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13、 朝食前の眠り

太陽が昇り、村に光が射し込む。

鳥達はさえずり、村人に朝が来たことを告げる。

絵に描いたかのような風景が、そこには広がっていた。


そして、誠一は、


「う~~。く、来るな~、アッー!!」


そんな穏やか朝の中、悪夢にうなされ野宿で迎えた。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「ハッ!・・・知らない天井だ」


誠一が目を覚ますと、知らない天井があった。

数秒戸惑ったが、すぐに思い出した。


「そうだ、昨日―――」


怒り狂って獣と化した親バカを能力を駆使し、対応した。

てか、コカトリスよりも恐怖した。

だって、魔法とか拳が当たった筈なのに、全然倒れないんだもん。

最後は全力を出して、何とか止められた。


だが、「変態を娘と同じ屋根の下に寝させられるか!」と毛布を投げつけると共にホブスさんに言われ、仕方無く野宿することになった。


今さっきまで寝ていた土で出来た小屋で、一夜を過ごした。

ちなみに、この小屋は俺が魔法で作った。

下は地面をウォーターベッドのように柔らかくし、寝やすいようにした。

魔法さまさまである。


「・・・そう言えば、初めての朝か」


誠一がガルテアに転生し、1日が経った。

短い筈なのだか、昨日はいろいろ濃密な時間だった為、何日も過ぎたかのように錯覚してしまった。


時間を確認すべくスマホを見てみると、8時半と表示されていた。

どうやら異世界の時間は地球と同じく24時間らしい。


「少し寝坊しちゃったなあ」


まだ老人だった頃は料理の仕込みや開店の準備などの為に朝早く起きていた。

だが、バジリスクやホブスさんとの戦闘のせいか、久しぶりに、こんな時間まで寝てしまっていた。

起きて顔を洗おうと、毛布を取った。


「う~ん、むにゃむにゃ」

「・・・なぜに?」


何故かアンちゃんが隣で寝ていた。

気持ち良さそうに、まどろんでいる。

服装から推測するに、俺を起こしに来たと思われる。

そして、地面が柔らかいことに興味をもち、試しに寝てみたら、


「ZZZ~」


寝てしまったのだろう。


こうしてアンちゃんの寝顔を見ていると、孫がいるかのように思え、微笑ましい気持ちになる。

地球では、結婚せず一生を終えた。


「孫がいたら、こんな感じだったのかな」

「ムフフ~~」


誠一はそう言葉を漏らし、アンの頭を撫でる。

アンちゃんは気持ちがいいのか、笑顔で尻尾を振った。


そんな時であった。


シャー、シャー、シャー、シャー


「ん?」


シャー、シャー、シャー、シャー、


さっきから一定の間隔で鳴る音が、誠一の耳に届いた。

小屋の外から聞こえてくる。


(異世界の鳥か?)


何かなと思い、小屋の扉を開け外に出てみた。







小屋の前で、ホブスさんが無表情で斧を砥石(といし)()いでいた。







俺はそれを見て静かに小屋に戻り、そっと扉を閉めた。


「・・・寝ぼけてんのかな」


いや、まだシャー、シャーと斧を研ぐ音が、誠一に現実だと教える。


「…………そうだ、偶然だ。ホブスさんは(きこり)だ。これから仕事だから研いでるだけなんだ。うん、そうだ!もー、慌てんなよ俺」


斧を研いでいる理由を考え、誠一は小屋の扉を開けた。








「アイツ、殺ス」

「アンちゃん、起きてーッ!あの人を()めて!」

「ウ~ン、あと五時間」

「その間にお兄ちゃん殺されちゃうよ!ってか、長すぎるよ!」

「ウガアアアアアアアアアアアアア!」

「いやあああああああああああああ!」


すぐさま小屋に立てこもり、アンちゃんに助けを求めるが中々目を覚ましてくれない。

部屋の隅でホブスさんに怯え(おび)震えていたが、音が聞こえなくなったことに気づく。

一向に待っても変化がない。

不思議に思い、いつでも対応できるように備え、扉を開けると、


「あら、おはようセーイチ。もう朝食できているわよ」

「お、おはようございます」


フライパンを持ったレダさんが笑って、立っていた。

ここだけ見れば、おかしな光景では無いだろう。

ただ、誠一は聞かずにはいられないことがあった。


「あの、レダさん・・・なんでホブスさん倒れているんですか?」

「ああ、夫なら、突然眠いと言って二度寝し始めたのよ。娘そろって困った人達ね」

「いや、白目剥いてんだけど。二度寝じゃなくて、二度と目覚めそうに無いんですけど」

「いつも夫は寝る時こんな感じよ」

「フライパンに血が付いているんですけど!」

「誠一、早く朝食を食べないと冷めるわよ」

「いや、でも――――――」

「あなたも二度寝したいの?」

「俺、顔洗ってきます!!」


その場を一秒でも速く逃げ出すため、誠一はホブスさんの家に駆け込んだ。

母は偉大(物理)であると、誠一は改めて知った。


(ホブスさん、貴方のことは、たぶん忘れない)


誠一は心で呟き、天に向かって手を合わせた。

すると、空でホブスさんがサムズアップしたような気がした。


これからも全力で頑張ります。

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