“責任”
9/20 午後18時
〜綺麗な橙色に染まった夕立の下の公園
「そろそろ帰らないと」
「そうだな」
「じゃーな!」
俺を含めた3人の中学生が夕立を見て言葉を言い残し、各自の自転車に乗ってそれぞれ別の道へ去って行った。公園から俺の家へ帰る道は、あまり人通りが少ない。
「ちょっといいかな」
公園から家への帰り道の途中にある小さな銀行の前でチェック柄の服を着た爽やかな顔をした青年に声をかけられた。
「はい?」
俺は知らない青年の側に自転車を留めて降りた。
「ピピーッ」
知らない青年は突然、薄茶色のズボンにあるポケットから小さな笛を取り出して吹いた。
すると後ろから5人程の軍人が押し寄せてきた。更に、俺の体を掴んだり口を手で押さえられたりした。その後、軍人用の車の中に入れられた。
ーーそこから覚えてはいなかった。
「はっ!!」
目が覚めると俺は自分の家の自分の部屋にあるベッドの上で寝ていた。
起き上がり、外を見ると夜だった。窓に映る俺は家着を着ていた。ただ、めまいがする。
階段を降りて一階に行きリビングに入るとソファには仕事帰りに疲れて酒を飲んで酔っている親父がぐっすりと寝ていた。キッチンを見ると、食器2人分があった。食べた覚えは無い。
そして、キッチンタイマーを見ると張り紙が貼ってあった。
"9/20夜23時までに食器を全て片付けること"
表示式の時計を見る限り、9/20の夜22時だった。
俺はめまいがしているため、説教を覚悟して自分の部屋に戻って寝た。
〜朝07時30分
「おい!!ユウキ起きろ!!来年受験生なんだから起きろ!!しかも食器を洗ってないぞ!起きない、食器を洗っていない、罰として2発殴ってやる!」
「やっべ……」
俺は眠くてだるくてもベッドから起き上がり、階段を降りてリビングに入った。
すると、横から2回殴られた。
「ふっ、今度また同じことしたら2倍殴るからな!」
親父はニヤけながら言った。
俺は顔を洗い、歯を磨き、トイレで用を済ませ、自分で料理をして、着替えて、手作り料理を食べて、カバンを背負い、家を出た。
俺は学校へ行く途中は必ずリュウという小学一年からの親友の家へ迎えに行き、一緒に学校へ行く。
玄関を出る前は、俺が幼少期の頃の家族写真を見た。3人家族だが、もう母親はいない。
「おはよーユウキ!元気だったかー♪」
「おはよ!俺はいつも元気だぜ!って何回言わせるんだよ!(笑」
リュウは俺の背中をポンと軽く叩き、俺は叩き返した。
学校に着き別のクラスのリュウと分かれて教室に入ると、セロハンテープらしき何かに引っかかって顔が梅のようにしぼんだ顔になった。
「おい!ユウキが引っかかったぜ!ちょーオモシロくね(笑」
こいつはシュウヤ。学年一のいじめっ子であり、リーダー格だ。
去年の一年生の頃にシュウヤに目をつけられちゃったんだ。最悪だよ。
「やめろよ、つまんないことするなよ」
小学生の頃、俺はこんなことをする元いたずらっ子だった。
ただ、運悪くリュウを引っ掛けてしまい、危うく絶交されるとこだった。それが心に残り、いたずらをしなくなった、更にはいたずら友達に"つまんない"と嫌われてしまった。人気者でプレイボーイだったのに。今はもう冴えない男になっちまった。
ただ、唯一の信頼できる女子がいる。
「ユウキ君!大丈夫?どこか痒くない?」
そう、とても優しくて笑顔が可愛いレナちゃんだ。俺のデレデレが見抜けられていそうだ。
「大丈夫だよ、心配ありがとう」
「良かった!笑顔のないユウキ君なんてあり得ないしね!」
レナちゃんは俺の笑顔が好きらしい。
告れって?告りたいけど機会が無いんだよなぁ。
俺はカバンから教科書を取り出して机の中にしまった。
前を向きドアの方を見ると、教室の前にリュウと同じく親友のヒカルがいた。
ヒカルはジェスチャーで「来い」と言っている。それに従い、ヒカルの元へ行くと、
「よ!どうした?」
「よ!んでさ、社会の教科書貸してくれない?お願い!」
「ああ、いいよ。でも1時間1000円な?(笑」
「金取るなよ!?」
「嘘に決まってんじゃん(笑」
そう言いつつ、教科書を取りに行き、渡した。
「それじゃ、またね!」
ヒカルはツッコミの時は口調が男っぽくなって、普段は"僕"とか優しい草食系のような口調になる。
〜キーンコーンカーンコーン 午後16時頃下校
俺はさっさとカバンに教科書等を入れ、先に帰った。
昇降口まで来ると、シュウヤが走ってきた。
「ザコ坊君!じゃあな!(笑」
シュウヤは俺の側まで来ると頭を1発殴られた。
暴力には暴力で返さないと。
「このヤロぉ!!やりやがったな!!」
「グハァ!」
なんと、俺の右ストレート1発だけで今この場にいる昇降口の入口から10m先の出口側のガラス付きドアまで吹っ飛ばしたのだ。
後からやってきた他の生徒達がシュウヤが倒れているのを見ていた。
「ユウキ…?お前がやったのか?」
その声はヒカルだった。ヒカルの方へ振り向くと、ヒカルの後ろにはリュウがいた。
「こんな吹っ飛ぶほど俺には力はないんだけど…」
「なんの音だ!……シュウヤ君じゃないか!誰がこんなことを……」
「先生!ユウキ君がやりました!シュウヤ君を一方的に本気で殴っていました!」
職員室からやってきた先生が"誰がこんなことをしたか"を問うとシュウヤの仲間が俺が不利になるように言った。
「ユウキ君!今から親を呼ぶので校長室に来て待ってなさい!」
「はい……」
「僕とリュウは待ってるよ」
ーーなんでこんなに力があるんだ…?
「すみません、うちの子が……本当にすみません」
「怪我もなく、気絶だけで済んで良かったですね」
親父と校長が話してる。
内申点が下がる、親父に説教2時間に、殴られちゃう。だから親友は癒しなんだ。
親友が1人でも死んだら俺も死にたい。
親父と一緒に校長室から出ると、親友のリュウとヒカルが待っていた。
「親父、俺は友達と帰るから先に帰ってていいよ」
俺はそう言うと、親父は返事をせずに学校から出て車で家に帰って行った。
「内申点が下がったの初めてだな。俺たちの目標は達成できなくなったな。でも、一回ぐらいは大丈夫だろ!元気出せよ!俺達の嫌いなシュウヤを吹っ飛ばせたのは良かっただろ?」
リュウは一生懸命俺を慰めてくれた。ヒカルも一緒に慰めてくれた。
「俺、今日は病院行ってくるよ。腕を見てもらう」
「え?なんで?」
ヒカルが理由を聞こうとする。
俺はシュウヤを吹っ飛ばすときに見た一瞬のことを話そうか迷った。
いや、親友は隠し事は無しだから話した方が正解かもしれない。
「シュウヤを吹っ飛ばすとき、一瞬見えたんだ。俺の腕が黒くなってたのが」
「「腕が黒く…?」」
リュウとヒカルが同時に言った。
俺はもう一度、腕に力を入れてみた。
すると、俺の腕は赤くなり、数秒経った後黒くなった。
「なんだ…これ…?」
「分からない」
「これはやめといた方がいいよ、絶対に世間に知られたら苦労するよ」
「え、でもさ」
「あれ?親友からの意見は取り入れてみるんじゃなかったっけ?」
「じゃあ…そうする」
ヒカルの意見はかなり的確で、今までヒカルの意見で嫌な思いはしたことがない。
「「「よし、帰ろう!」」」
気を取り直し、いつも通り、みんなで帰り、楽しくなっていた。
「誰か!そいつを止めてくれ!精神患者なんだ!」
医師であろう人がこっちに向かって言った。
「精神患者!?俺は無理無理」
俺は精神患者を避けようとした。
「何言ってんだよ!ほら!やるぞ!来るぞ!」
リュウは将来警察になりたいらしく、地元でパトロールをやっていて、俺はそれを手伝っている。
「どけー!!邪魔!!刺す!!」
言葉はあまり喋れないらしく、頭は完全に狂っていた。
だが、俺がまず先に見たのは精神患者がポケットから小さなナイフを取り出していたとこだった。
「リュウ!危ない!」
俺は咄嗟に止めようとしたが、刃物が恐怖で止めることができなかった。ヒカルも俺と同じだった。
「グホ……」
「リュウウウウウウウウウウウウ!!!!!!」
ーー目の前で親友が刺された