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六、首謀者

 ここは落ちたら死ぬほどの高所。

 床はガラス張り。四隅には鉄骨で出来た足があり、地上まで伸びている。

 三つの長机が「コの字」に並べられていて、机一つにつき三席、計九つの席がある。

 椅子に座らされている人の手足は、動かないよう固定されている。


 そのはずだった。


「お前・・・どうやって・・・」


 第六高の位置にいる少年、真は両手を使いマスクを外している。

「これでゲームは全て終了です。って言えばわかるかな?」

 爽やかな表情を崩さないまま、真は答える。

「まさか・・・」

「あんたが・・・?」

 真はそのまま立ち上がり、ガラス張りの床の真ん中、スピーカー部分へと移動する。

「案外バレないもんだね。」

 そう言いながらマスクを玄、柊二、鈴の三人に見せる。

 そして真は右手に持っているボタンのような物を押し、マスクを口に当てる。


『これがマイクの代わりなんだよね。スピーカーからの音を大きくしたのは俺が小声で喋っているのを隠すため。』


 真は用済みだと言わんばかりにマスクを放り投げる。


「このゲームの首謀者は俺。そして君たちはめでたく生き残った勝者です。」

「まさかこの中に黒幕がいたとはな・・・」

「人が落ちて行くとこを目の前で見ながらそんな冷静に進行してやがったのか・・・てめぇは。」

 柊二が食いかかる。

「少し前にも言ったけど・・・俺だけを悪者にしないでくれないかな」

「なんだと?」

「言ったでしょ?全員助かる道もあったって。正しい行動をしないから、裁かれただけなんだよ。落ちたやつらにも悪いとこはあったってことさ。」


「クラス、か。」

 玄がつぶやいた。すると真は不気味に少し微笑んで、返答する。


「そういえば君は何か気づいたみたいだったよね。」

「由里子の言葉に”クラス全員を人質に取られても関係ない”という部分があった。その瞬間由里子は落とされた。その部分に何かあると考えて今までの落ち方を整理すると、”クラスの命を助けようとしていない”と判断された者が落とされるということじゃないのか?」

 真は微笑んだまま拍手をして言った。

「見事だね!その通り!ようは人間なんて自分の事しか考えてないということを証明したかったわけさ!まぁ君たちは例外になるか。でも心のどっかでは自分の心配してただろ?人間なんてそんなもんなのさ。仲良く見えたっていざ自分が危険になれば簡単に裏切る。そんなもんだよ。」

「てめぇの勝手な実験で落ちてったやつらは殺されたってのか??正気かてめぇ!?」

「君は本当にいちいちアツイね、柊二君。僕はね、”クラス”という組織が大嫌いなんだよ。君みたいなタイプにはわからないだろうけどね。」

「こんなことを平気でしでかすやつの気持ちなんてわかりたくもねぇ。」


「人間ってのは強い者につきたがるんだよ。誰か一人が傷つく、それを見てみんなが笑う。傷つけたやつをおだてるかのようにね。自分が標的にされたくないためだけに。一瞬にしてクラスは傷つけられたその一人をターゲットにしていくのさ。やっている本人たちは”少しからかっただけ””ウケてるんだからいいじゃん””冗談もわからないの?”なんてセリフを吐く。やられた側がどんな気持ちかも知らないでね。自分が狙われなければそれでいい。自分が大事。”クラス”ってのはそういうもんだよ。今まで落ちたヤツらはクラスの心配はおろか、この場で自分が残ればいいと考えているヤツらばっかだった。松岡さんは少し違うタイプだけどクラスなんてどうでもいいと言ったから結果は同じさ。」

 真は少し強い口調で話した。


「そんな逆切れみたいなことに私達を巻き込んだわけ?」

 少し様子を伺っていた鈴が話しだした。

「試したかったんだよ。クラスの命が賭けられている状況で人がどうなるのか。クラスに価値を持っているやつがいるのか。」

「矛盾してるだろ。お前が一番クラスに価値を感じていないのに、なんで価値があると思ってるやつを生かしたんだよ?むしろ落ちていったやつらとお前は同意見で俺らがおかしいから落とされる側じゃないのか?」

「そうだね。俺も落ちるべきだ。」

 真はまた不気味に微笑む。



「ただ、自分のことしか考えていないやつがいるクラスは消してからにしたかったんだよ」



「なんでそこまで・・・・」

 鈴が顔をしかめる。



「なるほど、お前は先ほどの話の”ターゲット”だったわけか。」 

 玄が真の顔をみてつぶやいた。


「君はほんとに色々と気づくね。そうだよ、俺はいじめのターゲットだった。みんなからすれば”冗談”のレベルだったんだろうね。誰かが俺の筆箱を隠し、クラスのみんなは知ってるのかクスクス笑ってる。でも誰も教えてくれない。教えたやつは”空気が読めない”と次のターゲットにされる。それが嫌なんだろうね。みんな自分を守っていた。なんてつまらない世界だ。先生なんて役に立たない。じゃあ俺が、自分の事しか考えない邪魔なヤツらを排除してやろうと思ったわけさ。」

「そんなくだらない事でこんなことをしようと考えたのか。」

 玄が言葉を一蹴する。


「君たちにはわからない、ってさっきも言ったよね。もうゲームも終わったしさ、もういいじゃんか。解放してあげるよ。そろそろ。」

「そんな軽く済ませることじゃねぇだろ!!!何人殺したと思ってんだてめぇは!」

 柊二は激昂する。

「やっぱり君はおもしろいね。柊二君。」

 真は笑いながら右ポケットから何かを取り出した。




「気が変わったよ。もう少し楽しませてもらうよ。」




「おい!何をする気だ!!」

「まさか・・・」

 玄が少し焦った声を出す。

「え・・・!?」


 

 鈴が声を出すと同時、玄と鈴は地上へと落とされた。





「さぁ、熱血主人公タイプの柊二君。大変な事になったね。どうやって楽しませてくれるのかな?」


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