7、ブレックファースト
文章が下手で本当にすみません!
ダメな点・改善点などありましたらドシドシ感想で書いちゃってください。
誠一は朝の四時半に起床した。
「・・・よし、やるか」
昨夜レヌスさんに宣言した後、俺は朝食の下準備をしてからベッドに入った。
隣のベッドに顔を向けると、まだアンちゃんがスヤスヤと眠っている。
毛布からは、尻尾がはみ出しており、不規則に揺れている。
レヌスさんを俺は信用している為、『小人の楽園』の二階の一室を借り、一夜を過ごした。
俺はアンちゃんの眠りを妨げないように、忍び足で俺は部屋を出た。
「う、動けない・・・こんなにも少女のあどけない寝顔が近くにあるのに、無念!」
「・・・やっぱり、レヌスさんはぶれないですね」
扉を開け廊下に出ると、扉の前で石のように固まったレヌスさんがいた。
レヌスさんの変態行動を信じて、アンちゃんと一緒の部屋で寝ていたのは間違いではなかったと、誠一は思った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「もう、酷いわ!あの後も放置するなんて。何かあったら、どうするの!」
「アンちゃんに何かしそうだったから、拘束してたんだろうが」
俺は寝る前、念の為、部屋の扉に不法侵入する者の動きを静止させる魔法をかけておいた。
まあ、想像した通りになったのだが。
現在は午前六時、料理も一通り終わったので、アンちゃんを起こしに来た。
ついでに、危険人物を回収しに来たのだ。
レヌスさんは頬を膨らましなりながら、誠一に話しかける。
「それで、あの硬くなっちゃったパンをどうするつもり?まさか、そのまま出すんじゃないわよね」
「そんな訳ないでしょう。楽しみにしてて下さい」
「ん~。おはよう、マコトお兄ちゃん」
「おはよう、アンちゃん。ご飯できてるから食べよう。それとレヌスさん、鼻血出てますよ。拭いてください」
眠そうなアンちゃんと鼻から血を流すレヌスさんを食堂に誘導する。
そう言えば、たまに鮫島さんも腹や頬から血を流していたな。
レヌスの残した血痕で懐かしくなりながら、二人を追いかけ階段を降りるのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「では、持ってきますので少しお待ちを」
「楽しみだなあ」
「・・・」
レヌスは不機嫌だった。
アンちゃんの寝顔が見れなかったからではない。
・・・いや、それも非常に残念だったが。
理由は別にある。
アンちゃんが私のプリンよりもマコトの料理の方が好きと言ったからだ。
私にとってプリンは努力の結晶である。
子供の笑顔を見たいがために、研究し、試行錯誤してきた。
そして二年の年月をかけ、ついに完成したのである。
よくプリンを買いに来る近所の人たちからは、とても好評だ。
その私の逸品が負けたのだ。
大人げないとは思うが、どうしても認める事が出来ない。
私はマコトの実力を確かめるべく、勝負を挑んだ。
「お待たせしました」
レヌスが椅子に座り思考するなか、誠一が両手には皿を持って厨房から現れた。
「朝食のフレンチトーストです。ナイフとフォークで召し上がってください」
「わあ、良い匂い!」
「これは・・・!」
二人の目の前に置かれたのは、厚めにカットされた黄金色のパン。
焦げた砂糖の甘く、香ばしい香りが漂ってくる。
私はナイフとフォークで切り分けようとした。
すると、ナイフはサクッと音を立て、思っていたよりも楽に入った。
私はパンの柔らかさに驚きながらも、フレンチトーストを一口サイズに切り口の食した。
(・・・おいしい!)
瞬間、レヌスは至福に包まれた。
パンの中までシッカリと卵とミルクの風味が染みわたり、仄かな甘さが口いっぱいに広がる。
パンは厚めに切られボリュームがあり、外はサクッ、中はふんわりとした食感。
時間が経ち、風味が抜け硬くなってしまったパンがここまでおいしくなるのか。
レヌスは驚愕せざるを得なかった。
だが、私の心に微かな不満が表れる。
この料理にもう少し甘さが欲しい。
レヌスがそう思っていると、誠一が小さなカップをさしだした。
カップに入っているの、
「どうぞ、蜂蜜です。お好みでフレンチトーストにおかけください」
レヌスは誠一から受け取り、すぐさま蜂蜜を垂らす。
蜜が絡まり宝石のように光沢を放つフレンチトースト。
フォークに刺し、フルフルと震える欠片を口に運び、
(ああ・・・幸せ)
レヌスは誠一に向けていた悔しさなど忘れ、フレンチトーストを頬張り続けるのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
フレンチトーストを食べ終わり、レヌスは充実していた。
「・・・美味しかったわ」
「ありがとうございます」
レヌスの満足した顔を見て、誠一はホッと胸を撫で下ろした。
しばらく余韻に浸っていたレヌスは、おもむろに口を開いた。
「・・・調理法を教えてくれないかしら?」
「勿論、構いませんよ。といっても、作り方は簡単です」
まず卵、ミルク、バター、砂糖を混ぜ、アパレイユ(卵液)を作る。
本来なら、ウイスキーやオレンジジュースなども入れるのだが、今回は材料が無かったので断念した。
作ったアパレイユに厚めに切ったパンを十分に浸し、乾燥しないよう魔法をかけ、冷たい所に一晩置く。
この時、衛生面に気を付けること。
「昨夜にマコトが作業していたのは、それだったのね」
「はい。シッカリと浸ける事で硬いパンが柔らかくなり、焼いた時にふんわりと仕上がります」
後は、味が染み込み柔らかくなったパンをフライパンで両面を焼き、残していた砂糖をふりかけ石窯で加熱し中まで火を通して出来上がり。
「焼く際に、パンが柔らくなっているので形が崩れないよう気をつけて下さい」
「なるほど。今回は時間の経った物だけど、普通のパンでも出来る?」
「大丈夫です、作れますよ」
日本では食パンなどを使用されているが、元々フレンチトーストは硬くなったパンを食べられるようにするのを目的として生まれた料理である。
ちなみに蛇足だが、フランス語でフレンチトーストを『pain perdu』と言い、意味は『失われたパン』である。
「今回のようにデザートとして食べても良いですし、甘さを控えてサラダや塩漬けのお肉と一緒に食べる事も出来ます」
そこで一旦言葉を区切ると、誠一は不安そうな顔を向けレヌスに言った。
「この料理なら『小人の楽園』のメニューとして出せるかなと思いますが・・・どうでしょうか」
「・・・完敗ね」
誠一は残った食材だけで、ここまで美味しい物を作った。
しかも、宿の事も考え、朝食にピッタリな料理を提案してきたのだ。
隣に目を向けると、アンちゃんが夢中でフレンチトーストを食べている。
これは認めざるを得ない。
「いえ、今回は俺の勝ちではありません」
「え・・・?」
しかし、誠一はレヌスの言葉を否定した。
「この料理自体は先駆者が作り出したものです。俺はそれに手を加えただけなんですよ。対してレヌスさんは、まあ、理由がアレですが・・・独学で模索し、そして精進してプリンを作り出しました」
誠一はどこか悔しそうな顔をしながら、自白をするようにレヌスに喋った。
「今回、俺は『料理人』として負けたんです」
誠一の言葉を聞きレヌスは数秒呆然としたが、次第に自分の努力が認められた事に理解する。
誠一から称賛され、ただ純粋にレヌスは嬉しかった。
目の前にいる料理人の変に生真面目なところに思わず、レヌスは笑いそうになってしまう。
そこで不意に思いついたレヌスは、晴れ晴れとした気持ちで誠一に話しかけた。
「それは違うわよ、マコト。確かに大変だったけど、私もゼロから作り出したわけじゃない。・・・でも、私も負けを認めたくないわ」
突然のレヌスの発言に、不思議そうな顔をする誠一。
レヌスは今回の勝負の落し所を提案した。
「だから、今回は引き分けとしましょう」
「・・・ハハ、分かりました」
レヌスの申し出を聞き、思わず誠一は破顔し、その笑顔につられレヌスも顔がほころぶ。
こうして、二人の料理人による勝負は幕を閉じたのだった。
次話からは、二日に一回の更新にして、一話の文字数を増やしていこうと思います。
これからも宜しくお願いします!




