5話・図書館の午後3
「んー…終わったぁ…」
「こんなに、大変だとか、聞いてねぇ…」
「はぁ、今日はブラックサタデーですね」
「え、恵美ちゃん、どゆこと…?」
「さいあくな土曜日のこと…」
おいおい大丈夫かよ。
いつもは礼儀正しい笹原までも、敬語が崩れている…
壁の鳩時計は既に8時を指している。
僕らはガーディアン本部の会議部屋の掃除を終わらせたのでありました…。
任された仕事は、資料整理と部屋の掃除だけど、午前からの図書整理が、皆の体に響いたみたいだな。
部屋の中央にある大きな机に、それぞれがぐたー、と伸びている。
皆が、そろって疲れた疲れたって考えてるから、僕まで精神的に疲れてくるきた。本当に思い込みは怖い…。
かくいう僕も、明日は筋肉痛の予感がする、てかそれしかしないんだな。
ふぅ。
ちらり、と机の一番端っこの位置に座っている少女に目をやる。
雨宮は、最初こそいつもの険しい表情を保ってはいたが、作業が終わる頃には、あからさまに疲れていた。
さすがの彼女も疲れたみたいだ。
僕だってはやく帰りたい。
そんな視線が風雅先輩に集まっていって、
「…じゃあ、責任者命令な。皆各自帰宅を許可する。ゆっくり休め」
「「「ありがとうございました…」」」
その後、皆はゾンビの様に、体を引きずって帰っていった。
さぁ僕も帰ろう。
………と思ったが、一つだけ気になることがあった。
「雨宮さん。今日は一緒に、帰らない?」
****
「雨宮さんって、寮じゃなくて個別住宅かぁ。少し遠いんだね」
こくり。
雨宮が頷く。
僕は今、暗闇のなかを、クラスメイトの美少女と二人っきりで歩いているわけだ。
まぁ、雨宮に恋愛方面の好意は抱いたことがないから、当然なにもない。
他愛のない身の上話の質問に、雨宮が答えていくって感じだ。
…………ここで僕は本題に移らなくてはならなかった。
「雨宮さんはさ」
こくり。
「ここに来る前はどこにいたの?」
「…………」
「答えたくないんだね。
じゃあ、もう一つだけ質問」
「君は僕の妹を知っているの?」
______今日皆で見たアルバムの写真のなかに、古いものがあった。
写っていたのは、小学二年生の僕と篠崎、当時のガーディアンメンバー、
それに僕の妹、真代 侑梨
その写真を見ている時、
ふいに聞こえてきた声があった。
"侑梨"と。
雨宮の声だったんだ。
「雨宮さん、僕の妹をどこで知ったのか教えてよ。
まぁ、僕も何年も前から会っていない子だから、どこで知り合ってもおかしくはないのかもね」
僕は雨宮の瞳を見た。
澄んだ蒼色の瞳に、うっすらと赤みがかかりはじめていた。
能力者が、能力を使っている証拠。
僕は彼女の能力を知らない。
けれど、ここで怯んではだめだ。
「だから、教えて欲しい。
僕の妹は、僕が小学2年生のとき、
おおかみに攫われているんだ」
ただ、彼女を取り戻すためならば。