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2、運 & 命

~拘束されてから、しばらく後~


誠一は疲れきった顔で、留置所から出てきた。

誠一が捕まった理由は実に簡単であった。


「自動車に慣れてて、ここが異世界だって事を忘れてた」


そう、ここは地球ではなく異世界ガルテアだ。

車があるはずがない。


話によると、衛兵たちは走ってきた車を新種のモンスターかと勘違いしたらしい。

しかも門の前で突然止まったと思ったら、人が出てきたのだ。

警戒するのも、当然だ。


拘束後、衛兵たちに車の事を俺が作った魔装馬車であると説明した。それはもう必死に。

使い方も見せ、一時間ほど力説をし何とか解放された・・・車は衛兵に没収されたが。

アンちゃんも疲れたのか、顔が陰っている。


「マコトお兄ちゃんの奇行に慣れてて、気付けなかった」


「アンちゃん、その理由で落ち込んでたのね。アンちゃんにとって、俺のイメージって何」


疲労ではなく、アンちゃんは変なところで落ち込んでいたようだ。

俺も、いきなりのカミングアウトに落ち込む。


溜息(ためいき)を吐きながら、誠一は【異世界の歩き方】を開き、ギルドを目指すことにした。


「気を取り直して、ギルド行こっか」


「うん、分かった」


元気のよい返事を聞いた誠一はアンの頭を撫でた。

アンは少し恥ずかしそうだが、嬉しそうに微笑む。


「しかし、色々な種族の人がいるんだな」


ギルドに向かって歩いている最中に様々な種族の人たちがすれちがった。

腕の代わりに翼が生えている女性、羊みたいに顔以外モコモコの毛に包まれたお爺さん。トラの顔・体をした男性など。


そういえば、アプリで『バビオンは種族差別が無く、人間と他種族が生活しやすい地』って書いてあったな。

辺りをキョロキョロ見ていたら、アンちゃんに注意されてしまった。


「マコトお兄ちゃん、ジロジロ見たらダメだよ」


「おお、そうだったな」


自分より年下の子に(たしな)められてしまった、浮かれている場合じゃない。

軽率な行動を反省し、地図に目を戻す。


しばらく歩くと、目的地らしき場所に着いた。

三階建ての立派な木造であった。

扉の前には、剣を構えた戦士の石像がはさむように設置されている。

看板に『ギルド』と書いてあるのを確認する。


「矢印もここを指してるし、ここで間違いないな。じゃあ入ろうか」


「うん!」


二人は扉に手をかけ開けた。

すると、猛烈なアルコール臭が鼻を突いた。


「うぇっ、酒くさ~い」


「臭いだけで、こっちまで酔いそうだな」


中から男たちの喧騒が響いてくる。

はっきり言って、入りたくない。

だが、ギルド登録をするためにと、意を決して扉をくぐった。


二人で入った瞬間、ギルドにいた人たちの視線が向いた。

視線のほとんどに哀れみが含まれ、間の悪い時に来たものだと目が告げていた。

アルコール臭の元をたどると、五人組の男衆がギルドの一角に設置されている机を陣取り、酒を飲んでいた。

こんな昼間なのに酒を浴びるように飲み、口々に騒ぎ、周りに迷惑を被っていた。

ギルドの役員はどうにもできないのか、傍観ばかりしている。


その風景を見て誠一は、


「異世界にもワインはあるんだな」


男たちが飲んでる酒を見て、変なところで関心をしていた。

だが、自分がギルドに来た理由を思い出し、受付へと足を進めた。


アンちゃんは臭いに耐えられないのか、鼻をつまみながら付いて来た。

これだったら外に待たせた方が良かったかな。

いや、異世界が安全と決まったわけじゃないし、目を離すわけにはいかない。


アンちゃんの為にも早く済ませようと思い、受付にいた女性に話しかけた。

金髪ロングの女性の歳は俺と同じぐらいだろうか。

挙動不審で、緊張しているのかカチコチに固まっている。


「すいません、ギルド登録をしたいんですけど」


「は、はい!ギ、ギルド登録でしゅね!」


受付の女性は何を慌てているのか、舌を噛んでしまった。

女性は痛みに悶えていると、アンちゃんが俺の袖を引っ張った。


「お兄ちゃん。あのお姉さん、簡単なセリフなのに噛んじゃったよ」


「しぃーーっ!お姉さんに聞こえちゃうよ。そういう時は、見て見ぬふりをしてあげるんだよ。お姉さんだって恥ずかしいんだからさ」


「聞こえてますよ!てか、あなたの方が失礼です、わざとですか!」


「あれ、ばれちゃった?」


「わざとですか!!」


どこかハナミ様と同じ匂いが漂う受付の女性が面白かったので、ついついからかってしまった。

予想通り、面白い反応を返してくれた。


「と、そんなことより登録をしたいんだが・・・お姉さん?」


話を進めるために、お姉さんに話しかけたが、顔をそらし反応が返って来ない。

怒って無視を決め込んだのか?

からかってしまった事を謝ろうと思い、口を開こうとした。



「おい・・・そこのガキ」



だが、後ろから悪臭と共に発せられた言葉により遮られるのだった。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


今日は私、ブーケにとって厄日であった。


私がギルドの受付になったのは三日前。

なった理由は、受かった職がこれしか無かったからだ。


クビにされないように頑張ろうといきこんででいた

いたのだが・・・


朝は寝坊し、食べたかったパンが売り切れて買えず、今日の担当だった先輩に押しつけられ、手順がうろ覚えなのに、一人で受付に立つことになった。

そして、受付に行くと男たちがギルドで酒を飲み、騒音をたてていた。


そこに至って、先輩が逃げた理由を知ったのだった。

五人の男は気に入らない事があると暴力を振るい、悪い噂が絶えない。

だが、実力がありBランクのチームであるから、対処に困っているのだ。


ギルドに所属している人たちも自分に被害が来ないようにと、五人から離れ、目を合わせないようにしている。


私が自分の運の無さを呪い、現実逃避をしようとしていた。


その時だった。


ギルドに顔を(しか)めた獣人の少女と私と同じくらいの年齢の黒髪の青年が入ってきた。

二人はしばし扉の前で立ち止まっていたが、動き出した。


・・・て、あれ?こっち来てる!や、やばい、どう対応すれば!?


私は二人の不意打ち?の行動に慌て困惑していると、気付けば目の前にまで来ていた。


「すいません、ギルド登録をしたいんですけど」


「は、はい!ギ、ギルド登録でしゅね!」


噛んでしまったー!恥ずかしー!

しかも、隠す気が全くない内緒話で私はおちょくられている。

文句の一つでも青年に言おうとすると、青年の後ろに大きな影が立っていることに気付いた。



「おい・・・そこのガキ」



酒を飲んでいた五人の内の一人であった。

悪臭を振り撒き下卑た(わら)いを浮かべ、青年に話しかけてきた。


「ガキ、お前、新参者だろう。だったら、優しい先輩に金を寄付するのがココのルールだぜ」


腰に(たずさ)えた剣を、わざと見せつけ威圧をかけて来る。

他の四人は、青年を脅している様子を見てゲラゲラと笑い、野次を飛ばしている。

青年は男の言葉を聞き固まっていたが、ポンと手を打ち納得した顔をした。


「・・・!これはカツアゲって言うやつですか」


「アアン?何を言いてえんだ」


「いや、あまりにも話に聞いた通りの脅し方だったので、一瞬ボケてツッコミを待っているのかと悩んでしまいまして」


「・・・殺すぞ、ガキ」


なんと、青年は自分の立場が分かってないのか、男を挑発した。

青年の発言に男は、明らかに酔いとは別の理由で顔を赤くし、怒気に満ちた声は発した。

それに、対して青年は、



「あ、トイレみたいに臭いんで話しかけないで下さい」



その言葉が引き金となり、殺意に満ちた男の剣が青年の腹めがけて()ぎ払われた。


ああ、初めての受付の仕事で死人が出るなんて、本当に今日は不幸だ。


女性が自分の運命を呪う中、青年に剣は迫り、命が失われようとした。











「死ねやあああああああああああああ!」

「ていっ」

「ぶげらあああああああああああああ!」



――――――剣を抜いた男の命がだが。


気の抜ける声と共に放たれた青年の拳は、男を面白いぐらい吹き飛ばした。

男の勢いは止まらず、ギルドの壁を突き破った。


その光景を見ていたギルドにいた人(二人を除く)は、現実を受け止められず石像のように固まっていたが、青年と壁に空いた穴を何度も見返し、



「「「「「「「「「・・・え?」」」」」」」」」



何が起こったか理解した。

外が騒がしくなったが、誰も気に留めない、気に留める事が出来ない。


青年の(そば)にいた少女は、どこか達観した表情をしている。

そして、混乱を引き起こした当事者はと言うと、



「ふぅ~、ちゃんと手加減できて良かった!」



そんな事には気付かず、満足した顔で額にかいた汗を拭っていた。




ダメな点がありましたら、ありったけ書いちゃってください!


日間ランキングに載っておりました!

これも、読者の皆様のおかげです。

これからも、頑張っていきます!よろしくお願いします。

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