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14、息子がいます

「ほれ。追加の料理用意できたぞー!たんと食え!ただ、後でデザートにお菓子を出すからお腹余裕持たせろよー」


「「「ワーイ!」」」


アンちゃん迎えに行って戻ってくると、既に料理は無くなっていた。


なので、スマホから更に料理を出し、生徒に振る舞う。若いので、ビザや海老フライ、フライドポテトなど油物の茶色一辺倒にしたら、予感的中である。


生徒たちは我先にと料理へ群がり、笑顔で食べている。


……やっぱり人が食べてるの見ると嬉しいなあ。


生徒達は初めての料理に興奮し、友達とコレも美味しかったよと談笑し、賑やかだ。


地球の店でも、学生の賑やかさは変わらないのだと知り、笑みがこぼれる。


誠一が今となっては懐かしき思い出にふけっていると、こちらへ近寄る影が。


アンだ。


「お兄ちゃん!私たちも食べていいよね!」


アンの後ろ、側にはアンと同じほどの背丈の少女が1人。


「ど、どうも、初めまして。わた、私はリエラ・クズノハと言います。」


アンと同じ、獣人の少女。

狐の耳がピョコピョコと落ち着かなげに動いている。

少し緊張しているのが見て取れ、しかし、元気よく挨拶をしてくる。


出来たいい子だ。


彼女、リエラ・クズノハはアンが学園で出来た初めてのお友達である。

ちなみに、2人とも中等部1年Fクラスである。


「こちらこそよろしくね。まだまだ沢山あるから2人ともお腹いっぱい食べてきな」


ただ、


「でも、あんまり面識ない人達と食べるのが苦手なら料理を取ってこようか?」


「え、あの、えーと……」


「私は気にしないよ!」


……流石アンちゃん。今までの経験からちょっとやそっとじゃ動じないよ、この子……じゃなくて。


リエラは少し小心そうな子だ。

年上の、しかも知らない生徒に囲まれたら気になって食べ物が喉を通らないかもしれない。


そう考え誠一は提案してみたが、どうやら杞憂だったようだ。


誠一達がいるすぐ側に料理を乗せた皿が2つ置かれた。

見ると、持ってきたのはココである。


「リエラ。ほら、あの食いしん坊達に取られる前に持ってきたから。友達と一緒にコレ食べなさい」


「あ、ありがとう、お姉ちゃん!」


「お姉ちゃん」とリエラは感謝を言って、アンと一緒に料理に手をつけ始めた。


誠一はそこで遅くながらも、リエラとココの苗字が同じなのに気づく。


「ココ君の妹さんか」


「妹まで招いてくれるなんて、ありがとうございます、先生」


ぺこりと頭をこちらに下げる、ココ。

姉妹そろって出来た子たちだ。


「いいよいいよ。むしろ、こっちこそアンちゃんがお世話になると思うし」


そう言って、誠一は仲良しそうに料理を分け合うリエラとアンの姿を見る。


……友達が無事できて良かったね、アンちゃん。


アンにとって幸先の良いスタートとなったと安堵する。


そして、ふと気になったので、ココに質問をする。


「そうだ。ココ君、君たち2人の苗字"クズノハ"って珍しいよね。何か由来でもあったりする?」


クズノハ、葛の葉。

明らかに和名っぽい響きだ。


「ああ、そのことですか。周りにもよく言われます。何でも私たちのご先祖様が遠く離れた小さな島国からの移民らしくて。その名残だそうですけど……本当の話か分からないんですよね」


ドキリと胸がはねた。

和名の由来が小さな島国。


ここが異世界だと分かっていながらも聞かずにはいられなかった。


「小さな島国……!もしかして、それは日本とかいう名前じゃ!」


「え、えーと……いえ、うろ覚えなんですけど、ニホン?その名前じゃないのは確かです。どうかしました、先生?」


「……いや、ごめん。もしかしたら知ってる所じゃないかと思って。でも、勘違いだったみたいだ」


「は、はぁ?そうですか……」


落ち着きを取り戻した誠一。


いや、当たり前だ。

ここは地球ではない。異世界だ。

スマホでこの世界の地図も見たが、地球とはまるで似つかないのは確認済みである。


……だが、この共通点はただの偶然なのだろうか。


と、そんなことを考察していると、


「なあ、先生!」


「……ん?」


「さっきのプロレスって技教えてくれよ!」

「あ、それ俺も教えて欲しい!他の技もあるんだろ、セーイチ先生」

「俺も俺も!」


幾人かの男子生徒がこちらへ寄ってきていた。


やはり、男子だからだろうか。

派手な格闘技であるプロレスは男の格好の的である。


……確証のない事を考えててもしょうがないか。


「全く男子共ときたら……。先生、アンちゃんはこちらで見ています」


「ありがとう。おっし、それじゃ色々と教授してやりますか!」


自分はアンちゃん達に一声をかけて、プロレスを披露すべく歩いていく。



誠一がプロレス技を掛けているのを片目に、ジーン・カーターは食事に夢中であった。


取り敢えず、全ての品を取っては食べるを三週繰り返し、取り敢えず一呼吸。


「ふう……食った食った」


「ホントに食べたね。3日分は食べたんじゃないの」


「ん?カレンか。そっちはもう食べなくて良いのか?」


「うん。僕は少食だから、もう満足だよ」


そんなんだから体型がスレンダーなんだろうな、とジーンはカレンを見ながら思う。


「それより、ジーンはあっちに加わらなくていいの」


そう言ってカレンは騒がしくなってる方を向いた。


向こう側では先生が色々なプロレス技を繰り出し、その度に生徒達か盛り上がっている。


ちなみに、技を掛けられているのはセシルだ。

理由は皆の多数決である。


「おいっ、お前らズルイだろ!独裁、多数決という名の独裁!断固抗議を……え、何ですか先生?キャメルクラッチ?何それ?……床にうつ伏せで寝て?あ、はいはい。これでいいんでアイテテテテテテテ!痛いっ、極まってます!出る、出ちゃううううう!口から尊厳的なのが出ちゃううううう!主にいうとピッザアアアア!」


そして、次の技へと移行して、セシルが悲鳴をあげるでワンセットだ。


知らない格闘術は気になるが、


「あー……いや、今はいい。それよか今は飯だ」


「まだ食べるんだ……」


カレンは少し呆れたように呟く。


勿論。

あと2周はするつもりだ。


……マジでこの飯旨いしな


ジーンは次の料理を取りに立ち上がろうとしたが、声を掛けられた。


「よっ、お二人さん。楽しんでるか?」


「……先生か」


誠一だ。


見れば騒がしさが消えプロレス講義が終わっていた。



プロレス技は一通り掛け終えたので、セシルを解放する。


セシルは床に横たわりながら、恥ずかしそうに上目づかいで喋る。


「……も、もうダメェ。先生が激しすぎて、足腰立たなくなっちゃったぁ……」


「まだ余裕ありそうだな、セシル。もう少しやるか?」


「すいません。調子こいてたんでマジ勘弁してください」


手の平回転速いなー、と思いつつ辺りを見渡す。


すると、


……あれは、カレンに……ジーンか。


2人が仲良く談笑していたのが見えた。


お邪魔かもしれないが2人とも話したいこともあったので、近づいて声を掛けるとこちらに気づく。


「よっ、お二人さん。楽しんでるか?」


「……先生か」


「どうもセーイチ先生。ご馳走になっています」


カレンがこちらにペコリと頭を下げる。

対して、ジーンは誠一を注意深く観察し、しばらくして質問をしてきた。


「先生は若いけど、学園に来る前は何をしてたんですか?」


「来る前……?主にギルドで冒険者やって、たまに料理を作って周りの人にレシピを広めてたな。料理人志望兼冒険者で、今は縁あって、この学園の教師をさせて貰っている」


詳しく話そうとすると、必ずと言っていいほど変人共の話をしなければならないので割愛。


「まあ、教師になった目的の1つとしては、料理を広めるために来たって感じかな」


「はあ?料理って……料理人が何であんなに戦えるんだよ?」


「あははは……言わないで、俺も分かってるから」


誠一の言葉を聞いたジーンが訝しそうに目を向ける。

まあ、普通の料理人は戦わないよな。


転生前に思い描いていた姿から脱線していることは、重々承知の上である。

ほんと、なんでだろうねー。


少し上の空へと逃げていた内に、カレンも話に加わってきた。


「この料理も先生が作ったんですよね。見たことない料理ばかりですけど、これは先生が考えたんですか?」


尊敬の眼差しを向けてくるが、誠一は苦笑しながら否定する。


「いや、これは俺の故郷のものを作っただけだよ。すごく遠く離れた所でさ。あっちだとありふれていたけど、こっちだと珍しいみたいだね」


嘘は言ってない。

日本はとてつもなく遠いし、和洋中と様々なジャンルの料理がありふれていた。

あのごちゃっと感は、何でもバッチコーイの神道ならではが生み出す光景であった。


しかし、生まれ育った日本のことを思い浮かべながら話すと、やはり米を思い出してしまう。


米。

もう数年も食べてない。

卵かけご飯も、カレーライスも、炒飯も、おにぎりも、カツ丼も。

全て米。米さえあれば、作れるのに。

いと恋しい。

そろそろ日本人の米不足禁断症状が出そうだ。


米よ、どこかに落ちてない……落ちてないよな、そりゃそうだ。


お米トリップに陥りかける誠一であったが、カレンの心配そうな声に呼び戻された。


「ど、どうしたんですか先生?」


「お?ああ、すまん。故郷を思い出してたら、地元の名産品が恋しくなって。米っていう穀物だけど、知らないかな?」


もしかして知ってたりしないかと聞いてみたが、2人とも首を横に振る。


「……まあ、そうだよな。ああ、米よ……お前は一体どこに……米が欲しい」


「……なあ、カレン。米ってヤバい薬じゃないだろうな?どうみても中毒者みたいな」

「シー!ジーン、聞こえちゃうからシィー!」


小さい声で耳打ちし合う2人。


小さい声で何を話してるのかは分からないが、


……距離感近いな、2人。


付き合ってたりするのだろうか、だとしたら甘酸っぱい。

気になったので、


「しかし、2人とも仲いいなあ。もしかして、そういう関係?」


「……?」


と聞いてみるが、カレンは首を傾ける。

そして、ジーンが察したようだ。


「────ああ、なるほど。先生勘違いしてるぞ」


あれ?

距離感近いからそうかと思ってたが、どうやら違うらしい。


まあ、カレンは可愛い子なので話すだけでも思春期男子にとっては華であるはず。


ジーンはカレンを指差して、





「こいつ、カレンは男だよ」






「────────────」


誠一、数秒、思考停止。


……カレンは男。

男。

男っていうと、雄で、野郎で、オトコで、アダムで、つまりはMr、men、やらないか、♂、凸……etc.


……………………究極的に言うと()()()()ということ。


ばっと誠一はカレンを見ると、彼女は、いや彼は恥ずかしそうに、


「はい。よく勘違いされますけど」


肯定した。



「えーーーー!ちょ、おま、えーーー!?」


誠一の叫びに他の生徒達が「なんだなんだ?」と注目する。


だが、気が動転している誠一はそのことに気づかない。


「お、男………男ってあれだぞ。女じゃない生き物だぞ。分かってるか、落ち着けジーン!」


「いや、先生が落ち着けよ」


「男ってアレだ、アレだぞ!息子だ、息子さんがいるんだ、象さん的な息子さんが足下からパッカーンこんにちわだぞ!あの顔でそれが付いてんの!?マジでか!」


「だから、落ち着けって先生」


結構衝撃的な事実に精神が立て直せない。


アレだ。扉開けたらロリコンや全裸モザイクとかゴリラ系メイドとかの天丼変人系統とはベクトルが違う衝撃だ。


未だに信じられずにいるが、それは他の者達も同じらしい。


「まあ、最初はそんなもんだよな」

「俺らもそうだったし」

「懐かしいなあ。クラス全員がそのこと知るまで半年かかったんだよねえ」

「私たちも何で男子トイレの方に行くのかな?って思ってたよね」

「そうそう制服も男子のだから、何でかなとは疑問になってたけど」


半年も気づかれなかったのかい。

というか、クラスのスルースキルが高めである。


しかし、その事実を知っても、尚信じられない。


更にジーンがカレンについて情報を付け足す。


「まあ、この(なり)だし。たまにその事知らない奴から告白されんだもんな」


「ちょっ、ジーン!」


「……マジかー」


まあ、知らなければただの美少女だし。

そして、クラスメイト達がジーンの言葉に促されて情報を小出ししていく。


「この前なんか、ついに後輩から告られてたし」

「それ、1ヶ月前だったか。Bクラスの奴から恋文貰った時くらいの衝撃だな」

「マル秘ファンクラブもあるわよね」

「それ、俺入ってるぞ」「私もー」「あ、そうなん?実は俺も」


「何で皆そんなに僕のこと詳しく知ってるの!?というか、最後の方!僕も知らない事実聞こえたけど!ファンクラブって何さ!」


恐るべし、カレン・ウォーカー。

数多の生徒を虜にし、泣かしてきたのか。

そして、個人情報のへったくれもないなFクラス。

気をつけよう。


「お兄ちゃん。私、お菓子食べたい」


「んー、そうか。よーし、そんなことは置いといて、デザートいくぞー」


「「「はーい」」」


アンちゃんを口火に、切りが良いので誠一がそう言ってデザートを机に並べると、クラスメイト約全員がデザートの方へ向かう。


「待って!そんなことって!僕にとってそんなことじゃ片付けられないよ!」


カレンはデザートを取りに行った皆に抗議の声を上げてついていく。



流れ弾喰らわない為に遠くから見ていたココは一言。


「相変わらず騒がしいわね」


そう呟いて、アンちゃんと共にデザートを取りに行く妹のリエラの後ろ姿を見守るのであった。

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