23、幽霊の正体見たり、ほにゃららら
次の日の夜、誠一は学園の前に来ていた。
その理由は、
……七不思議ねぇ。
ジーンから聞かされた七不思議の調査である。
ジーンもうろ覚えであったが、確か図書館関連の話もあったとのこと。
もしかすれば、勇者が残したメッセージの鍵となるかもしれない。
ジーンに七不思議の案内を了承して貰い、そう思って来たわけだが、
「何でこんな大勢いるの?」
ジーンだけでなく、カレン、セシル、アンディー、ココ、アビゲイル達も共に学園に来ていた。
「すまん、先生。話したら付いてきた」
ジーンは謝りながら、事情を説明する。
そもそもジーンはこういったオカルトチックな話に興味はなく、七不思議の詳細を知らない。
ただ図書館の話が一個あったかな程度の知識だ。
そこで、ホットサンドを食いながら仲の良いいつもの面子に話を聞くことに。
そういった話に興味ない筈のジーンが七不思議について聞いてくるので、この5人は不思議がってジーンから事情を聞き、
「「「面白そうだから来ました」」」
「お前らなぁ……。ジーン、何とかならなかったのか?」
「コイツらが俺の手におさまるタマかよ」
「……たしかに」
聞いてみれば、何故かFクラス内でも七不思議は知ってるものは少ないとのこと。
ここに居るメンバーは一人ひとりずつが、それぞれの七不思議を知っているらしい。
「あんまし有名じゃないのか?」
「それが、何でかFクラスだけ浸透、というか話が回ってこないっぽいんだ」
誠一の言葉にアンディーはそう答える。
そして、ココ、アビゲイル、カレン、セシルも続いて話す。
「今回、先生が調査すると聞いて、中々ないチャンスだなと思って」
「私も全容を知ってみたくて。つい来てしまいました」
「僕は夜の学園って一度来てみたくて」
「夜の学園ってフレーズがドキドキしない?」
一応、皆それぞれ理由があるようだが、
「なるほど…………で、本音のところは?」
「勇者の遺物があるかもって聞いて。売ればお金になるかしら」
「若返り、コホン、美容にいい魔導具があるかもと聞いて」
「ぼ、僕はそんな、別に。……ただ男らしくなる魔法があるかな、なんて」
「オデ、トウメイ、ナル。オンナユ、ノゾク」
「うーむ。ウチの生徒、見事に自分の欲に忠実ー。あと、セシルは何で片言なんよ」
正直なことは良いことだ、とは誰の偉い言葉であったか。
そして、ココに関しては夢あるようで生々しい。現ナマ主義である。
というか、勝手に話が盛られてるな。
「……今更だけどレジナルドは?この面子ならいてもおかしくないだろ」
「なんか別用があるってよ、先生」
レジナルドが居ない事に少し驚きはしたが、まあ予定くらいあってもおかしなことではない。
「まあ、行きますか。まずはどこからだ?」
「それなら、まずは廃棄場に行きましょう」
まず最初の情報提供者は、ココからであった。
◆
【廃棄場に響く呪いの声】
学園には廃棄場が存在する。
そこは生徒が捨てるゴミ以外にも、研究棟の廃棄物も捨てられる。
研究棟。
そこでは黒い噂が後を絶たない。
何でも、人体実験や、はたまた獣人や森人の遺体を触媒に高位の悪魔召喚をしているとか。
そして、使用済みになった残骸を密かに捨てていくのだと言う。
その無惨な扱いを受けた死人の魂達が、夜な夜な怨嗟の声を上げるのだ。
自分をこんな目に合わせた奴らに復讐をするために。
「どこだ〜どこだ〜」
夜な夜な廃棄場からは死者の彷徨う声が聞こえ、そして、引き摺り込まれたくなければ、決して近づいてはならない。
◆
「────、といったお話です」
「彷徨う霊の声ねぇ」
よくありふれたお話でもある。
研究棟は機密情報も扱っている為、特命でも無い限り生徒が入ることはない。
そして、中を知らない事は、興味を持ち、不安と恐怖を見出すものだ。
「で、実際の所はどうなんだ?本当に森人の遺体とか使われてんの?」
「無いですね。そんな事をすれば国際問題ですよ」
「だよなぁ」
誠一はココに聞いてみるが、淡々と否定の言葉が来た。
ココ自身も信じてないようだ。
ただ、
「…………(ビクビク)」
「えーと……大丈夫か、カレン?」
「えっ!な、な、な、何がですか?」
カレンが軽く青ざめて無言になっている。
どうやら怖い話が苦手らしい。
怖いのに何で来たんよ、君。
というか、プルプルして我慢してる反応がいちいち可愛らしさがある。
狙ってやってるのか?
「「「乙女かよ」」」
「な、何かな!ぼ、僕は、お、男だし、べ、別にこんな事で怖がってなんか────」
と、後ろでコソコソとセシルが足音を消して近づき、
「ワアッ!!」
「ヒャアッ?!」
「わーい、ビビったビビっ『退屈な髪長姫!』ぶべらぁ!!」
セシルの声に驚いたカレンは反射的に魔法を発動し、髪で出来たハンマーを叩き込んだ。
顔面にヒットしたセシルは5メートルほど飛んだ。
ピクンピクンと痙攣してるということは、生きてるので大丈夫だろう。
というか、自爆ネタは彼の芸風なので自己責任で。
対して、カレンは腰が抜けたのか、近くにいたジーンの腕にしがみついている。
「ご、ゴメンね、ジーン。しばらくこうさせて……ね」
「別に構わねえぞ」
ジーンに涙目に上目遣いで懇願するカレンを見て、アンディーはぼそりと呟く。
「ウチのクラス、女子より男子の方が勝ってるよな、可愛さで」
「「…………」」
数秒後、アンディーは男子に負けた2人の女子から魔法を食らって吹っ飛んだ。
「「アンディー!」」
とりあえず、ジーンと2人で名前呼んで叫んどく。
黙ってれば良いものを。
と、そんな事を考えてると、女子2人から睨まれる。
勘が鋭いことで。
こちとら巻き添えは食らいたく無いので、さっさと移動することに。
「ほら、あんまし夜更かしもいけないし。件の廃棄場へ行くぞ」
「「「はーい」」」
3人の他に、先程攻撃されたセシルとアンディーも既に回復して、立ち上がって返答していた。
……丈夫過ぎないか?
◆
それは唐突であった。
廃棄場の入り口へと近づいてきた時であった。
「ねえ、何か聞こえない?」
聴力のいい獣人であるココの言葉に、皆、耳をすませる。
すると、
『……どこだぁ……ちがうぅ………とこだあ、どごにいるぅ?』
「「「…………」」」
全員で顔を見合わせる。
どうやら全員聞こえてるようだ……若干一名、耳を塞いで聞こえないことにしてるが。
……まさか、マジで人体実験の被害者の幽霊か?
もしものことを考え、誠一が先行する。
申し訳程度に塩と数珠を用意しておく。
来る前にスキルを使っておふざけで作っといたものだ。
誠一は音を上げないように静かに、廃棄場の扉を開ける。
そして、そこで誠一が目にしたものは、
「あれ?先生にジーン達。何してんだ?」
「…………それはコッチの台詞だ。何してんだレジナルド」
何故か廃棄場にカゴを背負ったレジナルドが居た。