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四、価値観

「おい・・・なんなんだよ・・・」

「・・・・・」

「今度は一気に二人になったね・・・」

「こうなってくると、全員助かる道は期待できないかもしれないな。」

「石川さん・・・」



 「コの字」に配置された机には、当初九人が座っていたが、今はもう五人しかいなくなっていた。一つめの机には三人。端から玄、柊二、鈴。二つめの机は端に真。3つめの机は端に由里子。というように座っている。


「もうやめてくれよ・・・何人の人が死んでんだよ!クラスの奴らまで犠牲になってるんだろ?おい!!どっかで聞いてんだろ首謀者!!」

『質問に答えますと、ざっと四クラス消滅したことになりますね。落ちたのが四人ですから、考えればわかることですけど。そこまで気が動転してるんですかねぇ?』

「そういうことじゃねぇんだよ!!」

「やめろ柊二、こいつには何を言っても無駄なんだ。」

「わかってるよ・・・でも!」

 柊二は歯を食いしばる。

『さて、ゲームもだいぶ進んできました。が、実は次のゲームで最後なんですよ。』

「最後?」

 玄が怪訝そうに尋ねる。

『ええ。』

「結局、俺達は全員殺されるということか?」

『いえいえ。そういえば何か皆さんで推理をしていたみたいですが、このゲーム、全員助かるという道もあったんですよ?』

「な・・・」

「!?」

「どういうこと?」

『フフ・・・今更言っても遅いでしょう?早ければ第一ゲーム開始段階で全員助かっていましたよ。あぁ、そういえばゲーム開始前に落ちた奴も居ましたね。そうなるとまた結果も変わってきますかねぇ。まぁいいでしょう。』

 コホン、とスピーカーの声が息を整える。

『先程も言った通り、これからラストゲームです。そして、ヒントとして全員助かる道もあると言いました。わかりますか?今残っている方全員が助かる可能性もあるということです。』

「お前は何がしたいんだ?全員生き残らせる気があったのならこんなゲームやる必要があるのか?全員生きてもOKだとすれば、別にこの中の誰かに恨みがあるってわけでもねぇんだろ?」

「ましてや、クラス全員という範囲まで被害を広げている意味もわからない。もし全員助かるというのが嘘で、俺達全員に恨みがあり俺達を殺す気なんだとしたら、クラスは解放してもいいだろう?どうなんだ」

 柊二の訴えに玄が続けて質問した。

『なかなか推理がお好きなようですねぇ。教えたいのは山々ですが、ゲームに支障があるのでノーコメントにさせていただきましょうかね。一つだけ答えるとすれば、答えまでかなり近づいているってとこでしょうかねぇ。』

「曖昧だね。結局殺人を楽しんでるだけなのかもね。」

 真はやれやれ、といった調子でため息をつく。

『最終ゲームまでまた少し時間をあげましょう。これが最後です。勝者は生き残れますが、敗者はもう死んでしまいますので、最後の夕陽をしっかり眺めて頭に焼き付けておいてくださいね。』

 ブツッと音が鳴り、また静寂が訪れる。




 太陽は完全に夕陽のオレンジに染まり、もうすぐ日が暮れるのが一目でわかる状態だ。もう辺りは暗くなっている。

 静寂の中、時々振動音が聞こえるが、おそらく五人の携帯電話のバイブが鳴っているのだろう。手足が固定されているため、誰もでることはできないが、この時間まで連絡なしに帰ってこない子供を心配した親たちからの連絡だということは、全員予測できていた。


「あーあ、こんなことになるならせめて両親に連絡したかったわね。なんの挨拶もなしに別れちゃうかもしれないし。」

「そのための遺言だろ?まぁ俺も結局何も残せなかったけど。」

「こんな事するヤツがわざわざ全員の親に遺言届けると思う?楽しんでやってるだけよ。言ったって無駄無駄。」

「全員生き残れる可能性もあるって言葉も信用しないほうがいいのかな」

「そりゃそうでしょ。あいつの言う”ゲーム”に真面目に取り組ませようとしてるだけじゃないの?最初から”ゲームをやっても誰も助からない、全員殺す”って言ってりゃ誰も参加しないじゃない。」

「そこなんだよな。だからこそ俺はあいつが嘘を付いている気がしない。」

「はぁ?」

 鈴は信じられないというような顔で柊二を見る。

「何かを求めてるんじゃねぇのか?そんなに長い時間ここにいないけど、この短時間の会話の中にあいつは何かを求めてる気がする。」

「それがわかれば苦労しないんだけどね。」

 真は苦笑いで答える。

「そうだよなぁ。」


「私は、もういいわ。」


 突然、由里子が無表情で喋り出した。


「あなた達みたいに真剣に取り組めないのよね、こういうの。別に人生に大きな未練もないし、クラスも興味ない。このゲームだって興味ないのよ。だから喋らなかったし喋る気もない。首謀者がどっかで聞いてるならもう落としていいわよ。」

「おい!何言ってんだよ!」

 柊二は突然の言葉に焦る。

「価値観の違いよ。自分から死ぬのは面倒臭いけど、勝手に殺してくれるなら楽じゃない。何か楽しみを持ってる人なら死ぬのは嫌なんでしょうけど、私は人生に何も興味がないの。それは否定されることでもないでしょう?他人の価値観を否定することなんて絶対にできないんだから。」

「価値観とかそういう問題じゃ・・・」

「価値観の問題よ。あなたは私の言動、行動をありえないと否定したいんでしょ?私は逆。でもどちらが正しいなんて絶対にわからないのよ。だから否定もできない。」

「そういうことじゃねぇだろ!死んでいい人間なんていない!」

「その言葉も、聞く人によれば感動のセリフにもなり、キレイ事にもなるのよ。あなたがその言葉にどういう価値を託して言っているのかは関係なくね。」

「っ・・・でも・・・」

「私はあなたと討論がしたいんじゃないのよ。落とすのを決めるのはあの首謀者なんだから一応アピールしてみただけ。この先のゲームも興味ないから強制されない限り黙っておくわ。」

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