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13、 立ちはだかる壁

遅れてすみません!


これからも頑張ります

「ウォラララララララララ!!」



誠一はかつてないほど集中していた。


現在、自分の目の前にはこれまでの人生の中で最大の困難が立ちはだかっている。


上空4000mからの落下よりも。

巨大な鳥との化物よりも。

あの狂人と化した親バカよりも。

・・・いや、親バカよりもは言い過ぎかな。あっちの方が難関か

とにかく、乗り越えなければならない難関が身に迫ってきている。


誠一は切り開くべく、手に馴染んだ自分の武器を持った右腕を振るい、目の前の標的を切る。

切り、切って、切って、切り、切って、切る、切り刻む。

目にも止まらぬスピード

だが、決して乱雑ではなく洗練された動き。


左手が空いた一瞬を使い、別の標的に向け魔法を放った。

魔法により発現した(つむじかせ)が一瞬にして、標的の形が崩れミンチへと変える。


魔法の結果を横目に確認し、すぐさま別の行動に移る。


灼熱の中に己の手を入れる

肉塊を握る。

狙いを定め貫く。


誠一は動きを止めなかった。

止まらなかった。

時間が経つごとに更に無駄が削られ、流れる水の如く流麗に動作が止まることなく繋がっている。


しかし、その動きに変化が生まれる。

突然の前進。

誠一は一歩踏み込み、握り締めた拳を前に突きだし、



「61番肉まん三つ、62番唐揚げ二つにプレーンピザ一つ、63番リンゴピザ四つ、御待ちどう様!!」



オーダーされた料理を待っていた客に手渡した。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


祭初日、誠一は何とか乗りきった。


「パ⚫ラッシュ、僕はもう疲れたよ・・・」


「しっかりして、お兄ちゃん!てか、パ⚫ラッシュて誰!?」


だか、真っ白に燃え尽きて椅子に座っていた。

今にも誠一の口から魂が抜けそうだ。

そんな姿を見てアンは、誠一の肩を掴み揺さぶりながら声をかける。


「・・・はっ!あれ、俺はいったい?」


「よかった~戻ってきた」


何とか正気を取り戻した誠一を見て、アンはホッと息を吐く。

まだ少し呆けていた誠一であったが、徐々に思い出してきた。


一人目のお客が訪れた後、ボチボチとだがお客は入った。

だか、見馴れない料理からか客足が続かない。

販売方法を少し変えてみるかと考えていた。


そんな時であった。


最初は、男女の若いカップルであった。

その二人からの注文を受けている内に、新たなお客さんが並んだ。

一人、二人、三人、四人とあれよあれよと増えていき、気がつけば店は人の壁によって覆われた。

そこからは遮二無二(しゃにむに)に調理をした。

体が若返っていて良かったと心底思った。

精神的疲労が未だに残っている誠一にアンに同行していたブーケが話しかける。


「大丈夫ですか?よく一人であんな大量の客を(さば)けましたね」


「前日の内にある程度の調理は済ませたからな。しかし、予想以上の客で明日の分を急遽調理する羽目になっちまったな」


あまりの大量の客に準備していた分が消え、食材を調理しながら切り抜けた。

粗い作業は魔法で補い、所々で時間を速める魔法をバレないように料理にかけて、調理時間を短縮したりした。

(ちな)みにだが、時間魔法(タイムマジック)は大変高度な魔法で、現在使い手はいないとされている。

もしも、ガルテアに存在する魔術師が知れば、あまりの驚愕に呼吸を忘れてしまうだろう。

その叡知(えいち)をかき集めても手に届き得ない大層な技を誠一は片手で、しかも肉まんの蒸し時間の短縮に使ったのだ。

だが、魔法に詳しくない地球人の誠一はその重大さに気づかない。

というか知っていても、ラッキー程度にしか思わないだろうが。


「しかし明日もこのペースだと用意してた食材が底をついて、三日目は店開けないな」


自分の予想では、四日分は仕入れていたんだか、一日で半分以上も無くなってしまった。

誠一は心底残念そうな顔をする。

そんな誠一にブーケがフォローを入れる。


「大丈夫ですよ。他の店も二日目まで経営して三日目は祭りを楽しむなんて良くある事ですし。・・・そうだ!三日目はアンちゃんと祭りに出かけるのは如何(いかが)ですか」


ポンと手を打ち、ブーケが提案をしてきた。


なるほど、それも良いかもしれないな。

せっかくの祭だ。楽しまなくちゃ損である。

ブーケにをアンちゃんの面倒を頼み続けるのも頂けないしな。


しかし、アンちゃんは大丈夫だろうか?

男と二人っきりより、同じ女性の方が気楽ではなかろうか。


「アンちゃん、どうす――――――」


「楽しみだなぁ♪マコトお兄ちゃん、どこ行く?ほら、劇とかやってるよ!」


「お、おお」


アンちゃんに確認しようと振り向くと、アンちゃんが満面の笑みで三日目の予定を組み立てていた。

尻尾がこれでもかと言う程ブンブンと振られている。

何がそんなに嬉しいのかイマイチ分からんが、今更三日目も働くとは言えないわな、こりゃ。


「よし!最後の日は遊ぶか。じゃ、ブーケはその時自由という事で」


「分かりました。でも、二日目も一人で対応するつもりですか。体、壊しますよ」


「大丈夫、体壊すなんて隕石に激突でもしない限りは有り得ないから」


誠一はブーケの心配に、冗談を交え応える。


「それに、手の打ちようもあるから」


椅子から立ち上がり、誠一は今思いついた計画を実行に移すのであった。




~祭二日目早朝~




「何ですか、これ・・・」


「今日の祭は、この二人が俺のアシスタントをしてくれる」


ブーケの視線の先は誠一のそばに立つ二つの人影。

大きさは百八十㎝ほどで、ブーケが少し見上げる形だ。

しかし、奇妙な点がある。


二人?共、何故かおかしな着ぐるみを着ていた。


一つはマントを身に付け、赤い丸鼻が付いた香ばしいパンの匂いがする丸顔。

一つは全身黒色で、矢印みたいな二本の触角に悪魔(デビル)彷彿(ほうふつ)させる翼が生えている。


子供向けの某アニメのキャラクターだ。

二次元的な可愛らしさは無く、リアルを追求して作られていた。

ゴムスーツみたいな着ぐるみはスマートな身体にピッタリと貼り付いている。


ブーケはそれを見て、思った事を包み隠さず誠一に一言、


「凄く気持ち悪いです」


「え、マジで!?子供喜ばない?」


「何を持って、こんなのに自信があったんですか!子供見たら間違いなく泣くか、石投げつけてきますよ!」


ブーケが謎の二人を指差し、大声で否定してきた。

誠一はなんとかイメージアップの為に着ぐるみ達の説明をする。


「丸顔の方はア⚫パンマンて言って、厨房担当。ちなみに頭が取れて食べれるモグモグ」


「ホラーです!てか、食べるな!」


「悪魔みたいなのはバ⚫キンマン。主にア⚫パンマンの邪魔をする担当だ」


「料理のアシスタントしなさいよ!なんでいるんだよ!」


「・・・これじゃダメ?」


「断固反対です!」


イマイチ、異世界人の反応が悪い。

子供受けすると思ったんだがなあ。

誠一は仕方なく衣装を変える事にした。


「はぁ~、せっかくの着ぐるみが。しょうがない、カクにスケ、コックスーツに切り換えだ」


『『了解』』


「喋った!?」


沈黙を続けていた二人の発言に何事かと目を剥くブーケ。

誠一の言葉に応答した二人、カクとスケは次の瞬間発光し、辺りを光で包む。

凝視していたブーケは眩しさに目を押さえる。

次第に視力が回復し前を向くと、そこには




カクとスケが物陰でこそこそと着替えていた。




「二人共、早くしろー」


「まさかのセルフうぅぅぅぅ!光った意味は!?」



カクとスケに催促の言葉をかける誠一にツッコミを入れるブーケ。

すると、カク・スケが物陰から顔だけをそっと出し、ブーケの方を見て、



『『覗かないでね』』


「やかましいです!!」



~数分後~



「ゴーレムッ!?これがですか!」


「そうだけど、どこかオカシイか?」


カクとスケは白で統一されたコックシートを身に付け、モンスターを模した仮面で顔を覆っている。


実はカク&スケは人間ではなく、誠一が能力で作ったゴーレムである。

触れれば肌が明らかに硬く解るが、見た感じ人間と見分けがつかない。

顔はのっぺらぼうなので、適当に祭りで購入した仮面を被せた。

そんな説明を聞いたブーケはあまりの精巧さに驚かざるを得ずにいた。



「少しだが、一応さっきみたいに言葉を発せるんだ」


「しかし、凄いですね」


「まあ、今回はこれで大丈夫だ。・・・そろそろか。お前ら、準備しな!」


『『了解!』』



主人(誠一)のかけ声に無機質な声で返答するゴーレム(カク&スケ)

誠一は頭にタオルを巻き、新たな相棒と共に第2ラウンドに挑んだ。

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