1、考え、迷って
新章開始です
作者の身の上の都合で更新が大変遅れ、読者の皆さまに不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした。
これからも粉骨砕身で頑張ります!
よろしくお願いします。
どうも。皆さん、こんにちは。沢辺誠一です。
ハナミ様によって転生され、早くも2ヶ月半。
コカトリスやら親バカ、ロリコンにワイバーンなど様々な出来事がありました。
目を閉じれば、異世界での思い出が瞼に浮かぶ。
というか、瞼にこべり付いて離れない。
まあ、最近に大事件などが起こったが、思ったよりは楽しくやっていけてる。
ん?今、俺がどうしてるかって?
俺の身の上話なんか面白くも無いから、省略して説明すると――――――
鎖で縛られ、知らない人に囲まれています。
・・・・・・本当、いつもどうしてこうなるんだろう。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
~遡ること3時間前~
バヒオン収穫祭から三日が経った。
前代未聞の事件に関わらず、都市に事件の傷跡は欠片も無い。
都市の人々は変わらず日常を過ごしている。
その光景だけ見れば、ワイバーンが本当に出現したのか疑うだろう。
しかし、城壁の向こう、バビオンの外に目を向ければ事実であると重い知らされる。
そこら一帯にワイバーンの死骸が積まれ、衛兵たちが後処理をしている。
そして、最も目がつくのは、広範囲に深く抉られた大地。
ワイバーンの血が大地に染み込んでいるのか褐色に染まっている。
人々はその光景を見て、深刻さを改めて知り戦慄し、己の無事を神に感謝するのであった。
そんなバビオンで現在、誠一はというと魔法で作り出した異空間で、自分が仕留めたワイバーンの肉の調理をしていた。
自分の大好きな料理の真っ最中。
しかし、誠一の顔色はどこか優れない。
誠一は祭が終わってから、祭やワイバーンの処理を理由にしギルドへ足を運んでいない。
調理器具などの後片付けも魔法を使えばすぐにでも終わるものを、時間をかけて手作業で行っていた。
こうなった原因は、あの祭最終日での失敗だ。
あの時、俺は取り乱して、ほんの少し手加減を忘れてしまった。
結果があのざまだ。
週刊誌のインタビュー欄で神罰ではないかと書かれたのを見た時は、あまりの気まずさと恥ずかしさで転げ回った。10分くらい。
そして、自分に言い訳し作業を続け、時間が経過した。
しかし、いつまでもこうしている訳にはいかない。
生活の為には金が必要、つまりは働かなければならない。
勿論、祭りで稼いだ大量の資金はある。だが、この金には手を出さない。
この金はいつか自分の店を持つための夢への投資だ。
売上は銀貨9枚。
日本円にして、およそ90万の大金を二日で稼いだ。
しかし、店を持つには到底足りない。
俺は夢の為、そして今日の飯の為にギルドへと重い足を運ぶのだった。
まあ、実際はアンちゃんに心配そうな顔をされたり、レヌスさんの視線が少し痛かったのもあるのだが。
宿を出るときなんて、レヌスさんが魔法で指先に火を灯しながら何故かこっちを見ていた。
ガン見であった。
ただ一言「そろそろ燃やすわよ」と言われ、慌てて出てきた次第だ。
何を燃やすつもりだったのか・・・いや、考えないでおこう。
しかし、覚悟は決めたが、やっぱり緊張してきた。
別に俺の仕業だとバレた訳じゃないんだ。
週刊誌でも確認したが、誰の仕業かは分かっていない。
あの時、偶然にもワイバーン解体用の存在を認識できなくなる魔法を使用していた為、魔法を行使した人物を特定できていなかったのだ。
大丈夫だと、そう自分に言い聞かし、己を勇気づける誠一。
さっさと依頼を受けようと扉に手をかけ、ギルドに入った。
「久しぶりじゃの~、セーイチ~」
そして、扉の前でベルナンが立ち構えていた。
開始早々、心が折れそうです。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
入って早々、一番出会したくない奴と遭遇してしまった。
ベルナンはニコニコと満面の笑みを顔に浮かべ、俺を見ている。
・・・怪しい。限りなく怪しい。
俺は周囲に意識を向けながら、ベルナンに話しかける。
「こんにちは、ベルナンさん。なにか俺に用ですか?」
「い~や、特に。ただ声をかけただけじゃよ」
ヤバい、心臓がバクバク鳴り始めてきた。
落ち着け、落ち着くんだ!訓練された料理人は狼狽えない!
誠一は心の中で支離滅裂なことを頭の中で思いながらも、この状況をどう打開すべきか考える。
ベルナンの能力『異心伝心』
人の心を詠み、応用することで幻術を生み出す。
幻術に一度嵌まれば、抜け出すのは容易くない。
しかし、抜け道がひとつある。
幻術を使おうとする瞬間、ベルナンさんの体からほんの少しだけ魔力が漏れだすのだ。
ところで、今更だが何故俺はベルナンさんの能力には掛かるのに、コカトリスの石化光線は効かなかったんだ?
何か違いでも在るのだろうか。
・・・と、今はそれどころじゃない。
ベルナンが何か企んでいるのは間違いないと言っていい。
しかし、今いる場所はギルドの真正面。
多くの人目の前である。おかしな行動に出られない筈。
また、幻術も想定しベルナンさんの魔力の動きを見逃さない。
余談だか、またまた知人と交錯戦を繰り広げる誠一。
しかし、その事に慣れてしまい疑問を抱かない、全く自覚なし。
こうして、誠一は順調に非日常に染まって行くのであった。
俺は自然を装い、出来るだけ早くこの場から離れる作戦にした。
「すみませんがベルナンさん。今日は早めに帰らなければならないんで、失礼します」
俺は不意討ちにいつでも対応できるように、細心の注意を払いながらもベルナンの横を早足に通ろうとした。
だが、誠一はベルナンの不可解な発言に足を止めることになる。
「セーイチ、どこに行くつもりじゃ」
「・・・・・・???どこってギルドの受付ですけど」
この人、遂にボケたのか?と誠一が案外失礼なことを思っていると、ベルナンは然も当たり前のように言いはなった。
「此処はギルドじゃないぞ」
「・・・・・・は?」
ベルナンの言葉を理解できず、マヌケな声を出してしまう誠一。
そして、声を出して数瞬の間にある考えが頭をよぎる。
俺は慌てて、この場から離れようと後ろへと跳んだ。
否、跳ぼうとした。
しかし、体が地に縛り付けられたかの如く、思うように動けない。
ベルナンはニヤリと口角を上げる。
そして、誠一の目に映る光景がパズルのピースが抜け落ちていくように変わっていく。
気づけば、自分は鎖に巻かれ、居るのは見知らぬ豪華に飾り付けられた部屋。
そして、自分を囲む全身から貫禄漂う四人。
冷や汗を流し動揺する誠一の顔を見て、ベルナンはドヤ顔で言い放つ。
「いつから現実だと錯覚しておった・・・この台詞、一度は言ってみたかったんじゃよね!」
最後の台詞がいろいろと台無しであった。