、めんどくさいことは避けたいので答えは決まってるんだけど。


「俺は裏から来てるからさ、もしも橘さんが正門の方にいたら気づかなかったかもね」


俺は橘さんが正門にいたという事実を知っているがそれを匂わす発言をするだなんてそんな推理ドラマの犯人みたいなミスはしない。


「そっか、私あの日は正門にいたから会わなかったんだね」


「ふーん、そっか、私の気のせいだったか」


そうそう、気のせい気のせい。だからいい加減俺に対する疑いの目をやめてください。


二人に見つめられながらカレーを食べる。おかしいな、味があまりしない。これが緊張、これが気まずいってことだわな。


特に話す話題もないので黙ってカレーをかき込んでいると、メールの着信を報せる振動がポケットから。音を鳴らすだなんてそんなヘマはしない。


誰だろ、妹かな?姉はないな。基本的にあの超人は電話だし。親は…俺に連絡することなんてあるのかな?


『夕方から自由時間よね?ちょっと付き合って欲しいのだけれど』


簡潔なメール。簡潔な文章。一目でわかる。こいつ、文系だな?俺はどっちもいける派。


メールの送信者は紫だった。話があるならってそういう意味じゃないんだよな。メールでアポ取って直接じゃねえんだよ。メールでってことなんだよ。


チラリと紫を見ると、既に食べ終えて食後のティー(水)タイム中だった。あいつもこっちを見ていたのか、ひらひらと小さく手を振っている。とりあえず無視。外面は良いから余計にな。


『承知』


だがまあ自由時間にちゃんとアポを取るというその姿勢は評価してやろう。

自由時間とは言ってもここから出て行くには先生に見つかるかもしれないというリスクもあるので、どうせ動く範囲はこの中だろうし。


俺の返事を見て少し目を見張る紫。なんだよ、どこに驚く要素があったよ。確かに俺はクラスの集まりだとか参加しない系男子だけどそこまで付き合い悪くないよ。気分による。


「そういえば日比野くん。勉強って得意な方?」


なんだ橘さん。藪から棒に。あなた学年で首席の方ですよね?いや、そんな方に私めが教えられることなんてとても…。


「可もなく不可もなくってところ。できなくはないから困ってない」


「ふーん、じゃああんたも今日の数学の最後の問題わかんないでしょ」


お前もそれか。確か滝本も似たようなことを言ってたよな。そんなに難しいのかね?


お前バカなんだとでも言いたげなその表情。かなりムカつくからやめたほうがいいぞ江波さんとやら。


「…どんなやつ?」


なんだかんだで滝本に聞くの忘れてたし、ちょうど良いから聞いておこう。もし解けなかったりしたら……特に何もないな。


「これよこれ」


そう言って見せられたプリントには関数がどうたら因数がこうたら。

……ふむ、どこが難しいと?


「それはまず、元の関数を何かで置き換えてから考えるんだろ?余りを求める時に次数に注意しなきゃいけないってところがまたこの問題を出したやつの性格がわかるな」


これって高校一年生になりたてのやつに出す問題か?絶対数学の教師とは馬が合わないな。

寝てても問題は解ける嫌な生徒にならないと。お互いに不干渉でいこう。ってくらいの仲になりたい。


俺の言っていることが上手く伝わっていないのか、江波は首を傾げているが、橘さんはわかったようだ。


とりあえず江波のペンとノートを借りて問題を解く。てか、食堂になんでそんなものを持って来ているのかがわからん。


「多分こんな感じ。……で、俺を馬鹿にして気分は良かったか?江波さんよ」


ニヤリと笑うとテーブルの下で足が飛んで来た。脛に入ったが……かわいそうに、お前の爪先よりも俺の方がずっと硬かったみたいだな。その負け犬面、よく似合ってるぞ。


「すごいね、日比野くん!」


「たまたまわかる問題だっただけだよ。それじゃ、俺はお先に」


一杯目よりは大分遅いペースではあったがカレーを完食したので席を立つ。妹や母だったらもっと上手く食材を使ってやれるのになあ。


と、そこで橘さんが熱心に俺を見ているのに気がついてしまった。まあ、ここで無視するのもあれだろうし一応。


「なにかついてる?」


「い、いえ! …あ、あの、またお話しても良いですか?」


チラリと目を横に流して江波を見ると噛み付かんばかりの表情だ。俺がお前に何をしたよ。


「目立たなかったら。あと、そこの狂犬の躾をちゃんとしておいたら、な」


江波は狂犬と言ったあたりで置いてあったフォークを握りしめたが、堪えた。偉いな。女ってやっぱ怖い。フォークがっていうか女が凶器。


食べ終わった皿を出して食堂を出る。さ、もう少し午後も頑張りますかね。ちゃんと起きてないと夜眠れなくなるし。






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