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七、ゲームセット

 ガラスの床にいるのは、柊二と真の二人だけになってしまった。

 完全に日が暮は暮れている。辺りは真っ暗だ。穏やかに差しこむ月の光が二人を照らしている。

 真はにやついたままで、柊二は黙りこみ下を向いていた。



「漫画とかだったらここで能力覚醒でもして拘束を破って俺に殴りかかってくるんだろうけど、残念。これはリアルなんだ。だから助けてあげるよ。」

 カチャ、という音が鳴る。手足の拘束がとれたようだ。

 柊二は無言のまま立ち上がり、真のもとへ近づく。

「さぁ、思う存分殴りなよ。もう俺は生きている価値もないだろ?自分でもわかってるさ。でも気分はスッキリしている。自分のことばっか考えてるヤツらに罰を与えられたんだからね。」



「自分自分って言ってるけどな・・・」

 柊二は拳を握り締める。

「ん?」

「てめぇも結局自分の事しか考えてねぇじゃねえか!!!!」

「ぐぉあっっ」

 真の顔面に懇親の一撃が加えられる。

 そして真はガラスの床に倒れこむ。

「お前を殴ったって誰も戻ってこねぇけど、一発でも殴らねぇと気が狂いそうだったからな。」

 柊二は息を荒くしながら立っている。

「結局お前は自分の一番嫌っていた、”自分の事しか考えない奴”になっちまってんだよ。自分の憂さ晴らしのために何もしてないやつらを巻き込んでこんなことをしてんだからな。」


「は・・・はは・・・バカな・・・そんなワケないだろう?・・・俺が、あんなやつらと同じだっての???冗談はよしてよ・・・」

 真は口から少し血を流し、ふらつきながら立ち上がろうとするが、殴られた衝撃が強かったのかその場に座り込む。

 柊二はその様子を見ながら話し続ける。


「お前の気持ちは俺らにはわからないって言ってたよな。誰も自分のことをわかってくれないという考えがそもそもおかしいじゃねぇか。」

「何を・・・」

「結局は自分の思うような世界じゃないから嫌だってことなんだろ?全部自分に都合のいいように相手が答えてほしいのに答えてくれない。だから誰も自分のことをわかってくれない。そんな風に考えてるならお前はもう救えない。」

「何が悪いんだよ!いじめられる側が悪いっての?いじめをスルーして安全圏で笑ってる奴らが正しいっての?そんな奴ら消えてしまったらいいんだよ!!俺基準にすりゃみんな幸せになるんだよ!!俺が一番・・・正し・・・・」

 真は急に言葉に詰まる。そして涙を流しだした。

「わかっただろ?お前も自分の事しか考えてないんだよ。お前さえ助かれば他人は全員殺していいなんて身勝手すぎる。」

 柊二は真の前に立ち、手を差し出し、言った。



「そんなに悩んでたなら、なんで相談してくれなかったんだよ。」



「!?」

 真は一瞬何が起こったかわからないといったような顔をした。

「いじめた奴も、安全圏で笑ってたやつも、お前も、俺も、誰だって他人が何考えてるかわからない。自分の中で解決しようったって無理なんだ。だったら言ってくれよ。お前の判断で勝手に自分以外を排除するなよ!お前の味方にならなかった奴を正しいって言いたいんじゃないんだよ!お前の独断で全て消し去ろうってのが間違ってる!言わなきゃなにも始まんねぇんだ。このゲームが始まった時、俺らに相談してたらどうなった?力になろうとする奴が誰もいないなんて決め付けられるか?少なくとも俺はお前の味方になっていた。今になったらもう遅いかも知んねぇけど。」



「ハッ・・・おもしろいね。」

 笑って、真は柊二の手を払う。

 そして、立ち上がりガラスの床を少し歩き柊二の方を向く。


「結局俺は間違ってたみたいだね、柊二君。もっと早く君みたいな人に出会っていればこんなことにならなくて済んだのかな。」

「さぁな、今となってはもう遅い。死んだ奴らに許してもらえるわけねぇし、とりあえず罪を償って生きていくしかねぇよ。」






「アッハハハハ」

 真が急に笑い出す。




「何がおかしいんだ!!」

「ごめん柊二君、あれはフェイクさ。誰も死んでいない。」

「!?」

 真はコンコン、とつま先で床を叩き、

「このガラス、実はスクリーンなんだ。下が透けてるように見えるけど全部映像。もちろん赤いシミや落ちていく人も映像さ。落ちて数秒のところに救助ネットがあるから落ちた人たちはそこにいるよ。落ちた後騒がれないために落ちる時に催眠ガスを発射してるからまだ寝てるんじゃないかな。人質のクラスの方もハッタリさ。」

「な・・・なんでそんな・・・」

「理由は同じさ。実験だよ。でも、”全員落とす”気だった。もちろん救助ネットまでだけどね。殺す気はない。ただ警告したかったんだ。もっとクラスに目を向けて欲しかったんだ。まぁ、まさか3人も残るとは思わなかった。僕ももう少しクラスを信用しても良かったかもしれない。」

「はぁ・・・なんだ・・・みんな生きてたのか・・・じゃあこれでわかったじゃねぇか。味方はいるんだよ!落ちたヤツらに謝って、再スタートしようぜ。」

「ダメだね」

「?」

「僕はゲームに負けた。いい経験させてもらったよ。醜い人間もいれば、君みたいな人間もいるってことだね。短い時間だけど楽しかった。」

 真はガラスの床の端スレスレに立ち、手を広げた。

「お前!!待て!何する気だよ!!」

「敗者は、君たちと同じ舞台には立てないよ。」

 言うと同時、真は空に身を投げた。

「真!!!」














 柊二は床の端から下を覗いていた。

 真はおそらく何らかのからくりで助かったのだろう。下を見ても赤いシミはない。

「最後まで振り回されちまったわけか・・・」

 柊二はため息をつく

 遠くからは、パトカーのサイレンが聞こえてきた。






 ゲームに参加させられていたメンバーは、真を除き、全員保護された。

 地上になにもなかったところを見ると、真はやはり命綱かパラシュートか何かを隠していたのだろう。

 辺りは真っ暗になっていた。

 



「・・・そうか、真はどこかへ・・・」

 催眠ガスも抜けきった玄は柊二に向かい話す。

「あぁ、多分死んではいないんじゃねぇか。」

「しかし、俺達は試されていたわけか。」

「ああ、あいつの遊びだったわけだ。まぁ実際辛かったからこその行動だろうが。いい経験になったとも言ってたな。俺達も考えさせられたって点ではいい経験だったのかもしれない。もっとクラスに目を向けるべきだったのかもな。」

「真はこれからどうするんだろうな。」

「さぁな、なんだかんだで上手くやっていきそうだ。」

「?」

 柊二は少し笑った。

「あいつ、最後少し笑ってたからな。」


あとがき


ここまで読んでくださりありがとうございます。

初小説なので至らない点だらけだと思いますが、暇つぶしにでもなれば幸いです。

感想などありましたらお待ちしています。


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