守ってくれてる?⑧散歩
コン太が狐に見えてきたユキです。
私の前を歩くコン太。
公園をひとめぐり。枯れ葉にじゃれている姿が可愛い!
小さな頃から動物は好きだったけど、命を預かる責任が怖くて、金魚すら飼った事が無かった。
そんな私が、犬…いや狐の散歩してる!
嬉しくてワクワクする。
公園を出たコン太は、坂道を下り、小さなケーキ屋さんの前で座った。
あれっ?これって、テレビとかで見る『食べ物下さい』ポーズ?
ちゃっかりしてるな~
ここのケーキ美味しいもんね。
コン太は、数分間じっとしていたけど、すぐにまた歩き始めた。
『ケーキもらえなかったね』
そう話しかけたら、コン太は振り返り、私をじっと見た。
でも、また、歩き始めるコン太。
今度は本屋さんの前で座った。
コン太は本屋さんの中をじっと見つめている。
『あらコン太ちゃん』中から、店員さんが出てきた。
『コン太ちゃんがここを通るのは久しぶりね。元気だった?』
店員さんはコン太の頭をなでて笑った。
『いつも同じ散歩コースじゃないんですか?』
聞いてみた。
『あら、コン太ちゃんの飼い主なのに、分からないの?』
不審そうな顔で私を見る。
『いえ…私は宮司さんの身内しゃなく、お散歩の代理です』
『バイト?』
『いえ…』だんだん、挙動不審になってきた。
『散歩してみたくて、コン太をお借りしたんです』
『そう』店員さんは納得してないようだったけど、コン太の散歩コースを話してくれた。
『コン太ちゃんは気まぐれなの。でも、コン太ちゃんが来ると、癒されるし、お客様に喜んでもらえるのよ』
『コン太を見て喜ぶんですか?』
『違うの。うちは本屋でしょ。探していた本が、うちの店にあった。とか、そんな感じ』
へえ~
ちょっと不思議な話。
『不思議ですね』
『だから、コン太ちゃんの散歩コースになるように、毎日祈ってるわ』
店員さんは『コン太ちゃん、来てくれてありがとう。バイバイ』と、お店の中に消えていった。
じゃあ、さっきのケーキ屋さんも、誰かが好みのケーキを見つけたのかな?
あとで聞いてみようっと。
コン太はまた歩き始めた。
信号は赤。横断歩道でも座る。
座ってると、神社の入り口の狐の像そっくり。
やっぱり狐なのかな~?