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15、見さらせ!4000年の歴史を!

誠に遅れて申し訳ありません!



あらすじ

部屋に閉じ籠もってしまったリズ王女をなんとか出させようと試行錯誤?する面々と、ツッコミに回るメイドと主人公。

そして、誠一がある提案をする。

その作戦とは?

【リズ・クロスSide】


誠一たちが騒いでいたのとは、向かって逆側。つまりは、クロス王国の王女、リズ・クロスの部屋では、只今現在リズ王女が怨念を込めながら行き場の無い怒りを近くのクッションにぶつけていた。


「殺す。あのクソガスパー、後で必ず殺す」


あの闇は全て抹消したと思っていたのだが。アイツめ、こっそり隠し持っていたわね!


暫しクッションを殴り続けていたが、すぐに息があがってしまう。

あの執事もだが、この自分の体も本当に憎たらしい


そもそも別に今すぐこの部屋から出て、あの憎たらしい執事の顔面を殴るのだって訳はない。当たるかどうかは置いておいてだ。


私が部屋に閉じ籠った理由は衝動的なものが原因で、しかも苦笑か嘲笑を浮かべてしまうような、それほどまでにしょうもないものだ。

最初はほんの二、三日のつもりであったのだが、私が訳あって疲れていて寝ているちょっとの間に、思いの外に話が大きくなってしまい…………現在に至ったわけである。


それにしても、いきなり静かになったわね。諦めたのかしら。

まあ、そっちの方が助かるけど。

お父様とお母様には迷惑を掛けてしまうが、しばらく我慢である。

今更だが、半ば勢いだけで行動したことを反省している。


どうやって、そしてどのタイミングで出るべきかと頭を悩ます。


だが、そんな思考はすぐに遮られる。


それは突然であった。


髪が(なび)いた。

閉めきって風など流れるはずがない部屋にいるのにだ。


そのことを不思議に思っていると、


グルルルルルルルルルゥゥゥゥ……


お腹が今までで聞いたことのない音をたて、そして間髪入れずに空腹にズドンと突き刺さる深い香りが鼻を通り抜け、脳を覆い尽くした。


(脳が認識するよりも速く、本能的にお腹が鳴ったって言うの!?)


そのあまりの香りに、思わず倒れそうになる。


「?!一体なに、この香りは!?」


すると、また髪が靡いた。そして、あの香りが届く。

風で香りを飛ばしているのか。でも、どこから?


「こっちですよ、リズ王女」


私の疑問に答えるかのように、若い男の声が聞こえた。

なかば混乱しかけていた私は反射的に声のした方を向いた。

視線の先には、この部屋の扉が。


そうか。香りの根元(こんげん)は扉の向こうね。

でも、これは何の料理なの。

短いとは言えど、生まれてこのかた様々な料理は食べてきたと自負している。

だが、こんなにも深く、濃密な香りは嗅いだことがない。

……知りたい。この料理の正体を知りたい。


気づけば、その匂いへの元へと向かうように無意識に扉の方へと向かっていた。


しかし、扉の鍵に手をかけたところで、我に返る。

私は慌てて扉から離れ、正直な自分の腹を誤魔化すために、急いで非常食を口にする。


それが逆効果であった。


「…………違う。私が欲しいのは、コレじゃない」


それを食べれば食べるほどに、自分が今求めている味と違う。その思いが、姿の見えぬ料理への渇望が、浮き彫りにされる。むしろ、この匂いの力が増し、腹の奥底から沸き上がる食欲への誘惑が私の頭を埋め尽くす。


「ああ…………もう、ダメ」



遂に、謎の匂いに耐えきれずに、己の負けを認め扉を開放した。



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


俺の出した解答はいたって単純(シンプル)


『食べ物で釣る』


ただこれだけである。


この解答を見た面々は、「お兄ちゃん、流石にそれは」「無理じゃろ」「あんな図体の姫様でも失礼ですよ」「そうです。見た目と違って意外に結構凄いんですよ」と、口を揃えて無理だと否定した。

……後半二人は姫様を庇うっていうか、むしろボロクソ言ってた気がするが。


そんな彼らの前に、俺は取り出した壷を用いて作戦を実行した。


佛跳牆(フォーテャオチャン)



今俺が抱えている壷に入っていた料理の正体。そして、今もこの場に漂う人を惹き付ける匂いの発生源である。


佛跳牆とは、山と海の幸をふんだんに使った福建の伝統的な高級スープである。ナマコやフカヒレなどの高級海産乾物類、朝鮮人参にクコの実など野菜や漢方食材、数十種もの食材を烏骨鶏や金華ハムなどを長時間炊いたスープとともに壺に入れた後、香りを逃さないために薄紙や蓮の葉を使い密封し、8時間から1日の長時間蒸して仕上げる、手間隙と金がかかる贅沢尽くしな逸品なのだ。


その香りは絶大で、そのあまりにも美味しそうな香りに修行僧ですら寺の塀(牆)を飛び越えて来る、とまで言われ、料理の名前の由来になる程である。


俺は四苦八苦、試行錯誤しながら、やっとこさ造り出すことに成功したのだ。

日本にいた時でも、作ろうとすれば軽く材料費で十万円は飛ぶから、この料理を作るのは滅多に出来ない。だが、異世界では、アホみたいに強化されたおかげもあって、自力で食材を入手し、格段に安値で仕上げることができた。


特にギルドの依頼で海に行った時は運が良かったな。海がモンスターに荒らされ漁が出来ない、と海近辺の依頼で行ったのだが、アワビとかナマコ(正確にはそれに近似した生物だが)が取り放題だった。漁師さんに聞いたところ、見た目が気持ち悪くて誰も食べないらしい。まあ、地球でもサザエなどの巻き貝をゲテモノ扱いする国もあるしな。


そう言えば、海潜ってるときに山のようにデカイ鮫と出くわしたな。名前は確か、リーガルメガロドン、だったか?始めは好戦的だったのに、最後の方ではぶるぶると体を震わせて逃げていってしまった。物凄いスピードで取り逃がしてしまったせいで、ヒレが1つしか取れなかったが。


まあ、そんなこんなで、完成させた誠一印の佛跳牆。

日本で再現しようものなら70万は軽く下らないだろう。

そのかいあって出来は最高だ。ほんのりと色が付いただけで、皿の底が見えるほど透き通ったスープ。しかし、見た目からは想像もできない程に口一杯に広がる凝縮された海と山の幸の旨み。


後でチビチビと少しずつ楽しもうと思い、出来上がってすぐに時間停止の魔法をかけ大切に保管しておいたのだ。

少し勿体無いが、今回のために大盤振る舞いすることにした。


あとは簡単。

その香りを、俺の新しい魔法【フレバーボール】を使って、リズ王女の元まで運んだのだ。


説明しよう!フレバーボールとは、料理の香りを閉じ込めるだけでなく、料理に被せることで保温効果を持ち、埃にゴミなど掛からなくなるなど、いわゆる蓋の役目をもつ、俺特製の魔法である。


扉が閉められているといっても、隙間が無いという訳はない。

フレバーボールをその隙間から掻い潜らせ、リズ王女目掛けて放ったのだ。


僧があまりの匂いに塀をも飛び越えるほどの香り。

しかも相手は育ち盛りで食欲旺盛な上に、この一週間は非常食だけしか口にしていないときた。


名は体を表すと言うが、四千年の歴史によって産み出された兵器(りょうり)は見事にリズ王女との壁を突き壊し、


「ズズズゥゥゥ、おかわりを頂戴!」


見事に城は陥落した。


…………したのだが、


「お兄ちゃん、おかわり!」


「んぐんぐ、ぷはぁ。ワシもじゃ」


「これはリズ様じゃなくても落ちますね。すみません。もう一杯頂けますか?」


「ガスパーさん!少しは遠慮しないと。あ、少し多めに盛って貰えますか」


「「お前が言うな!」」


「ふむ。大変美味ですね」


「メ、メイド長!?いつの間に!」


「ズズズゥゥゥ、おかわりを頂戴!」


余りの香りに、他の(はら)まで落ちてしまい、我慢できる筈もなく。結果、壺一杯あった筈のスープは瞬く間に消えてしまった。



名は体を表す、と言うが、それが必ずしも善い意味になるという訳ではない。

姫様釣れたは善かったものの、鯛を釣ると言うよりは、餌が鯛で鮫を釣り上げてしまった気分だ。しかも群れの鮫。


「とほほ、あとで飲もうと思ってたのに」


「ズズズゥゥゥ、おかわりを頂戴!」


「リズ王女、もう勘弁して下さーい!」


らしいというか、やっぱりというか、全くもって最後がしまらない誠一であった。

~教えて、お料理コーナー!~


Q&A:「Qと」「A先生の」


「教えて、お料理コーナー!」


Q:最近ここよりも時給の良いバイトを探すQです


A:いつも相棒という名のヒットマンに命狙われるAでーす!てか、開始そうそう飛ばすねQ君!驚きすぎて、私死ぬかと思ったよ。心臓止まって


Q:ええ、ここのバイト、まわりで五月蝿くて、油以上にしつこい一匹の大きな虫がいるんですよ。本当に驚きですよね


A:おっと、出会って五秒で言葉のナイフ食らって私のメンタル崩壊す・ん・ぜ・ん!でも、私頑張る。お前の全てを受け止めてやるよ、オールバッチコーイ!


Q:あ、分かりましたー。じゃあ、今から言葉じゃなくて本物のナイフ投げるんで、全部体で受け…………


A:スミマセン。やっば無理です。体も心もボロボロなんで勘弁してくださいお願いします


Q:最初からそうしたらいいんですよ。じゃ、さくっといつものやりますよ



Q:タコって特定の国だとゲテモノ扱いなのは何で?


A:ある宗教の教えの1つに、鱗の無い魚(海に住む生物)は口にしてはいけないというものがあり、タコは食用としてはいけなかたんだ。

こうして、その宗教の信者の人達は口にしないでいると、その信者の多い地域全般では次第にタコが「食べないもの」と認識されていき、この結果、『不気味な生き物』というレッテルを貼られてしまったんだ。あまりの不気味さからか、タコのことを「オクトパス」ではなく「デビルフィッシュ」、つまりは悪魔の魚と呼ぶところもあるとか。

因みに、タコを英語でオクトパスと言うのは、古典ギリシア語で「8本足」の意味である「Octopus」からきているんだよ。




A:……ところでQ君

Q:ん、なんですか?

A:『教えて、お料理コーナー』辞めない、よね?

Q:なんすか、気持ちの悪い。大の男がそんなこと言わないで下さいよ

A:Q君、Q君

Q:もー、何ですかさっきから

A:Q君、私男じゃなくて女だぞ

Q:………………え?


Q&A:………………(シーン)


A:ては、今日はここまで!また、次回お会いしましょう!

Q:えええええええ!?Σ(Д゜;/)/

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