第57話 修羅場の始まり?
「ただい……ま」
「ただいま戻りました」
俺達が買い物から帰ってくると、家の中にはすでに天城がいた。
どうやって入ってきたんだという疑問もあるが、そんな事よりも天城の顔がものすごく怖かった。
顔は笑っているのに目は一ミリも笑ってない。
下手をすれば殺されてしまいそうだった。
「ふふ、お二人で随分と楽しそうじゃないですか。私が本家に呼び出されてる間にお二人は楽しくデートですか? 羨ましいですね」
「えっと、そいいうわけじゃなくてだな」
「そうですよ。お嬢様。わたくしと陸斗様は二人で外食に行ってそのまま夕飯の食材を買いに行っただけですよ」
菫から援護射撃が飛んでくるけど、それは火に油を注ぐ行為に他ならなかった。
ピキピキと天城の額に青筋が立っていく。
完璧にキレてらっしゃる。
「なるほどなるほど。私が心苦しくて面倒な思いをしている間に宮野くんは菫とお楽しみだったのですね。なるほどなるほど」
「なんだかめっちゃ曲解をしている気がするんだけど? これ俺の気のせいなの? どういう事?」
「陸斗様、残念ですがこうなったお嬢様を止める方法はございません。甘んじてお嬢様の相手をしていてください。わたくしは夕飯の準備をしておきますので」
「え、ちょ菫? もしかしてこの状況で俺の事を置いて行くのか?」
「ふふ、それではごゆっくり」
菫は笑いながら手を振ってキッチンの方に消えていった。
完全に見捨てられた。
まったく、酷い子だ。
「それじゃあ、たっぷり私とお話ししましょうかね」
「お手柔らかにお願いします」
俺は天城に引きずられるようにして俺の部屋に連れて行かれた。
というか、今更だけどなんで俺の家なのにこいつは我が物顔で居座っているんだろうか。
「それで、どうでここにお父様が来ていたんでしょう? どんな要求をされたのですか?」
「要求ね。天城はどうしてお父さんが来てるって思ったんだ?」
「あの人ならそう言う手を打ってくるでしょうから。私を本家に呼んでおいて本人が居ないならそう考えるのが妥当ですので」
なるほど。
流石は親子という事か。
考えることはある程度互いにわかるらしい。
面倒な親子に目をつけられて厄介だけど、俺はもう簡単には天城を見捨てられそうにない。
情が移ってしまったのか。
好意を抱いてしまったのか。
俺にはわからないけどな。
「ま、天城の想像通りお父さん、士郎さんが来てたよ。要求は……天城の想像通りかもな」
「なるほど。その返答で十分です。どういった要求をしたのかは理解しました。それで、あなたはどう答えたんですか?」
「それは秘密にしておこうかな。じゃ、そういう事で」
俺はそう言って部屋を抜け出して逃げることにした。
なんだか、士郎さんにした返答をそのまま伝えるのは気恥ずかしかったし。
今は伝えなくてもいいと俺は判断したから。




