3話・図書館の午後1
「きゃぁぁぁぁー!
ま、真代〜助けてー!」
「え、篠崎さん」
ばさばさばさっ!
僕が振り向いた時には、時、既に遅し…。
篠崎の上には大量の本が散乱していた。
きっとさっきから運んでいた書物を抱えたまま、床で滑りでもしたんだろうな。
しかも、彼女が運んでいた書物はとても大きなものだったらしい。
その見た目はまるで厚く、大ぶりな辞書みたいだ。
たった今彼女にら相当な重力がかかっているんだろうなぁ。かわいそうに。
「あう…」
じゃなくて。
僕はいそいで本をどけていく。
う、一冊で4kgはあるんじゃないか…?とても重い。
でも、本が除かれて体が見えてくると、篠崎は自分で起き上がることができた。
「大丈夫なの?」
「うん、大丈夫…」
僕たちが今いるのは、学園中央にある大きな図書館、の保存書物庫の中だ。
とても古い図書館なので、一年に一度、図書整理の機会が設けられる。それも僕たちガーディアンの仕事。
ここまでくると雑用屋なんだかよく分からなくなってくるけど。
ガーディアンはれっきとした、学園公認組織の一つだ。
選ばれた生徒たちが、学園の平和と秩序を守るために奮闘している、なんて考えてくれていいと思う。
詳しくは省くけどね。
まさに守護者ってことだ。
「ちょっと、二年大丈夫か⁈」
さっきの物音が聞こえたのか、別の部屋担当の先輩まで走ってきた。
「あー、ふうが先輩……」
篠崎が涙目で反応している。
風雅先輩は、篠崎のバディだ。
ここで、先輩は初めて、篠崎の周りに散らばったたくさんの書物に気づいたらしい。
彼が、はぁ…とため息をついた。
「まったく…本棚に体当たりするのはもう無しな?サイでもないだろ」
「はぁ⁈あたしがなんで体当たりなんてしなくちゃならないんですか⁈訳わからないんですけど‼」
「あぁもう、うるさい…。まぁ、たしかに、それなら真代が止めるしな」
「この………」
目の前でテンポよく続けられる漫才に、僕はほっとした。
この2人、ほんと仲が良いのだ。
言い合いできるなら、元気はあるよな。
"こいつ…少しは気遣ってくれてもいいんじゃないの⁈心配してるかと思ったのに…"
"心配かけるなよな、まったく…こっちは気がきじゃねぇんだよ。いい加減気づけっての"
感情が高ぶるっている人ほど、よく声が聞こえるものだから、僕は毎回このやりとりが楽しみだ。
ほんとに素直じゃないんだな。
この2人は。
僕は、2人が言いあっている間に、篠崎がばらまいた書物を棚に戻していた。
これでここの部屋は終わりのはずだから、早めにやってしまったほうがいいんじゃないかな。
最後の一冊を、なんとか棚に納めると(はめ込むって感じだった)
僕は2人に言った。
「先輩たち、言い合いも良いですけど、そろそろ戻りましょう。
今日のノルマも終わりですよ」
「ふんっ……分かったわ。もう本部に戻ろ!真代!雨宮さんも!」
ここで、僕は雨宮の存在を思い出した。
まぁ、すごく失礼だけど。
彼女はまるで空気に溶け込むように、周囲に身を溶け込ませることができるようだった。
こんなにはやくノルマ達成できたのは、黙々と作業を続けていた雨宮のお陰だったってわけだ。
少しは感謝しないとな…。
「ほら、二人とも早く行こー?」
「今行くよ」
僕は篠崎と先輩2人に返事を返した。