自堕落生活願望がある主人公は使えない
01
朝っぱらからカーテンを閉め部屋は真っ暗。そんな暗さの中にパソコン画面の明かりが目に染みて痛い。だがカーテンを開けると太陽の光で目がやられそうだ。だから閉じておく。
ステテコにシャツといった簡素な格好でビーズクッションに体を預けゆっくりと沈んでいく感覚を楽しみつつキーボードに手をやりカタカタと文字を打つ。
「なんか動画でも見るっかねぇ」
ビーズクッションに横にゴロンとしたままキーボードを動かし画面を見る。傍から見たらニート、引きこもり、自堕落な落ちこぼれとでも思われまた言われているのだろう、だが俺にゃこれしかないんだよ。まぁ少なからずニートではないな。収入得ているから。動画投稿して広告収入で金が貯まる。その金でゲームやらパソコンを買っている。であるからニート…じゃないよな?
と内心確認しつつ心配しかけているから無意味すぎる。
「お、新着動画見っけ〜。どれどれ」
ポチッとな、という昭和っぽい掛け声と共にマウスを右クリック。すると画面が変わり黒い画面が出てきて動画を読み込んでいる。グルグルと考え中のマークがマウス付近に点在している。
ーうん、こりゃしばらくかかるか。
と思い逆にゴロリと転がる。そこにあるのは本、本、本。本の山、大量の本が乱雑に積み重ねられている。ざっと見て何冊だうろか。100はありそうな予感がするが…如何なものか。そこから1冊テキトーに引き出してみる。横のまま本のタイトルに目をやる。
「…異世界生活?してみてぇな」
フッと鼻で笑いパラパラと本を数ページめくった時、不意に背後から嫌な感じがした。振り向いたら終わりそうなパターン。幽霊系とはちと違うがどことなく似ている。嫌な感じのものは背中を凝視している。変な冷や汗が背中を伝い身震いした。シャツにじわりと脇汗が染み出して気持ち悪い。
ーどうする。振り返るか、返らないか。どちらか一択。そして、俺は思い切った。本の山から幾つか本を無造作に掴むと思い切り背後に投げた。右手でそれをやったものだから変な方向に腕が曲がりすぐに音をあげたが上手く本は背後にドサドサと音を立て飛んでいった。それを確認したら今度は自身が勢いよく背後を向いた。と同時に目を見開いて血の気が引きパソコン画面を凝視し
ー死んだ。
向いた直後画面から何か細い物に頭部を刺され頭蓋骨を貫通し脳に直接刺さり後頭部まで貫通した。それは、レイピアの様な細い剣で黒かった。それだけで意識が消え感覚が消えた。目が虚ろとなりそのまま死人の目へと早変わり。
02
「お疲れ様。」
その一言で目が覚めた。女性っぽい声質。体を動かそうにも何故か動かない。
「簡素な死に方よね、貴方。バカなの?あんなのも交わせれないなんて。」
無茶言うなよ。あんなの交わせるわけないだろう?
「つか、引きこもりしてる時点で死んだも同然かしら。」
「ざっけんな!」
流石にその言葉で俺はキレる事となった。ブチ切れた。引きこもりの時点で死んでいる?反吐どころか暴動起こそうか?
「あら、目が覚めたのね。おはよ〜」
突然体が動き起き上がった俺の1振りの拳をそいつは華麗に避け軸足としていた左足を回転させ右足で勢いよく俺の顔面を蹴り上げ遠くに吹き飛ばした。
「ーーッッ!?」
後頭部からの着地となり鈍い音が耳に聞こえた。が、痛みが薄い気がする。顔面もそこまで痛くはない。鼻血は出てるけど。鼻でも折られたのか触るとふにゃりとしている。…折れたな。
「何すんだ!!」
たまらず叫ぶ。
「貴方がいきなり攻撃するからよ。反撃して何か悪い?」
ポキッと右の人差し指を音を立てて折った。そいつは、やはり女性だった。桃色の髪をして白衣のようなコートを羽織っている。ワイシャツとスカートが白衣の正面、ボタンをしてない所から見え隠れしている。
「鼻折れちゃった?大丈夫?」
笑いをこらえてるのか頬を膨らませながら言っている。
「何しやがるんだテメェ」
口の悪さはやむを得ない。こんな状況になれば誰もがキレるだろう。
「あらぁー。ごめんごめん、今治すから。」
笑顔でそう言った女性は即座に右手でパチンと指パッチンをした。そうして何かを呟き始めた。こっからでは聞き取れないがとてつもない速さで何かを言っている。すると、なんというか。空間が歪み始めた。彼女を中心としてどんどん歪んでいく。そうして、彼女は唐突に右手を前に突き出した。とそこにどこからか光が集まっていく。次第に光は増え最終的に野球ボール程の光の玉が出来上がった。
「おりゃ」
というなんとも可愛い掛け声と共にその玉をこちらに全力で投げ飛ばした。
ーゑ
旧字体になりその玉は一直線にこちらに向かい、そして顔面に直撃した。その直後、玉は水風船が弾けたかのようにバシャリと弾け消えた。
「それで治ったんじゃなーい?どうかしら?」
女性は方目を閉じ微笑みとともにこちらに向かって言う。俺は恐る恐る自身の鼻を触った。
ーふにゃりとしない。ちゃんと、ある。鼻骨と言うべきか、とにかくその骨が、ふにゃりとせずある。
「成功のようね。いやね、時々いるのーよ、失敗しちゃって顔面に穴ー開けちゃう場合」
テヘペロと彼女は右手を可愛らしく頭にやり舌を出す。普通ならあら可愛いと思うとこだろうが何気に怖い話を聞いた後ではそうは思えない。
「顔面に穴ァ!?」
驚愕と恐怖が折り重なり自身の声として出力された。怖!?
「時々よ、時々。」
んっと…?と女性は首を傾げあさっての方を見つつ何か考えていた。
「さて、貴方。今ここがどこだかわかる?」
いきなりジト目で女性は聞いてきた。