表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

幸せ

ユキのところにも、コン太は幸せを運んで来てくれました。

次の日、午前中に社務所に向かった。

無職で、いつ家賃滞納になるか分からない人間が、ハローワークに行かずに社務所って…

自分でも呆れてしまう。


でも、コン太の散歩がしたい。


『こんにちわ。今日もコン太ちゃんの散歩していいですか?』

社務所に声をかけて、コン太を借りる。


コースは、公園は毎回同じ。

公園からが違う。


今日は、公園の別の入り口の階段の方へ向かう。

階段を降りて、仕立て屋さん、自転車屋さん、銭湯、誰かの家の前。

ちょっと座っては、歩く。を繰り返す。


そうして、昼過ぎまで散歩した。




 …………………………





コン太の散歩は1週間続いた。

こうなると、なんだか自分ちのコン太に見えてくるから不思議。


散歩の後には、ハローワーク。

就活もちゃんとしなきゃね。


今日は、ようやく、自分に合いそうな仕事を見つけた。

市の文化財の保護施設の補助職員。

文化財とか、伝統とか好きだから、たぶんやっていける。

応募を申し込んで家に帰った。





 …………………………






たいした資格も無い私が奇跡的に補助職員にも合格した。

文化財資料を作ったり、整理したり。

たまに、古い民家から昔の生活用品を運んできたりもする。


フルタイムじゃないのは残念だったけど、仕事が終わってからコン太の散歩が出来る。


散歩も、半年続いた。

仕事も楽しくやっている。


桜が葉桜になる頃、コン太を育ててくれた老犬が亡くなった。

コン太も悲しかったらしく、しばらくは散歩も公園内だけだった。


それでも、少しずつ散歩コースが前と同じになってきた。


そうして、小さな幸せを運んで歩く。


私が就職出来たのも、コン太のおかげかも知れない。


あの失礼な男の子は、あれ以来会ってない。


『コン太、彼氏が欲しいんだけど』

願いがだんだんと図々しくなっていく。

そんな私を、コン太は無視して歩く。


そういえば、コン太は女の子だった。

私の彼氏より自分の彼氏だよね。


コン太…これからもよろしくね。

就活しながらコン太の散歩。

幸せを運んでくれるコン太は、神社の狐だったのかも知れません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ