03.後悔
コンビニに行った帰り道。
私はすぐには家に帰ることなく、途中で通り過ぎた小さな公園で夜食を取ることにした。
誰もいない公園で、どこか寂しげにポツンとベンチに灯りをともす電灯。
そのスポットライトを独り占めするように、私はそこに座り買ってきたサンドイッチを頬張った。
ちょっと冷たくなっていたパンとタマゴが喉を通り抜けていく。間に挟まれていたキュウリが、味の濃いタマゴを上手に調節してくれていて、思ったよりも軽く食べられた。
二個入りのサンドイッチをあっという間に食べきると、紙パックに入った牛乳を流し込んでいく。
意地汚いかな、とは思ったがお腹が減っていたんだもの。仕方ないよね。
「ふぅ……美味しかった」
買い物袋に、食べ終わったゴミの後始末をしながら一息つく。
何気に辺りを見渡してみると――子供の為に用意された砂場やブランコ、滑り台が目に入った。どれも子供に合わせて作ってあるのか、気持ち少し小ぶりな感じがした。
何気なく眺めていると――ぼんやりと思い出す。
幼い頃の私と麻衣の姿を。
麻衣ってば、どこか鈍くさくて――いつも私が手を引いてあげてたっけ。
なんかあると、すぐにピーピー小鳥のように泣いちゃって――
「ふふっ……懐かしい」
懐かしい思い出が、次から次へと脳裏に浮かんでくる。
もう二度と戻ってこない日々。時には、喧嘩もしたけどそれも全部ひっくるめて楽しかったな。
でも――それを懐かしむ相手は、もうこの世にはいない。ついこの間まで居たなんて、やっぱり信じられなかった。
「麻衣のバカ……」
溢れ出そうな涙をギュッと堪えるように、わざとらしく悪態をつく。
そうすることで、少しでも悲しみを紛らわそうとした。こんな行為自体が無意味な事など、百も承知の上だ。
――でも、今の私にはそうする以外に方法が思いつかなかった。
「ばか……麻衣のバカ! なんで……? なんで少しは相談してくれないの!」
「私じゃ役不足ってわけ!? そりゃ、私だって出来ないことだってあるよ! でも……でも相談ぐらいしてくれたって……」
感情が高ぶってしまったのか、溜まっていたモノを全て吐き出すように声を張り上げる。自分でもバカみたいだとは思った。でも、悲しみが紛れるはず。
……はずだった、のに。
「バカ麻衣! アンタに先に死なれたら……アタシは、この先どうすればいいのよぉ!」
「まい……教えてよ……うっ、ひくっ……」
いつの間にか、私の瞳からは堰を切ったように涙が溢れ出した。
深夜の誰も居ない公園で、一人泣き続ける私――まるで最愛の人に捨てられた哀れな女みたいだった。
誰にも見られる心配のない公園で、手で覆うようにして顔を隠し、ひたすら涙を流し続けた。そうすることで脳裏を巣くう、救いようがない絶望感を少しでも体の外へと出したかった。
「……ごめん。ごめんね、麻衣。私が、私が悪かったんだよね」
私は誰にも対してでもなく、気づけばひたすらに懺悔の言葉を口にしていた。
もういっそ、このまま死んでしまいたい――そんな願望すら脳裏に浮かぶほど、私の精神は衰弱しきっていた。




