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11、勇者の遺物

あっと言う間に時間は流れて、4ヶ月もの月日が流れた。


夏の姿はすっかり消えてしまい、町は秋に模様替え。


しかし、風景は変われど変わらぬ物もある。


「ほいほいほい。ほれ、猛臭玉と爆音玉をしっかり見分けんかい。目印あるじゃろ。猛臭玉の方だけを魔力で補強しながらキャッチせんと破れて悪臭が漏れるぞ」


「目印って言ったって米粒ぐらいの大きさでしょ!解りづらい!」


「コメツブが何かは知らんが、余裕ありそうじゃし鉄アレイも追加するぞ」


「俺はハットリ君かッ!?」


いつもの誠一作の異空間。

そこで今日も俺はいつもながらの鍛練に励むのであった。



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「大分マシにはなったの。と言っても、ギリギリBランク冒険者に手が届いたかどうかという程度じゃがの」


「あんなにやって、そこですか」


「馬鹿タレ。むしろ戦闘の才能ないセーイチがここまで来れたのが奇跡じゃよ。お前さん、始めの頃は剣の握り方すら知らなかったではないか。ワシに感謝をせい、感謝を」


ドヤ顔で上から目線で言われて少しムカついたが、その通りなので言い返せない。


「誰かと戦う時は、必ず鍛練でやってるように負荷を掛けろ。バレたら大変じゃしの。特に聖王国に関わる者には決して話すでないぞ」


「聖王国?確か四つの国の中で一番小さな国でしたっけ。どんな国なんですか?」


「宗教大国じゃよ。国民全員が同じ宗教を崇める信者での。まともな信者もおるんじゃが、あれの上層部共は自分の富のことしか考えぬ本当の屑での。悪い噂が絶えん」


……驚いた。

ベルナンさんがこんなに嫌悪感を(あらわ)にするなんて。

心底嫌いなんだろうな。何かあったのかね。


「そんな国が良く続いてますね。反乱とか他の国からの粛正とか無いんですか?」


「勇者の遺物のせいで下手に手を出せんのだ」


「何ですか、その勇者の遺物って?」


一応勇者のカテゴリーに当てはまってしまう俺にとって、聞くからに不吉だ。

そんな俺の疑問にベルナンさんから解答が返ってきた。


「そのままの通り、過去の勇者の兵器に武具などじゃよ。勇者の血族にしか使えなかったり壊れておったりで、大半がガラクタで終わるんじゃが。研究を重ねて、はたまた偶然で、使えてしまうんじゃよ。絶大な威力を持った物がの」


「それを大量に独占しているのが聖王国と。しかし、そんなもので他の国を牽制できるものなんですか?」


確かに神様から貰ったチートな能力を持つ勇者がヤバイのは分かるが、その勇者が使っていた武器ひとつでそんなに影響を与える物なのか?


いまいちスケールの掴めない俺だったが、ベルナンの次の言葉を聞きそんな余裕は吹き飛んだ。


「一度、聖王国に数3万の魔族軍が攻めて来たことがあっての。その際に、聖王国がとある小さな筒の形をした勇者の遺物を使ったんじゃ。その結果、そこら一帯の地形が変形し、魔族軍の半分が消滅した。数秒にも満たない内に」


「は?…………本当なんですか?」


耳を疑うような話。

しかし、ベルナンさんの顔からして真実のようだ。


「マジじゃよ。まあ、何回も気軽に使える代物では無いらしくての。しかも、その勇者の遺物を使った後に不完全だったのか暴走し、聖王国側にも多少の死者がで出たそうじゃよ」



「……聖王国は勇者の力を喉から手が欲している。だから、聖王国に気を付けろと」


「ちゃうちゃう。お前さんが聖王国にキレて国滅ぼさないかが心配なんじゃよ」


「そっちかよ!?」


俺じゃなくて聖王国(そっち)の心配かい!

てか、国を滅ぼすとかどんだけ危険視されてんの、俺。


「だって、お前さん。ワイバーンの時にしでかしたじゃろ」


「………………」


どうしよう。思ってたよりスゲー正論で言い返せない。

そりゃ肉体若いけど精神年齢70歳超えてるのに、衝動に任せてあんな事しちゃったけど。

因みに後悔はしているが、わりかし反省はしていない。


まあ、取り敢えず言い返すことにした。


「いやいや、流石に俺でもそんなことしませんよ!絶対に!」


「えー、信用ないわー。というか、お前さんなら本気出せば山ひとつどころか、星ひとつ壊せるかもな」


「流石にそれは!…………ない、筈です」


「冗談で言ったのに、怖い解答が返ってきたんじゃけど。え、マジで、出来ちゃうの?」


自分の本気がどこまでの物なのか、底が分からない。

試そうにも試せないし。てか、俺も怖いからやりたくない。


俺はゴホンと咳払いをし、話の話題を変えにかかる。


「分かりました。聖王国には十分気を付けます。そう言えば、鍛練の前に何か話があるとか言ってましたけど、何があったんですか?」


いつもの鍛練の前にベルナンさんがそのような事を言っていた。

ベルナンさんは大した事でもないので鍛練の後に伝える、と言っていたが一体何なのか?

ギルドからの依頼だろうか。


「おお。そうじゃったそうじゃった。ええと……これじゃよ」


俺の言葉にベルナンも思い出したらしく、俺に取り出した一通の手紙を渡してきた。

手紙に書いてあるのは俺の名前と、見たことがない紋章だけが記されていた。


「何ですか、これ」


「セーイチ宛の手紙」


「いや、それは分かります。この手紙、送り主の名前が書いてませんよ。誰から送られてきたんですか?」


「何を言っとるんじゃ。ここにはっきり印されとるじゃろ」


そう言ってベルナンは手紙に書かれた紋章を指さし、


「ほれ、クロス王国の紋章。つまりはウェルナーからじゃ」


あんた、大した事ではないとか言ってたが………それ、結構大事な内容だろ。

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