4話・図書館の午後2
「みんなお疲れ様!図書整理も今日で終わりになります」
わぁぁーっ。その瞬間、ガーディアン本部は、歓声に湧いた。
3日間の図書整理は、正直一年で唯一、と言っていいほど辛い仕事だからなぁ。
どうしても力仕事になるため、女子や低学年の力はあまり期待できない。すなわち僕たち男子がやるしかなくなるということだ。
のびをする者、遊びの計画をたてようと話し始める者、睡眠をとるため寮に戻る者(こいつらはまじな方で目がやばい)。
僕も寮に帰ることにして、椅子から立ち上がった。
"まだ、この部屋の掃除は終わっていないのよね…誰が適任かしら"
背後から聞こえる声から逃げるようにしてドアに手をかけた途端に、
「中等部二年生徒集合!あなたたちには特別課題を与えます!」
えええええぇー⁈っという悲鳴を上げたのが、篠崎だということはもう予想の範囲内である…。
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「こんなの…あたしたちの仕事じゃない…」
すでに涙目になっている篠崎。
理由は単純。
ガーディアンの中でも、僕たちの学年は特にメンバーが少ないため、一人一人の仕事が必然的に多くなる。
初等部からのメンバーが僕と篠崎。
中等部からがもう一人(サボリ癖がひどい奴で今日もいない)
それと雨宮だ。
まぁ、それに篠崎のバディ、風雅先輩と、新人の笹原もいる。
仕事はいうまでもなく、この部屋の掃除、整理などなど←ここが重要です。
とりあえず細かな作業を押し付けられたと思ってよろしい。
僕たちはまず、書類もろもろが収まった棚を整理していた。
しっかし、
「よくこんなにも溜まったものです…先輩たちはよくこんなまま放っておきましたね…」
僕が見上げたのは、書類やその他いろいろが詰まった本棚だ。
壁いっぱいの場所をとっているそいつは、なかなかいっぱいになることがないと思うんだけど。
「少なくとも」
風雅先輩だ。
「俺が入学してから一度もない」
まさに、押し付けられた形なわけだ。
「真代先輩、これはどこに…わっ」
ばらばらばらっ。
ここで、黙々と仕事をしていた新人の笹原が、手に持った資料を床に落としてしまった。
「恵美ちゃん大丈夫ー?」
「あ、花音先輩ごめんなさい」
「大丈夫。手伝うよ」
そう言って、僕も床に散らばったものを集めていく。
すると篠崎は、一枚の写真を見つけたみたいだ。
「うわ、これ懐かしい!」
「え、ちょっと、見せろよ」
「わぁ、見せてくださいよ花音先輩!」
声をあげた彼女の周りに、風雅先輩、笹原、ついでに僕も集まった。
雨宮を見ると、作業の手を止めて、こちらを見ているようだ。
見たいのかな?
僕は、おいでおいで、と手を動かして、雨宮を呼んだ。
「雨宮さんも来る?」
こくり、と彼女は頷いて、総勢5人は写真を見始めた。
「一枚だけかと思ったけど、これ昔のアルバムじゃない?わ、あたしと真代が写ってるよ⁈」
「うわっ、幼くね…これは…お前ら中2が入ったばかりの頃と見た!」
「これが花音先輩で、こっちは風雅先輩ですか⁈」
「僕までいるの?」
一同は、次から次へと見つかる写真を前に、わいわいぎゃーぎゃーの大騒ぎをしていた。
写真には日付は記されていなかったけれど、記憶から、これはガーディアンに入ったばかりの頃に撮られたもののようだ。
初等部2年だから…6年前か。
写真には僕と篠崎が無邪気に笑うショットがとても多く収められていた。
僕はこの頃、やんちゃだったなぁ。
いや、悪い意味とかでなく。
こんな時期もあったんだ…と笹原は顔を輝かせている。
いつも先輩として会っている人が幼い姿なんて、やっぱり新鮮なんだろうな。
僕たちは数枚をネタに、ひとしきり騒いだ後、
そこに落ちていた写真の最後の一枚をめくった。
「集合写真だねこれは」
篠崎が言った。
写真に写ってるのは、学年もバラバラな生徒が、ざっと50人ほどだ。
その頃のガーディアンメンバーのほぼ全員と言えるだろうな。
普通の写真だ。
「あ、ここにも真代が写ってるよ」
篠崎が写真の左下を指差した。
どれどれ…
写っているのは幼い少年の僕と、同じく少女の篠崎。
僕たちの間にいる、おおきなぬいぐるみを抱えた小さな少女。
「ほら、侑梨ちゃんだ」
"侑梨をずっとずっと守ってね…お兄ちゃん"
淡い日の記憶。
僕の守れなかった約束。
写真に写る少女が、僕を笑っているように見えた。