守ってくれてる?⑨幸せ運んでます
コン太はみんなを幸せにしてる。
不思議なコン太。
犬みたいだけど狐…らしい。
そうして、小さな幸せを運んでくる。
信号が青になった。
コン太は、時折立ち止まりながら、真っ直ぐに進む。
スーパーを通り過ぎ、小学校が見えてきた。
小学校を通り過ぎた道を曲がると、私の住むアパートがある。
コン太の散歩コースは、こっちまで広かったんだ。
でも、一度もコン太や宮司さんには出会っていない。
やっぱり気まぐれな散歩コースかな?
小学校まできたコン太。
また座ってじっとしてる。
この小学校、私が通っていた時は、小さくて狭くてボロだったけど、数年前に建て替えて、おしゃれな小学校になった。
コン太が歩き始めた。
私の住むアパートの方へ…と、思ったら、反対側の川の方に進んで行く。
そうして、河川敷の歩道に降りた。
なんだか疲れてきた。
こんなに歩いた事、最近無いから、超運動不足。
『ねえコン太ちゃん、ちょっと休まない?疲れちゃった』
そう言いながら、歩道のベンチに座る。
『ごめんね。お姉さん、体力無くてさ~』
コン太は私をじっと見つめて、静かに座った。
『ねえ、コン太ちゃん、本当に狐なの?』
コン太は空を見ている。
『そうよ。私は狐』
えっ?コン太が話をした?何?こんな事はファンタシーな話の中だけでしょ。
『きゃはは』
後ろから笑い声。振り返ると、高校生くらいの男の子が立っていた。
『おねーさん、バッカじゃないの~?犬が話すわけないじゃん』
ムカツク‼何?この、見ず知らずのガキンチョ!
『バカで悪かったわね。行こう。コン太』
ベンチから立ち上がって、歩き始めた。
しばらく河川敷の歩道を歩き、図書館の近くに来た時には、男の子は見えなかった。
図書館から、駅に行き、社務所に戻った時には、空はきれいなオレンジ色になっていた。
『今日はありがとうございました』
宮司さんにお礼を言って、コン太の紐を渡した。
『コン太は気まぐれだから疲れたでしょう』
『いえ。楽しかったです』
『また、いつでもどうぞ』
『はい』
コン太に手を振って、最初に見たケーキ屋さんに行ってみた。
小さくて可愛らしいケーキ屋さん。
私の好きなチーズケーキがある。
そうだ、聞いてみるんだった!
『あの…コン太が、この店の前で座ったんですけど』
すると、オーナーらしきおじさんが出てきて言った。
『コン太座ったの?やっぱりね~。今日はバースディーケーキの予約が多くてね』
本屋さんも、似たような話をしていた。
コン太は幸せを運んでる。
チーズケーキを買って店を出た。
今日座った場所は、このケーキ屋さん、本屋さん、靴屋さん、小学校、図書館、駅前のガソリンスタンド。
きっと、みんなに幸せを運んでいたんだと思う。
散歩コースが気まぐれなのは、この街全部を幸せにしたいから。
私も幸せになりたい。
仕事見つけて働きたい。
明日もコン太と散歩しようかな。
宮司さんに頼んでみよう。
お風呂の中で半分眠りながら考えていた。