女神だって楽じゃない!
天界生活を書いてたら、何となく思いついたので(・x・)
『それじゃ、新しい人生頑張ってね~』
「ちょ、ちょっと待って!え?これマジなの!?」
眩い光に包まれた男性が驚きの顔のまま消えた。
毎度の事なのでもう慣れた。
「お疲れ様。さっきの男の子、やっぱり焦ってたわね」
「まぁね~。相変わらずチートだの何だのって夢見てるヤツばかりだわ」
「そんな美味しい話あるわけないのに・・・ね」
「ホント、馬鹿ばっかり!同じ世界で転生するか違う世界で転生するかの違いだけなのに、どうして特別な力を貰えるって思うのか不思議でしょうがないわ~」
消えた男性がいた場所を眺めながら話す2人、実は女神である。
そしてその2人がいるのは天界。神々が住む世界だ。
2人の女神の名前はそれぞれ、『アイビー』と『ソラール』といい、彼女達の仕事は死んだ人間の魂を違う世界に送る事。いわゆる異世界転生の案内人だ。
彼女達は毎回聞かされる転生予定者の言葉にうんざりしていた。
異世界転生を伝えると、何故かほぼ全ての者達が「女神の加護が貰える」「特別な力が貰える」「チート能力」「選ばれた特別な人間」といった言葉のどれかを話すのだ。
そして、その訳の分からない贅沢理論を言う者達のほとんどが地球に住む日本人という事を付け加えておく。
何でも彼等の文化の中にそういった夢物語がそれなりに根付いているらしい。
中には「違う世界は面白そう」などの反応で転生されていく者もいるが・・・
それはとても少数と言っていいだろう。
「ねぇソラール、今回の予定者ってこれで終わりだよね?」
「うん。次の転生予定はまだ来てないわ。いつもと同じなら半年後くらいじゃない?」
「あ~・・・これで少しはゆっくり出来るわね。美味しいモノ食べたいわ~」
「あ、そうだアイビー!書類はちゃんと出しておいてよね!この前みたいに出し忘れとかがあると私まで怒られるんだからね!」
「はいは~い」
世界は決してひとつではない。
それぞれの世界の行き来がほぼないだけで、世界は複数あるのだ。
剣と魔法と魔物が溢れる世界、科学によって発展している世界、人が生きていく事が難しい世界もあれば人に優しい世界もある。
どれだけの世界があるのかは天界に住む神、それも上位のごく僅かしか知らない。
何のために作り、何のために見守っているのか・・・全ては神の気まぐれなのか。
「ん・・・ここは? 俺は確か・・・トラックに轢かれて・・・死んだ?」
『はい。貴方はトラックに轢かれて死にました。享年17歳ですね。そしてここは天界の入り口とでも言っておきましょうか』
「やっぱり死んだか~。チキショー!まだ彼女もいなかったのになぁ・・・。あ、ヤベ!パソコンのデータ親に見られる!マジかよ・・・最悪」
『混乱されているようですが少し話を聞いてもらってもいいでしょうか?』
「あ、はい。 てか、おねーさん誰?神様?女神様? あ!もしかしてこれって異世界転生ってヤツじゃね!?マジかー」
『えぇと、私の名前はソラール。貴方の言うように女神です。 貴方には2つの選択肢があります。まずひとつ目はこのまま同じ世界で次の人生を送る事、もうひとつが違う世界で次の人生を送る事です。先ほど言っていた異世界転生という考え方で間違っていません』
「キター‼異世界転生キター‼」
『その様子だと違う世界での転生を希望するという事でよろしいでしょうか?』
「も・ち・ろ・ん!! これってアレでしょ?女神様の加護が貰えたり、何か特別な力を貰って異世界で無双出来ちゃうんでしょ!? ヤッベ、俺ちょ~テンション上がっちゃうわ~。やっぱ魔法とかあるんですかね?獣人とかエルフとかいたりするんですよね?」
そう、今回の転生予定者もやはりこの手の事を想像するのだ。
如月達也17歳高校生。日本という国に住んでいたこの男は、やたらと高いテンションで喋っている。これも毎度の事なのでソラールはもう慣れてしまった。
初めてこの仕事に就いた時、ソラールは転生予定者のテンションに驚いてしまった。
そして壮大な勘違いを正すのにとても苦労した。
なぜただの転生で特別な力が貰えると思うのだろう。同じ世界で生まれ変わるか、違う世界で生まれ変わるかの差だ。ただそれだけなのに。
特別な力が貰えないと分かった時、その人間は相当駄々をこねた。
「異世界転生なのに力を貰えないのはおかしい」だの「そっちが勝手に俺を選んだクセに」だの言いたい放題だった。
ソラールは「別にこちらは選んでいない」と努めて冷静に言った。
そう、たまたまタイミングが合っただけで、別に違う人間でもいいのだから。
全てはタイミング。異世界を担当する神が必要な魂の数を要求し、それに合わせてアイビーやソラールが希望者を募るだけなのだ。
『まず貴方の勘違いを正します。女神の加護も特別な力もありません。ただ普通に転生するだけです。同じ世界か違う世界か、差はそれだけです』
「・・・・え? じゃあチート無双とか出来ないの?マジで?」
『はい。そもそも、ただの転生で特別な力が貰えるなんて都合のいい事あるわけがありません。こちらが保証するのは新しい世界で普通の家庭に生まれる事が出来るというくらいでしょう。あぁ、とても運が良ければ貴族に生まれる事もありますね』
「そ・・・ん・・な・・・」
『話が前後してしまいましたが、転生する世界は剣と魔法がある世界です。魔物や魔族はいますが、魔王といったものは存在しません。あと、種族も多様ですね。獣人やエルフ、ドワーフなどもいます。多少の差別はあるますが、概ね平和な世界という感じでしょう』
「エルフ・・ドワーフ・・獣人・・・でもチートなしか・・・」
『世界観は貴方の世界でいう中世ヨーロッパに近いと思ってください。王や貴族、奴隷なども存在します。まぁそういった知識は生まれてから大人になるまでに分かる事なので、今は何も分からなくていいでしょう』
「ホントに普通に生まれ変わるだけ?マジに?」
『えぇ本当です。ただし、前世の記憶・・この場合、今の貴方の記憶ですね。それを持ったまま転生する事も出来ますよ。その場合、こちらの指示通りの動きをしてもらう必要がありますけどね』
「知識チート‼ 女神様の指示に従えば知識チート有りか‼それでお願いします!」
今までの転生者とまったく同じ反応である。
確かに今の知識があれば物事を有利に進める事が出来るかもしれない。
ただし、すでに先人がいる。同じように前世の知識を持って転生した数多くの者達がいる。これから転生してそれを生かせるかは疑問である。
ソラールはその辺りの事も話しておくべきだと思い、説明しようとした。
だがそれは相棒のアイビーによって最悪のタイミングで行われたのだった。
『あ~もういいでしょ!アンタもあっちで頑張りなよ!とりあえず5歳になったら神殿に来る事になるから、その時にこちらの指示を伝えるわ。それ以降は半年に1回は神殿に来なさい。いいわね?来なかったら神罰が下るわよ!』
「えっと・・・はい、分かりました」
『それじゃ、新しい人生頑張って! あ、それと、同じように知識持った人はそれなりの数いるからね。あんまり知識で優位に立てないわよ。じゃあね~』
「・・・え? えぇぇぇええぇぇぇえ~~~!?!??!」
「アイビー・・・あのタイミングはちょっとかわいそうかも」
「ん?いいのよ。ウダウダ言ってても仕方ないんだから、さっさと転生させればいいの。毎回毎回、同じ説明するのにも疲れたしね~」
「それはそうだけど・・・はぁ、もう送ったから仕方ないわよね」
「そうそう!さっさと書類提出して、ご飯食べに行こう~」
「そうね。仕事のストレスは美味しいものを食べて発散しましょ♪」
2人の女神はそう言って部屋を出ていった。
真っ白で何もないこの部屋は、死んだ人間が次の転生先を問われる場所。
それは天界を管理する棟の片隅にひっそりとある。
次の投稿予定は未定です。
今後の展開も未定です。
だって思いつきで書いただけだもの(・x・)