4、姫、参上!
粉骨砕身で頑張ります!
ウェルナー陛下との会話を遮り、執事服の男性を引き連れて部屋に入ってきた人物。
俺はその人物から目を離せずにいた。
先程、入室してきた時の口ぶりから察するに、目の前にいる女性はウェルナー陛下の娘――つまりはクロス王国の姫なのだろう。
よく見れば、王妃の面影がある。
ルビーのような輝きを放つ大きな瞳。
実年齢をしっかりとした立ち振舞い。
服を押し上げる大きな胸。
黄金色の輝きを放つカールされた髪。
その姿を目にし自室呆然としていた俺はベルナンさんとレヌスさんと顔を合わせて、ヒソヒソと話を始める。
「なあ、レヌスさん、ベルナンさん……」
「なんじゃ」「どうしたの?」
「あの女性は王女、つまりは姫様だよな……」
「「ああ」」
二人は誠一の言葉に、首を縦に振って肯定する。
「姫様なんだよな?」
「「ああ」」
「ええと、その……」
「幻術の類いじゃないぞ」「大丈夫、現実よ」
「じゃあさ……」
俺は一旦そこで言葉を区切り、改めて姫様の方を向く。
そこにいた姫様は――――
「姫様、とても太ってますよね」
「「ああ」」
そう、クロス王国の姫はなんと言うか、その……………………………………とてもぽっちゃり体型であった。
部屋に現れたリズ王女はウェルナー陛下の横に座り、誠一と対面している。
やっぱり、王女が太っているのは見間違いでは無いらしい。
ファンタジーな物語に登場する『姫』と言えば、美貌の持ち主と相場が決まっている。
なのに、予想外のメタb……太めな体型。
なんだろ、これ。なんか俺のファンタジーだけ別物なんだけど、呪われてるのかね。
さっき王女がソファーに座った時なんか、ふうぅぅぅぅと深く息を吐いていた。若い女の子が出していい声ではないだろ、あれは。
現実は常に無情らしい。
そんなことを考えている内に、ウェルナー陛下は姫様の紹介を始めた。
「紹介しよう、私の娘、リズ・クロス。そして、娘の専属執事のガスパーだ」
「自分はサ、ではなく、セイイチ・サワベと申します、姫殿下」
ウェルナー陛下の紹介に執事のガスパーは頭を下げる。
誠一は目の前の姫様に敬語で挨拶をすると、リズ王女は言った。
「私も父様達のように敬語はいらないわ。その方が気楽だし。それに、ベルナンの知り合いなら尚更よ」
「あぁ……姫様までそんなことを」
俺に敬語はいらないと言いながらも、どことなくその座っている姿からは気品がある。太っているのに。
リズ王女もウェルナー陛下と同じく寛容のようだ。流石は親子。
……ダンテさんはそれについて苦労しているようだが。
しかし、ベルナンさんの知り合いだからとはどういう事だ。
気になった誠一はウェルナー陛下達に聞いた。
「あの~、ベルナンさんとはどういう関係なんですか?」
「なんだ、ベルナン。それも話してないのか」
ウェルナー陛下に微かに呆れた顔を向けられたベルナンは誠一に軽く説明する。
「大した事では無いから言ってなかっただけじゃよ。昔からの古い付き合いで、事件が起きてそこで互いに知り合ったんじゃ」
なるほど、そんな事があったのか。
しかし、一国の王様とここまで親しくなるとは、過去に一体何があったのか。
「昔、ウェルナーをちょこっとぶん殴ったりしただけじゃ」
「本当に何やってんだよ、アンタはッ!?」
王様を殴ったって、その事件の加害者だったんかい!
……本気で気になるな。
誠一が詳細をベルナンに聞こうとした時、またもや話はリズ王女によって遮られた。
グルルルゥゥゥゥ
リズ王女から響く野太い腹の虫の音。
そして、寸分違わずに外から時を知らせる鐘の音が誠一の耳に届いた。
「あら、もう12時。御飯の時間ね」
(正確すぎだろ腹時計……)
リズ王女の才能に戦慄しながらも、誠一は微かに心が踊っていた。
王族のランチ。一体どんな物なのだろうか。
出てくるであろう料理に思い耽っていると、ウェルナー陛下が微笑み誠一に言った。
「では、セーイチ君。昼食を頼む」
「……え?」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
現在、ただっ広い調理場に誠一は立っている。
地球にいた頃は自分の店の小さな厨房で働き続けた為、どうにもこの広さが落ち着かない。
しかし、気を引き締めなければならない。
何故なら、
「まさか異世界来て半年と足らずに、王様に料理を振る舞うことになるとは」
最初は流石に恐れ多くて断ったが、ウェルナー陛下に説得されて今に至る。
何故ウェルナー陛下が俺に昼食を作らせるのを提案したかと言うと、
『バースが持ってきた祭の土産の品で誠一君の料理があってね。見たことが無い上に、頬が落ちるほど美味さだったじゃないか。娘のリズが気に入ってね』
だからまた食べたい、とのことらしい。
その話を聞いたダンテさんが「あれ、私それ知らないのですが?」「私だけ食べていないのですが」と言っていたが、皆さんスルーだ。俺も申し訳ないと思いながらも、忙しいのでスルーした。
因みにリズ王女の昼食のリクエストは、
『お肉が良いわね、ガッツリと』
女の子が頼む物じゃないだろ、普通。
そんな心の中でツッコミを入れている誠一に声が掛けれる。
「そちらの部屋の方に食材があります。どうぞ、ご自由に御使いください」
「あ、はい。ありがとうございます……ガスパーさん」
「いえいえ、姫様やバース殿から手伝えと仰せ使われたので気にせずに。何かあれば、遠慮なく申し付け下さい」
姫様専属執事のガスパーさんが俺と共に来ていた。
使い勝手が分からないからだろうとウェルナー陛下が付けてくれたのだ。
しかし――――
誠一はガスパーの方を向いて言った。
「良かったんですか?俺のせいで姫様から離れてしまいましたが」
「御心配なく。今は代わりの者が付いており、姫直々の御命令で動いているので。それに、あの部屋に居れば安全ですし」
そして、ガスパーさんは、一拍、間を開けて、
「まあ、本音を言えば、誠一殿のおかげで姫様の面倒臭い世話から離れられて嬉しいので、お気になさらず。むしろ感謝しています」
「ぶっちゃけ過ぎだ!」
笑顔で誠一にぶっちゃけた。
………………クロス王国、キャラ濃すぎだろ。
★教えて、お料理コーナー!★
Q.『すき焼き』は何で『すき焼き』という名前なの?
A. 『すき焼き』の語源は諸説あって、例えば、江戸時代、農夫達が仕事中に腹が空いた際に、鋤という農具を鉄板の代わりにし、魚や豆腐を焼いて食べたことから『鋤焼』と呼ばれたなど。また、薄く切った肉のことを昔は『剥身』と言って、そこから『剥き焼き』という説もあるんだよ
Q.へえ~!為になるなあ
A.また1つ賢くなったね、Q君!
Q.えッ!僕の名前ってQだったの!?あれって『Questions』の『Q』じゃなかったの( ̄□ ̄;)!!
A.それでは今回の《★教えて、お料理コーナー!★》はオシマイです!では皆さん、さようなら~(^o^)/~~
Q.え、ちょっと、まだ僕の話がまだ終わってn




