3、場違い
短くてスミマセン。
皆さん、【自由落下】についてご存知だろうか。
物体が引力だけによって地面に引き寄せられる現象だ。
例えば・・・例えばの話だが、もしも物体を上空4000mから落とした場合どうなるか。
答えは簡単。
時間が経つにつれ、重力によりますます加速する。
地面に達する直前、物体の達する速度はおよそ時速200km。
正確には、空気抵抗とかいろいろな要因で速度が変わるだろうが。
・・・まあ、長々とこんな事を説明して、何が言いたいかというと、
「死ぬううううううううううううううううううううううううううう!」
(何か、何かないか!?)
異世界でのファーストキスの相手が地面とか、マジでシャレにならねえ!
どうにかこの状況を打破するべく死ぬ気で思考する。
「そうだ、自分には【幸運】があったはず!」
神様からもらった能力だ、それでなんやかんやで無事になるはずだ。
良かった、これで一安心だ。
「ふー、良かった良かった・・・・・・って、なわけねえだろうが!」
この状況、運がいいだけで助かるわけがない。
そもそも幸運だったら今の状況になってねえよ!!
現実逃避してる場合じゃねえぞ、俺のバカ野郎!?
あまりのストレスのせいで現実逃避にノリツッコミする誠一。
何か身を守るものは何かないのか、何か、何か・・・
問題を解決しようと、まるで某アニメの未来の猫型ロボットよろしく、慌てふためく俺。
だが、無慈悲にもその時は迫り、
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!アベシッ!?」
「ゴゲブリェ!?」
ズドーン!
一瞬変な声が聞こえた気がするが、凄まじい音と共に誠一は意識を失った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「・・・・・・・・・ハッ!?」
しばらくして、誠一は意識を取り戻した。
目覚めたばかりで、呆けていたが、空高くから落ちてきたことを思い出し慌てて怪我がないか調べる。
料理人の命である腕とその他の部分を確認するが、これといった外傷は見当たらない。
あの高さで怪我がないのは良いことだが、逆に不安になってくる。
「何故無事なのか訳が分からないが、良しとするか」
儲けもんだと思いながら、改めて誠一は自分の身を確認した。
まずは肉体だ。あの細くなった腕に筋肉が戻り、出ていたお腹が凹みバキバキに割れていた。
白髪に染まっていた髪も、黒くなっている。
ハナミ様は20歳ぐらいになるって言っていたな、あと肉体改造とも。
「生き延びたのも、改造のおかげなのか?」
その通りならハナミ様に感謝するべきなのだろうが、感謝したくないな。
それ以外に目立った肉体の変化は特に無いか。
服装はジーンズに安っぽいTシャツとパーカー。
庶民感が満載である。
前世の服なのか・・・いや、神様が作ったやつだ、間違いなく。
だって、内側のタグに『カミクロ』て書いてあるし。
無駄に凝ってんな、神様ってこんな服着るのか。
そんなこんなで服に少し感心をしていると、ズボンのポケットに何か入っているのに気づいた。
「・・・?何だこれ」
出てきたのは2つ。
1つは銀色の光沢を放つ金属で作られたカード。
何も書いてなく、凹凸がなく真っ平らだ。
もしかしてこれが身分証明書か?
「まさか不良品じゃないよな」
転送場所のヘマを考えると、充分あり得る。
不安になりながら、もう一つを確認すると
「スマートフォン?」
異世界に場違いな現代技術の結晶が出てきた。