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5、問題児

大変、更新が遅れて申し訳ありません。


いつも読んで頂きありがとうございます

これからも粉骨砕身で頑張ります!

広い厨房の中、誠一はリズ王女専属執事のガスパーに相談をしていた。


「やっぱり、王族ですからコース料理などの方がいいですか?」


あんなにフレンドリーに接するとはいえ、相手は王族。

失礼が無いようにしなくては、首が飛んでしまうかもしれない。


少し心配になる誠一であったが、ガスパーは軽く苦笑を浮かべ返答した。


「別に大丈夫ですよ。むしろ、以前に食べたセーイチ様の祭での品のような物が好まれますね」


「ピザとか肉まんのような物がですか?」


「はい。我らの王は格式張ったのより、手軽な物を好みます。まあ、他の国王に同じ様な事をすれば、叱責を買うでしょうがね」


「そうですか。それを聞いて安心しました。他には何か好みとかありますか」


料理の参考にしようと誠一は質問を続けた。

ガスパーはアゴに手を当て思案し、口を開いた。


「そうですね……強いて言うならば、大きな尻ですね」


「いや、あんたの女の好み(性癖)じゃなくて。王様方の好みだよ。話の流れで解るでしょ」


「ああ、すみません。陛下は胸の大きな御方が好みだそうです」


「王様の好み(性癖)を言えって意味じゃねえよ!料理、料理の話!」


「あはは。冗談ですよ、冗談。それと、私に敬語は不必要ですよセーイチ様。今のような感じでお願いします」


ガスパーのその言葉を聞いて、誠一はガスパーが自分の為に冗談を言ったのだと気づいた。

どことなく食えない執事である。


「分かった。その代わり、ガスパーも俺に敬語はいらない……というか、『様』付けで呼ばれると慣れてなくて背中が痒くなる」


「ははは。分かりましたよ、セーイチさん」


初めはぶっちゃけまくって大丈夫なのかこの人、と少し疑っていたが、それは杞憂だったらしい。

自分の為に冗談を言――――――――


「いやー、私もこっちの方が楽なんで助かります。あ、姫様達には秘密でお願いしますよ。バレると怒られるので」


…………もしかしたら、自分(ガスパー本人)の為に言ったのではないのだろうか。

やっぱり食えない執事である。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


時間短縮の為、食材のの確認をしつつ、ガスパーから王様達の好みを聞いていた。


「バース様は未知な物、未だ食べたことが無い物に惹かれる挑戦(チャレンジ)精神溢れる御方ですね。若い頃から旨い物を追い求め舌が肥えてます……調味料などスパイスはあっち、パンはそこです」


「なるほど、だから祭の時も俺の店に寄ったのか。お、醤油もある。流石は王族御用達の屋敷、種類が豊富だな。ところで酒はあるか?」


「ええ、勿論ありますよ。話をもどしますね。ウェルナー陛下に王妃は庶民的食事を好みます。陛下など、こっそりとダンテ隊長を含めた護衛同伴で城を脱け出して、知り合いが経営する宿屋で食事をとってますよ」


「変わった王様だなぁ。そもそも、よくダンテさんがウェルナー陛下のその行動を許したな?」


「そうでもしないと、1人で抜け出そうとしますから。それなら許可して護衛付きの方がマシだと」


「あぁ、なるほど」


ガスパーの話を聞いた誠一は頭を悩ますダンテの姿が容易に想像できるのだった。

ダンテを不憫に思いながらも、ガスパーとの話を続けた。


「そして、リズ様の好みは…………肉ですね」


「どストレートだな、おい」


「まったく、あんなに食べて早死にしないか心配ですよ。ハハハ」


「俺はお前が不敬罪で首切られないか心配だよ」


何でこの人が王女の専属執事なんだ?人員不足なのだろうか。


「それで肉はどこに?」


「こちらですよ」


そう言われ案内されたのは、大きな扉の前。

ガスパーが扉に手を掛け開けると


―――――開けた部屋の中から冷気が漂ってきた。


「…………!これは一体!?」


「驚きましたか。部屋の奥を見て下さい」


驚く誠一にガスパーは笑いながらタネを明かした。

ガスパーが指し示す先にはただの壁があるのみ。

――――いや、誠一は壁を凝視し気づく。


「壁中に氷が張ってあるのか?」


「その通り。魔法使いが氷魔法で定期的に壁を氷で被わせ、室温を下げているんです。こうする事で肉、また色とりどりの野菜・フルーツの鮮度を保ちます。この館の一番の目玉でもあります」


「なるほど(地球で言う所の『氷室(ひむろ)』みたいな物か)…………もっとこれを町に普及させることはできないのか?」


氷室とは、冬にできた天然氷を夏まで蓄える為の(むろ)である。

氷室の歴史は大分古く、日本ではおよそ1500年前の奈良時代には既に使われていたとも言われている。

因みに、昔、日本では氷が溶けにくいように、おがくずなど使用していた。


誠一はこれを世間に広められないかを問う。

未だにこの異世界には料理に役立つ技術が少ない。

それが実現出来れば、料理におおいに貢献するであろう。


対するガスパーの答えは、


「ん~、無理ですね。まず氷魔法の使い手は少なく、多大な魔力も必要とします。もし使えたとしても、定期的な魔法の行使の為に術者を束縛してしまうので難しいです。まあ、だからこそ、この館の売りなんですがね」


「そうか………………。やはり、俺が―――――」


ガスパーの言葉を聞いた誠一は気落ちしながらも何かを小さく呟いた。

不思議がるガスパーが誠一に声かける。


「セーイチさん?どうかしましたか?」


「ん、いや別になんでもない。ところで奥に入ってもいいか?」


「ええ、大丈夫ですよ」


ガスパーの許可を貰い、誠一は部屋に踏み込む。

部屋の中は広く、様々な食材がそこにはあった。


リズ王女のリクエスト通り、誠一は料理に使える肉を探した。

そんな中、ある肉に誠一の目がついた。


「ん?あれは………ワイバーンじゃないか。しかも、こんなに大量に」


「ああ、それは今回の事件で討伐されたワイバーンの肉です。処理に困ってこの有り様です」


誠一の目の前には大量のワイバーン肉があった。

それを見るガスパーは渋い顔をしていた。

その理由(ワケ)は、


「勿体無いからと言って保存したものの、()()()()()()、食べれたもんじゃありませんしね。まったくどうしたものやら」


そう言い、ガスパーはタメ息を吐く。


ガスパーの言う通り、ワイバーンの肉は硬い。

味は悪くないのだが、その硬さ故に好まれて食べられず、食用として市場にほとんど出回ることはない。

誠一も初めはその事を知らずに口にし、あまりの硬さに驚いたものだ。


その問題の肉を見た誠一はおもむろにあの食材を探した。


「なあ、ガスパー。色とりどりの食材があるんだよな。じゃあ、―――――もあるか?」


「…………?ええ、有りますけど。作るのは肉料理だったのでは?」


「ああ、そのつもりだ」


誠一の頭の中には既にメニューが出来上がっていた。


気を抜く事ができない。

相手は王族、そして何より自分にとってのチャンスだ。


求めていた物を見つけた誠一はガスパーの方を向き、笑みを浮かべ宣言した。


「俺は、コレとこの問題児(ワイバーン)を使って料理を作る」


誠一の戦い(料理)が始まった。


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