1、はじめの一歩
ハナミと別れ、転送させられた誠一。
現在、誠一は暗闇の中を落ちていた。
「真っ白の次は真っ黒かよ」
先程からこのままで、変化が全く無い。
無事、異世界に行けるか心配になってきた。
ついでに言えば、あの残念神が担当していたのが、誠一のネガティブな方向にへと拍車をかけていた。
もしずっと不思議空間から抜け出せなかったら、もしハプニングが起き死んでしまったら、もし―――
そんな不安ばかりが誠一の頭を駆け巡った。
「まあ、いいや。料理のこと考えよう」
駆け巡ったが、そんな不安はすぐに無くなる料理バカであった。
誠一は異世界における『人類料理計画』について思考することにした。
〜それから数時間後〜
思いにふけっていると、微かに光が見えてきた。
「お、やっと出口か。長かったなあ」
余りにも長くて、『人類料理計画:Q』まで考えてしまった。
代わり映えしない黒一色の風景に変化が訪れ、誠一は少しだけほっとする。
考えを一旦止め、出口に備えていると、誠一はあることに気づいた。
自分の胸が騒いでいるのだ。
料理の事だけでなく、未知なる世界を冒険することに対し、無意識の内に興奮していたのだ。
「意外に俺も男ってことか」
口角を上げ、どこか嬉しそうに言葉をこぼした。
誠一が驚き、笑っている間にも、光が徐々に大きくなりつつ迫ってきている。
光の先に俺を待ち受けているのは、一体、何なのか。
誠一は早まる気持ちを抑えることができず、大きく踏み込み光へと飛び込んだ。
「ここから俺の時代が始まるぜ!ハハハハハ!」
テンションが最高潮に達し、調子に乗った台詞を思わず口にしていた。
誠一を包んでいた光が晴れ、目に入り込んだ光景は、
「・・・また真っ白?」
白い世界であった。
まさか戻ってしまったのかと思いながらも、とりあえず不時着しないよう足をつけて―――
ズボッ!
「へ?」
足をつけようとしていた地面が抜け、予想外なことに思わず間抜けな声が出てしまった。
そのまま重力に従い沈んでいき、白の地面に覆われた。
―――いや、違う。これは地面じゃない、微細な水滴だ。
突如、ある考えが頭をよぎった。
「まさか、ここは地面じゃなくて・・・!?」
言葉を口にした直後、白のベールが取り払われた。
そして、誠一の疑問に対する答えが目の前に広がっていた。
そう、誠一は上空4000mの高さに転生されたのだった。
ああ、俺の時代、短かったな