守ってくれてる?⑦
コン太との散歩が始まります。
空は青空。
11月だから空気は冷たいけど、気持ちはハイテンション。
ハローワークは、いつもと同じで、微妙な求人。
それを、わがままと言われても仕方ないんだけど、今日はこれから楽しい事が待っている!
『今日は、相談はどうしますか?』と、受付のお姉さんが、いつもと同じように話しかけてきたけど
『いえ。今日はいいです』
そう言って、ハローワークを出て、小走りで神社の社務所に向かった。
『あの…すみません。宮司さん、いらっしゃいますか?』
社務所の戸を開けながら言ってしまった。
なんか、そんなに親しくないのに、失礼な態度だったかな?
でも、気持ちは、もうコン太の散歩でいっぱい。
『お待ちしてましたよ。あ、名前聞いてませんでしたね』
宮司さんは仕事をしていたようで、座卓の上が散らばっている。
『あっ、失礼しました。吉田ユキです』
『ユキさんか。可愛らしい名前ですね』
初めて名前をほめられた気がする。
なんか嬉しい。
『じゃ、一緒に着てください。裏が自宅ですから』
宮司さんに言われて、後をついて行く。
綺麗に手入れされた庭。
神社の宮司さんの家なのに、玄関ドアに(もう)クリスマスリース。
本当に面白い宮司さんだ。
『おーい。コン太~。散歩に行くぞ~』
宮司さんが玄関で叫ぶと、コン太が紐をくわえて走ってきた。
『コン太、今日はこのお姉さんと散歩だぞ。女同志仲良くするんだぞ』
そうコン太に言った後、宮司さんは、小さなトートバッグを私に持たせた。
『この中に、うんち袋が入っています。ユキさんは、コン太の散歩は初めてなので、ゴム手ぶくろも入れておきました』
うんち袋?
あ、そうか。犬の散歩する人は、必ず小さなバッグ持ってる。この事か!
何もかにも初めての、犬の散歩。
それも、他人のいえの犬…あ、違った。狐。
『じゃ、行ってらっしゃい。散歩コースは、コン太に任せておけば、ちゃんと戻ってくるから、心配しなくていいからね』
手をふる宮司さんに見送られて、私とコン太は宮司さんの家の庭を出た。