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超能力者の恋愛模様  作者: くろすく2
10/13

最近の暴力についてどう思う?いけないことだよね?わかる。





こんばんは。日比野です。

いやー、春ですね。現実は夏ですが、こっちの現実は春なんです。それも四月。まだ少しだけ寒い日があったりする。


あれから特にお咎めもなく、バスの旅は続いて到着したのは大きめな旅館。といってもホテルプラス旅館みたいな雰囲気。つまり現代風。嫌いじゃない。純和風はちょっと怖いもんね。


「ちょっと、聞いているの?」


「もちろん」


聞いてません。


地の文に入ってないしね。状況説明はこれからだから。だから落ち着いて?その分厚い本を下ろそう。本は読むもの、殴るのダメ絶対。


「……だんだん貴方が読めてきたわ」


え、もしかして超能力者(お仲間)ですか?


ハロー、聞こえてる?香港なう。


…返事がない。聞こえてないですね。わかってたけど。そして俺は香港にはいない。


というか俺はもう眠いんですよ。いま何時かわかってる?午後十一時よ?昼食挟んで色々勉強したじゃない。疲れてんのこっちは。主に椅子に座ってたからだけど。先生の話は聞いてない。


「ええと、それで何が聞きたいんでしたっけ?」


「まずはその気持ちの悪い敬語を使うのをやめなさい」


気持ち悪いだって?!おいおいまじか。敬語すら否定されんのかよやかましいわ。


「…なんでお前にそんなこと言われなきゃいけないんだよ」


「貴方、ひょっとして覚えてないの?」


「は、何を?」


お前が不良に絡まれてガクブルしてたのなら事細かく覚えてますけど?お前の真似してやろうか?ぎゃあぎゃあ喚きそうな顔してたじゃねえかってぎゃあ!


「痛い!」


「角だもの」


本は殴るためのものじゃないって誰かこいつに教えてやってくれ。俺じゃ言語の違いで通じないらしいから。


「で、なんだよ。こっちは急いでんだよ寝る時間が削られてんの、わかる?」


トントン、と頭を叩く仕草を入れると俺の指に目掛けて本が…っ危ない!


すんでのところで本を掴むと、何事もなかったかのように紫は本を引っ込めた。

おかしいな、俺、ちゃんと本掴んでたんだけどどうして抜けるの??


「……貴方、やっぱり覚えてないのね」


可哀想な目で見ないでっ!

覚えてない?いやいや、そんな…いや、何を?


「ま、いいわ。それは後で。それよりも貴方、助けてくれたことには礼を言うけれど、あれはやりすぎだと思うの」


うん、それで俺が何を忘れてるって?


「やりすぎ?」


なーぜー?俺はごく一般的なことしかしてないんだよ?スタンプ押しただけだし、歩いてみただけだし?それでも僕はやってなあい。


「流石に気絶するまでっていうのは良くないと思うの」


「お前馬鹿じゃん?」


おわっと、危ない。いま俺が避けなかったらこめかみ辺りから脳が揺らされるところだったぜ。


「あのな、今回はたまたま遠出してる時だったからないとは思うけど、地元でああいう目に遭ったら、普通はやり返されるかもって思うだろ」


だからとりあえず過剰防衛しておく。日頃の鬱憤もついでに晴らしておく。八つ当たりではない。(俺の)正義の執行。


「やられたらやり返せじゃ遅いんだよ。やられる前に潰しておかないと」


これが正しい。特に外見が良い女子はすぐ襲われるからな。だってこの二週間で既に二件目ですもの。週一ペースで起きるってやばない?


どうした紫、黙りこくって俯いて。ははん、もう終わりだな?よし、それじゃあそろそろ俺は失敬してですね。


「待ちなさい」


下を向いたまま腕を掴まないでホラーだよ。髪で顔も隠れているからより怖いよ。


「嫌だ」


今従ったら呪われそうだしお前怖いし絶対付いて行くもんか。


にげる。を選択。しかし回り込まれた!!


くっ、振りほどけないだと?!


「何してるの?」


俺が渾身の一本足打法を繰り出そうとした瞬間、第三者がやってきた。おまわりさんこいつです!!しょっぴいてくだせえ!


って無理だ。やって来たのは俺があまり会いたくない橘さん。理由?会いたくないのに理由がいるの?


「何でもないわ、橘さん」


いや、いやいや、いやいやいや、何しらばっくれちゃってんの?お前さっきから危険人物じゃん。俺危ないじゃん。何でもなくないじゃん!


副音声でお前には関係ないからどっか行けっていうのがビシビシ伝わってくる。


橘さんの目は始め紫の目を捉えていたが段々とその視線が下に移動し、ピタリと止まる。そう、そこにあるのは俺の腕。もしくは紫の腕。掴まれてるからね。これで俺が掴んでた場合は問答無用で通報もの。


「…それ、離したら?」


んん?!今の声橘さん?!超怖いぞ?!


はっはっは、流石の紫もビビって俺の手を離してくれるんじゃないか…と期待した俺が馬鹿だったわけだ。なぜもっと強く握る?跡が残っちゃう。


「貴女に言われる筋合いはないわ。今少し立て込んでるの。邪魔しないで」


「…日比野くん、嫌がってそうだけど?」


あれれー…いつからあなたそんなに据わった目で、プラスで感情を感じさせない声で話すことを会得したんだい?ギガント怖い。


当然俺は嫌であるので首を縦にブンブン。腕を掴む力が強くなりみしりと音がなった(気がした)ので首を横にブンブン。


「…嫌がってないそうだけど?」


紫がそう言った瞬間橘さんが動き出した。パシッと乾いた音が響いて俺の腕が解放される。ありがとう橘さん。でもね、あなたが叩いたのは俺の腕だよ??紅葉が咲いてるよ。季節じゃないのに。紅葉は咲かないのに。


掴まれ叩かれた腕を抱え俺は一歩引いて状況を確認。


一方は感情を感じさせない表情で冷たく相手を見ている紫。もう一方は普段の柔らかな物腰を微塵も感じさせない凛とした佇まいの橘さん。


二人とも、落ち着いて?僕を巡って争わないで!!


なーんてそんな馬鹿なことを言えたら良いけどそんな気骨はないわ。


「大体、どうして関係のない貴女が首を突っ込んでくるの?私は貴女に用は無いのだけれど」


「確かに関係ないかもしれないけど、嫌がっている相手を無理矢理に付き合わせるのは客観的に見てもどうかと思うよ?」


「あら、誰が嫌がってたのかしら?少なくとも彼は嫌がってはいなかったと思うけど」


「どう見ても嫌がってたじゃない。腕を掴んでまで付き合わせるのは良いことだとは思えないって言ってるの」


「それはっ…そうかもしれないけど、こっちにも事情ってものがあるの」


「だったらまずは、それを彼にちゃんと説明してから話し合うべきだと思うけど」


「……わかるでしょう?彼は、そんなことしても話に応じてくれるとは限らないわ」


「………まあ、そうかもしれないね」


んん?途中からなんか俺ディスられてないか?

俺が聞く耳持たずにさっさといなくなるみたいな話ですか?正解!!興味のないことに割いている時間はないんですよ。


「ところで、どうして橘さんはこんなところに?言っては何だけれど、ここって何の用もない人が来るようなところではないと思うの」


「えっと、それはね…」


そう言って橘さんが取り出したのは一通の手紙。今時手紙だなんて古風…?ちょっと違うか、珍しいな。


「この手紙に日付が変わる頃ここに来いって書いてあったから。何の用かはまだわかんないけど、とりあえず私としては早く戻って寝たいかな。疲れちゃったし」


同感。俺ももう帰ろうかな。今日はもう許して欲しい。眠いんだもの。活動限界間近。


そろっと部屋に戻ろうとすると、ぐっと手を引っ張られる感覚。なんだよ、後ろ髪引かれる思いなんてこっちには無いんだよ。


「どこに行くのかしら?」


「ちょっと待とうね」


なんで両手なんだよー!もーいーじゃん明日にしよう?な??そして明日になったらまた明日にしようという連鎖が起こるわけだよ。


「俺、もう眠いんですけど。ほら、明日も色々あるみたいだし、早く寝たほうがいいんじゃないかな?」


「今さらそんな優等生みたいなこと言って…何が望み?」


この状況から解放されることだよ。


「先生だって見回りしてるだろうしさ、これ以上余計に目立ちたくないわけなんだよ。橘さんも、目当ての差出人いないっぽいし、今日はもう解散でいいよね?」


「うーん……まあ、そうだね。多分ここにいないのは二人のせいだとは思うけど」


偶然だししょうがないよね〜と笑う橘さんは案外イイ性格してる。


「俺たちの所為かどうかはまあそいつの運がなかったってことで。紫も、話があるなら聞いてやるから携帯出せ」


「え?」


もたもたすんな。俺の耳には鬼(先生)の足音が聞こえているんだ。


驚いている紫を急かし、携帯を出したところで奪い取って俺の番号を登録。


「いいか、電話は基本的に出ないからな。何かあるんだったらメールで寄越せ。もしくはあの有名なチャット系のアプリでな」


「それって普通にラ…」


「言うな!!今ココじゃあ理由は言えないがその名前を口にするんじゃあない!」


どこで誰が聞いているか(見ているか)わからんからな。不安なんだよこっちだって。


「それじゃあ、俺は戻るからな。一応忠告しておくが、あと二、三分ですぐそこの階段から先生が上がって来るかもしれないからな。気をつけろよ。そして捕まっても俺の名前は出すんじゃないぞ」


「え、ちょ、まっ…」


「アデュー!!」


俺は逃げた。めんどくさいことは後回しにする一般人的な考えのもと行動した。


これがまたちょっとしためんどくさい出来事を引き起こすことも、この時の俺は知らなかった。








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