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14、口は災いのもと

大変遅くなって申し訳ありません。

休みが終わり、学校が始まってしまった為、更新が1週間周期ほどになります。

これからも粉骨砕身で頑張りますので、宜しくお願いします。

「はぁ~・・・すげえな、こりゃ」


「マコトお兄ちゃん、今度はあっちに行ってみよう!」


祭三日目。

今日で祭も終わってしまう。

王族が訪問する為か、はたまた、もうすぐ終わる祭を惜しんでいるのか、そこらかしこから活気ある音が耳に届き、最大の賑わいを見せている。


現在、俺はアンちゃんと一緒に祭を散策している。

営業も昨日無事に終わり、今はフリーだ。


予想通り、二日目も初日以上の客が押し寄せてきたが、カク&スケが居たおかげで余裕が生まれ、楽にこなせた。

カクとスケは俺が口から言葉にしなくても思い通りに動き、まるで自分が三人もいるかのようにスムーズに進んだ。

二人は難しい魔法は使えないが、基本的な魔法を使える。

そして、ゴーレムのため疲れる事はない。

正に理想の従業員(パートナー)である。


仮面だけじゃ寂しいかろう、二人には細やかな褒美として何か買ってやるか。


しばし商品を物色していた誠一。

だが、ある事にふと気付く。


いつの間にか自分の側にアンちゃんの姿が見えない。


やべえ!珍しい光景に眼を取られちまっていた。

まさか、はぐれちまったか。

自分の失態を嘆きながらも、慌てて周囲を見渡す。


しかし、誠一の思いの外、すぐにアンちゃんを発見する。

少し先の店、衣服を扱っている店だろうか、そこの会計の

前でアンちゃんが何かを受け取っていた。

ホッと安心して息を吐き、アンちゃんの背に声をかける。



「何か買ったのアンちゃん?」


「うわわっ?!」



小さな背に声をかけると、アンちゃんは何故か変な声をあげた。

突然の事に驚いたのだろうか。だが、それにしては少々驚きすぎな気がするが。

誠一は気になり、何をしていたのかアンちゃんに聞こうとした。

しかし、アンが誠一よりも先に口を開き遮られ、出かかっていた言葉は喉で止まった。



「それは、えぇと・・・あ、ほ、ほら、あっちも面白そうだよ!行こう、マコトお兄ちゃん!」


「ん?おお」



あからさまに話を反らしたアン。

明らかに何か隠している。


誠一はシャーロック・ホームズよろしく、現状に見える物から答えを読み解こうとした。


慌てるアンちゃん。

衣類を扱うお店。

俺に知られたくない購入品。


・・・分かったぞ!これらから導き出される真実はひとつ!



(下着を買ってたのか!なるほど、それなら仕方がない。アンちゃんもお年頃だしなあ)


(何かとても失礼な事を思われている気がするけど、ここは我慢しなきゃ)



検討違いな答えを考えるデリカシーゼロの誠一に、訂正したい気持ちを抑えるアンは足を進めるのだった。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


前世の子供の頃から何度も経験し学んできた事だが、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうものだ。

修学旅行しかり、友達との遊びしかり、そして人生しかり。

どんなに願っても時間は止まってくれはしない。


今は日も暮れようとし、俺らは公園のベンチでしばし休息をとっていた。

ちなみに、この公園は領主であるバースが市民の為にと自腹で造ったそうだ。

まったく良くできた人だ、尊敬する。

いったい、どんな人なんだろうか?男であるのは解るのだが、一回会ってみたいものだ。


俺はアンちゃんと共に、異世界の祭を大いに満喫した。

むしろ元地球人の俺の方である分、アンちゃんよりも楽しんでいただろう。

初めて見る物、知る物、聞く物で溢れ、ついつい財布の紐を緩めてしまった。


ある所では、日本での縁日のカラーひよこのように、さまざまな小動物が売られ、子供達が群がっていた。


尻尾が二本生えた猫もどき、小さな角が頭に着いている犬、はたまた4枚の羽で飛ぶ小鳥。


地球にででも持っていったら、UMAとして認識されるであろうファンタジー感満載の動物 (モンスターなのだろうか?)。

ぶっちゃけ、とても可愛らしかった。

つぶらな瞳がメチャクチャ可愛かった。

アンちゃんが飼いたそうに視線で訴えてきたが、俺は心を鬼にし、目を合わせまいと顔を反らし、耐え過ごした。


その時、レヌス、もといロリコンが物陰に隠れながら動物と触れ合う子供に熱い視線を送っていたのを発見したが、俺は見なかった事にし、他人のふりをした。


ベルナンさんが言っていた演劇も素晴らしかった。

物語のあらすじは何処にでもあるような正義の勇者様が悪を倒すといったありふれたものであった。


しかし、まったくもってレベルが違った。


糸も繋がっていないのに独りでに(おど)る人形達。

剣を呑み込み、業火を吹き、背の羽を震わせ空を舞う。

宙には魔法が飛び交い、降り下ろされた剣が弾き、弾かれる。


華やか舞台上だけが現実から切り離され、別世界が広がっていた。


誠一は幻想的な光景に魅せられ、目が離せずにいた。

劇が幕を閉じた瞬間、俺は気づくと席から立ち手を叩いていた。

周りにも目を向けると、自分と同じく拍手し称賛を送っていた。


………………その中にベルナンさんもいた。

何故かベルナンさんの足の下には気絶した衛兵の山が生成されていた。

何で周りにいる人は誰もその事にツッコミをいれないんだ

それはいつもの事なのか、日常なのか。

いろいろとツッコミたくなったが、関わりたくないので我慢し、忘れることにした。


夢物語のような一日であった。

所々で恥人・・・間違えた知人が祭の光景に写り込んでいたが。



しかし、早いものだなあ。


2ヶ月くらい前まで食事処経営者のただのオヤジだった。

それが今は、異世界で若返って第2の人生を謳歌している。

こんな事、いったい誰が予想出来たであろうか。


あの時に転生を断らずに異世界に来て良かった。


今ならはっきりとそれを言える。

ハナミ様に感謝だなぁ。

あの神様は元気でやってるかね。


物思いにふけっていると、時間を報せる鐘の鳴る音が響いてきた。

そろそろ休憩もやめるか。

そう思っていると、アンちゃんが俺に気になった事を聞いてきた。



「マコトお兄ちゃん、周りに人が居なくなっちゃった。何でかな?」


「ん?そう言われてみれば」



アンちゃんに指摘され、誠一は辺りを見渡す。

全くいないという訳ではなく、幾人かは視界に映る。

しかし、先程までと比べて明らかに人が少ない。

理由が解らず、誠一はしばしアゴに手を当て悩んでいたが、


「……ああ。もうすぐ王様のスピーチがあるからだよ、たぶん」


王様の登場がもうすぐあるのを思い出す。

ポケットからパンフレットを取りだし、確認をする。

なになに・・・ああ、やっぱり。王様が大芸道を観賞しに市民の前に顔を出すと書かれてる。

王様の顔を拝見できるなんて、またとない機会だ。

なるほど、王様に会えるのか。

それならば・・・



「混んでいた有名な飲食店も空いてるな!今の内に食べに行こうか、アンちゃん!」


「やったー!私、甘いの食べた~い!」



花より団子、腹ペコ二人組は王様よりも食べ物に走るのであった。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


バヒオンのとある一角。

豪華に飾り立てられた部屋の中には、若き女性が一人。

見るからに高そうなソファーに深く座り、虚空を見ている。

女性は溜め息を吐き、



「はあー・・・憂鬱だわ」



心底ダルそうに、ポツリと言葉が女性の口から漏れる。

その独り言に、返す声。



「それならば父母君と御一緒に大芸道を観賞して、気分でもまぎらわせば良かったではないですか」



女性の側に立つ男性。

歳は女性と同じ程だろうか。

格好は執事服、背筋をピシッと伸ばし、立っているだけなのにどこか気品が漂う。

その男性はダラけている女性を横目に提言した。



「イヤよ。出る必要があるのは御父様と御母様だけじゃない。私は無駄を省く主義なの。それに、あの大芸道なら四回も観たわ。確かにスゴいけど、流石に飽きるわよ」


「それなら我慢してください」


「はぁ~、何か面白い事起きないかしらね。大事件か何か」


「物騒な事を仰らないでください」



女性の言葉に事務的に返す執事の男性。

女性は今日何度目になるか分からない溜め息を吐くのだった。




そして、()()は何の兆しもなく起きた。






ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!





突如、バヒオンに響き渡る警報。

女性は驚き、ソファーからずり落ちる。

今もなお警報は鳴り響いている。

たしか、この警報の音の意味は――――――――



「これは敵襲警報!」


「な、何?!い、いったい何!?」



警報が敵襲を報せるものであるのに気づいた男性に緊張が走る。

女性は未だ不意の事態に付いていけず、狼狽している。


バタン!


「失礼します!」



部屋の扉が勢いよく開かれ、切迫した表情を顔に貼り付けた衛兵が駆け込んできた。

何の合図もなく、部屋に入る行為は本来なら許されるべき事ではない。だが今はその事に気にする余裕は女性にはなかった。

衛兵は急いで来たせいか苦しそうに息を切らしながら、しかし、二人をしっかり見据え、はっきりと現状を伝えた。



「報告します!ワイバーンが群れを成し、バヒオンに急接近!その数は三百!!」



その報告を聞いた執事姿の男性と女性。

女性は突拍子もない事に思考がフリーズ。

そして、男性は一拍おいて女性の方を向き、



「・・・・・・あんな事を言うから」


「ええぇ!?私のせい?!」


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