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おおかみかくし  作者: 蒼井 はづき
第一部・王子様と愉快な仲間たち
2/27

1話・王子様と転校生

真代(ましろ)くん…話があるんだけど…いい?」


また、誰かの声が聞こえる。


"はぁ…ドキドキする"


「なにかな?あぁ…もしかしてここじゃ言えない話だったりするの?」

「うん…放課後、体育館裏に来てください…そこで話すね。」


"真代くん…彼女とかいるのかな"


また、誰かの心が見える。


正直、僕に期待しないでほしい。

こういうの、めんどくさいと思うんだ。


****

最後の授業終了を知らせるチャイムが鳴って、僕は立ち上がり鞄を取った。

クラスの人には笑顔でばいばい、と挨拶をする。

たいていのクラスメイトは、お喋りであったり、放課後の予定を立てたりで教室に居残るんだろう。

だけど僕は、一番にドアを開けて廊下に出た。

廊下には数えるくらいしか生徒はいないみたいだ。

「真代!」

え?

廊下に出ると、背後から声を掛けられた。

まぁ、後ろを振り向かなくても誰だか分かるんだ。自分のことを真代と呼ぶのは数人しかいない。

後ろから呼びかけた人影は、猛ダッシュで駆けてきたらしい。

たたたたっと上履きを鳴らせて、急ブレーキ。

うわっ危ないって。

僕が避けなかったら危うくぶつかっていた彼女は、少し照れたはにかみ笑いを浮かべた。

「真代。ニュースだよ」

「なに?篠崎(しのざき)さん?ニュースって」


"前はそんな呼び方しなかったのに!本当、猫かぶりなんだから"


「新入生よ新入生!あたしたちの学年に新入生がくるの」

「そうなんだ」

それがどうしたっていうんだよ。

でも、彼女のにやにや笑いは、まだ続きがあることを語っている。

「それが…ガーディアンに入るんだってその子。その上美人で頭良くて、運動神経めちゃくちゃ…って噂」

「珍しいね。新入生がすぐガーディアンに入るなんて」

「そう。特例だよ特例」

んで、と篠崎は続ける。

「次はあんたのバディになる番だと思って」

バディか。

僕たちが所属する平和維持組織ガーディアン(そんなお固いものじゃないけど)

ガーディアン内では、メンバーが二人で行動するバディ制度が定められている。

この前の異動で僕にはバディがいなくなったから、次は僕の番ってやつだ。

けど、

「そっか。でも正直興味ないや」

「本当冷めてるよね。つまらないったら…」

篠崎は、困ったなぁ、て感じでため息だ。ちょっと失礼だと思うけど、これもこの人の性格だろうな。

「てことで、花音(かのん)さんからの情報でした!またね〜」

どうやら篠崎が言いたかったのはそれだけらしい。

僕は少し騒がしくなった廊下をいつも通りに歩いていった。


翌朝。

H(ホーム)R(ルーム)の時間になって、担任がやってきた。

出席、健康観察、全て通常運転。

クラスメイトは変わり映えのしない光景をよそに友達と喋っている。

一つだけ通常ではないのは。

担任が教室の外から、1人の少女を呼んだことだ。

いや、別に新入生が珍しいってわけではない。

星宮(ほしのみや)学園は特殊な学校であるから、システム上新入生は多いんだ。

だからそうじゃない。

いつもと違うのはそこじゃない。新入生は美しかったんだ。

流れるような黒髪を、少し高めのサイドで、二つに分けている。

いわゆるハイツインテールってやつだ。

教卓への道を1歩歩むたび、彼女の髪はふわりと風になびく。

教室が静まり返った。

雨宮(あめみや)さん、自己紹介を」

担任に促されて、雨宮と呼ばれた少女は、教室を見た。

「私の名前は雨宮(あめみや) 小春(こはる)。……よろしく」

彼女は憂うように、小さくてもよく響く声で名乗った。

でも、それっきりだ。

担任の先生は、少女が喋りベタなのだろう、と判断して席へと案内した。

________教室の内外で、彼女の噂が浸水のように広がって行ったのは言うまでもない。

寡黙(かもく)な美少女新入生あらわる。



これが「僕にとって」、はじめて雨宮に会った記憶だ。







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