1、慣れってすごい
新章スタート!
そして短いです!
料理人は異世界へ渡るです執筆から気付けば2年。
ここまで続けてこれたのは、長い間付き添ってくれた読者の皆様のおかげです。
これからも粉骨砕身で頑張りますので、よろしくお願いします。
至らない点などあれば感想にビシバシ叩きつけて貰っても構いません。
馬車に乗って揺られること2週間。
その間、俺はこれからの学園での予定を確認し、アンちゃんは俺が作ったけん玉や日本昔話の絵本で暇つぶしをしていた。
そして、そろそろ目的の地に着こうとしているようだ。
アンちゃんはその情報を聞くと喜んでいた。
流石に、2週間ずっと変わりばえのない流れる景色に、狭い空間で過ごすのは苦痛だったらしい。
「ねーねー、お兄ちゃん!もうすぐ着く所ってどんな所なの?」
「ん?ああ、今から行くのは学門国家ソピアだよ」
「学門国家?」
学門国家ソピア。
魔法開発、研究に力を入れている国である。
また、ソピアには多くの学園があり、その学園を主軸に街が形成され、学園都市と呼ばれているらしい。
俺はアプリ【異次元ポケット】を起動させ、ウェルナー陛下から渡された書状を取り出す。
クロス王国の国印が押された推薦状である。
これをソピアの入り口にて検問する衛兵に見せれば、面倒なことをすっ飛ばして国王に会えるらしい。
つまりは、この書状がとてつもない権能を持っているわけだ。簡単に言えば、水戸黄門の家紋みたいなものだ。
そんな訳で、検問の為に長蛇の列に並ばずに、書状を見せて門を潜るのであった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「お兄ちゃん、ここはどうするの?」
「そこは名前を書くんだよ。で、ここには出身地を書くんだ」
アンちゃんは教わった通りに、必要な書類に記入をするのであった。
俺は慣れたもので5秒もかからずに記入欄を埋め、衛兵のおっさんに渡している。
「これでいい、お兄ちゃん?」
「うん、OKだ」
「ところで、お兄ちゃん。ひとついい?」
「何だい、アンちゃん?」
アンちゃんが首を傾け、俺に聞いてくる。
自分が分かる範囲で全力で応えるとしよう。
アンちゃんは周りを見渡しながら言った。
「・・・何で私達、留置所で拘束されてるの?」
俺も周りを見渡す。
隔離されたかなような殺風景な個室、俺らの監視でか、衛兵の人達が四方に囲むように立っている。
「うん、それ俺も知りたい」
俺は目の前の少女にそう返すしか出来なかった。
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俺達は入国するべく、得意様・緊急時用の別口に立っていた衛兵に書状を見せたところ、
「すみませんが、署までご同行お願いできるでしょうか」
と、謝罪の言葉を述べられながらもお前達を絶対逃さないオーラを浴びせられた。
で、今に至る。
言っておくが此方に身に覚えがない。断じてだ。
正規のルートで来てるし、自動車を使って混乱も起こしてない。スリに会って暴行を加え気絶させてもいない。
なのに、現在、軟禁状態。
これいかに。
「てか、また留置所か」
旅する度に行くハメになってるな。
ははは、思わず泣いちゃいそう・・・・・・あれ、何でだろう。前が霞んで見えないや。
俺は手で目元を覆うと、何か熱いものが流れ、手の平を伝い落ちていく。
その誠一の肩をポンポンとアンちゃんが優しく慰めるかのように叩いてくれた。