守ってくれてる?⑥コン太
『あのっ…』
立ち去る宮司さんの後ろ姿に、思わず声をかけた。
『ワンちゃん…いえ、コン太君を明日、散歩させてくださいませんか?』
『コン太の散歩?貴女が?』
戸惑う宮司さん。
そうだよな~。見ず知らずの人間に、飼い犬…いや、飼い狐の散歩をさせるなんてね。
何かあったら大変だし。
『あ、非常識な事言いました。ごめんなさい。散歩…やっぱりいいです』
頭を下げた私。
『いいですよ』
宮司さんの声が、聞こえた気がした。
『えっ?』驚いて顔を上げると、コン太を抱いた宮司さんが笑っていた。
『コン太は、おとなしいし、吠えません。貴女の気分転換になるなら、明日、散歩をお願いしますね』
『ありがとうございます!』
さっき以上に深々と頭を下げ、コン太の頭を撫でた。
『ハローワークが済んだら、すぐに来るからね。明日よろしくね』
コン太は、きょとんとした目で私を見ていた。
『あ、それから…』宮司さんが思い出したように話した。
『コン太はコン太君じゃないですよ。女の子です』
ええっ~
女の子なのに、コン太?
いや、名前は自由だし、人間でもキラキラネームとかあるから、犬に見える飼い狐に、どんな名前を付けようと、宮司さんちの好みの問題だからいいんだけど…
面白い宮司さんと、面白い犬…狐に出会ってしまった。
明日の散歩が楽しみになった瞬間だった。